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笑いは『言いかた』が90%

変な新古本みたいなタイトルになって、申し訳ないが、今回書きたいのは笑いにまつわる見聞録であり、少しHOWTOにも近い私の本業の話。

以前、こんな話を小耳に挟んだ。

「いやいや、それ言い方じゃないですか!」
「言い方!言い方がおもろいだけでしょ!」

と、ある若手芸人がテレビ収録の現場でベテランの芸人さんに何度かツッこんでいたらしい。

この類のツッコミは、みなさんも何度か聞いたことあると思います。芸人同士の絡みで、たまにある「中身関係なく言い方ですやん」的なやつだ。

すると、そのベテラン芸人が真剣な目になり

「言い方言い方うるせー!言い方が面白いから芸人なんだよ!」と一喝したとのこと。

もちろん本気でブチギレて収集がつかなくなるほどのことではなかったと思うが、笑いの本質は突いている。それゆえ、まだまだ青さの残る若手に対して本気で言ったのは間違いない。

こういった、言い方を指摘するのと同じように、「いやいや、それ話盛ってるでしょ!?」というパターンもある(最近は減ってきたけど)
簡単に言えば、ウソつけ!という意味なのだが、これも返しは同じだろう。

「話を盛れるから芸人なんだよ!」と。

このツッコミと言うのか、ガヤと言うのか…若手はやりがちだが、これが笑いを生むことはほとんどなく、単なる潰しになる場合が多い。

もちろんウソ丸出しの話は良くない。
たしかに、エピソードトークはウソっぽいな〜と思われたら負けである。
しかし、それを「話盛ってるでしょ!」と切り返すのは、もっと負けである。

もちろん、相手との関係性も込みで「今のホンマか?」「ウソです」という笑いの方程式はある。
だが、それは関係性やキャラクターありきで発動されるミニコントの延長にあるもので、ガチンコのリング上においては基本的になしである。

『話を盛る』については、関東と関西の笑いの違いについて考察した、こちらの記事を読んでください。

そう、言いかたや盛りかたなどが自然に身についている話し方を我々は話芸と呼んでいる。

そこを指摘して笑いに繋げようとするのは、一見それっぽいが短絡的すぎる。
寿司屋の職人に「この寿司美味しいの、握りかたですやん!」と言っているようなものだ。
ちょっと例えがヘタで申し訳ないが、それのエキスパートなのだから、そんなことは前提でリングに上がるべきだと理解してほしい。

例えば、何の変哲もないエピソードトーク。

喫茶店でコーヒー飲んでたら、おかわりいかがですか?とマスターに聞かれたので、無料だと思い「じゃあいただきます」と言って2杯目を入れてもらった。
いざ、お会計したら2杯分値段がついていた。

これがエピソードの内容としよう。
この題材で笑いが取れるかどうか?
そこで試されるのが言い方であり、盛り方である。

まず、ヘタな人の話の導入…

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