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書評:『ヴァージン 僕は世界を変えていく』

英国にリチャード・ブランソンという実業家がいる。音楽エンターテインメント、航空会社など様々な分野で事業を拡大し続けるヴァージン・グループの創設者である。その傘下に米宇宙関連企業ヴァージン・ギャラクティックがあり、2021年に有人試験飛行に成功した。

このリチャード・ブランソンの反省を綴った自伝が本書『ヴァージン 僕は世界を変えていく』だ。1950年生まれのブランソンの50歳くらいまでの半生を、650ページという分量で綴っている。

とにかく、人生のターニングポイントの見極めが早い。子供のころはスポーツ万能の少年であったが、競技中にけがをしてしまい、スポーツの世界を断念する。
高校にに残ったものの、長続きせず17歳で中退し、学生向けの雑誌『スチューデント』を創刊する。
20歳で通販専門店のバージンを立ち上げる。しかし、郵便事業におけるストライキを契機に、23歳で店頭販売のバージン・レコードを設立。当時のレコード販売店にはない自由な雰囲気が受けて業績を拡大するものの、海外向けの取引を利用した脱税容疑で逮捕される。
そのような試練にも関わらず、ブランソンは34歳でバージンアトランティック航空を設立する。しかし、英国航空の激しい攻撃や湾岸戦争などの影響から資金繰りが悪化し、バージン・レコードを売却してしまう。

読んでいて、ブランソンの行動力と交渉力に驚かされる。本人は経営学などの専門知識はないが、周囲に優秀な人材を集め、それらの人材に活躍の場を与えることで事業を拡大していった。全てを自分でやろうとせずにベスト・チームを作ったことが成功の要因の一つだろう。

しかし、ベンチャー企業の宿命なのか、常に拡大思考であるため、内部留保をせず新規事業への投資を続けている。このような行動パターンというのは、どうしても銀行融資に依存せざるを得ず、常に銀行からのプレッシャーを受けながら経営を続けることになる。その苦労もよく書かれている。

レコード販売、航空など全く関連性のない事業展開に見えるが、「これまでよりも良いサービスや製品をお求めやすい価格で提供し、生活を豊かにしたい」というブランソンの理想がその底に流れているので、バラバラに見えないのだろう。
また、新規事業を立ち上げるときにも「ああ、こんあものがあればいいのに」というブランソンが消費者の目線に立ったて判断している点も参考になる。

リチャード・ブランソンという稀代の起業家を知ることができる一冊です。

「ヴァージン 僕は世界を変えていく」リチャード・ブランソン


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