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<閑話休題>「トム・ソーヤーの冒険」から

トムソーヤーとハックルベリーフィン

今,”The adventure of Tom Sawyer“(「トム・ソーヤーの冒険」)を読んでいるのですが,途中のトム(トーマス・ソーヤー,「木材商」という氏からすればイングランド系)の親友であるハックルベリー・フィン(同じく氏からは,スコットランド・アイルランド・ウェールズのケルト系)との会話が,かなり面白いです。

僕の意訳で紹介します。

トム「新しい太鼓を買い,もちろん新しいタイプの剣,そして赤いネクタイ,引き金式銃,それから結婚するんだ!」
ハック「結婚?」
トム「そう!」
ハック「トム,おまえはなんておかしな方へ行こうとしているんだ?」
トム「そうかな,うーん」
ハック「そう,おまえがやるのは,馬鹿なことだよ,トム。俺の父ちゃんと母ちゃんを見てみな,ケンカだよ。なんでいつもケンカばっかりしているんだろう?俺が知っている限りは,いつもそうだ」
トム「みんなじゃないよ。僕が結婚しようとしている女の子(ガール)は,ケンカなんかしないさ」
ハック「トム,俺はみな同じだと言っているんだよ,まるで櫛の歯みたいにさ。だから,考え直した方がいいと思うよ,俺としては。ところでさ,そのギャルの名は?」
トム「ギャルじゃないよ,ガールだよ」
ハック「トム,どっちも同じさ。誰かはギャルと言うし,別の誰かはガールと言う,両方正しい,それで十分さ。とにかく,彼女はなんて名前なんだい?」
トム「いつか言うけど,今は言わない」
ハック「わかったよ,今はそうしておこう。でもね,おまえが結婚したら,俺はもっと寂しくなっちまうさ」
トム「そんなことはないよ,君は僕とずっと一緒さ」

ハックの両親のように,結婚した男女はよくケンカをします。これはハックの言うとおりです。でも,「ケンカをするのは仲の良い証拠」という俚諺があるように,仲が悪くなった夫婦はケンカすらしません。ケンカをする前提になる会話がなくなるからです。

そうした結婚の厳しい現実はあるものの,トムが自分の結婚する相手とはケンカしないと言うのは,なにか少年の純粋さが溢れるような言葉で,おじさんは涙腺を刺激されてしまいます。そして,トムが結婚したら,自分との親友(悪友)関係も終わってしまうではないかと心配するハックの気持ちも,少年らしい純粋さが良く現れています。

そして,それに対するトムの「君と僕はずっと一緒さ」という言葉は,簡単なようですが実は心によく響く名言です。

ラグビーの元フランス代表キャプテンだった,ジャンピエール・リーヴは,「ラグビーは少年を大人に成長させ,一人前の男に少年の魂を持たせてくれる」と,引退時に名言を残しました。このトムとハックの会話も,このリーヴの言葉に匹敵する名言ではないでしょうか。

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