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<ラグビー>2022~23シーズン、大学選手権準々決勝の結果、リーグワン第二週結果、インターナショナルラグビー関連(2023年からのルール変更等)

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)
 
 先日衛星放送で『オズの魔法使い』(1939年アメリカ、日本公開は1954年)を観た。もう83年前となる古い作品であり、今ならCGを屈指するところを書き割りのセットで撮影している他、シンプルな合成映像を使っているので、「古く稚拙な映画」と一笑する若い人が多いと思う。しかし、逆にその古い技術でしっかりと作られているからこそ、異世界を舞台にしたファンタジーの世界と妙にマッチして、逆に非常に良い効果になっている。なんとも不思議だ。

 映画の白眉は、主演のジュディ・ガーランドが「I must have been over the rainbow!(虹の向こうに来たのだわ!)」というセリフの愛らしさだろう。彼女の声は、永遠に映画史に輝いている。しかし、その愛らしさを消耗したハリウッドの醜い大人たちによって、彼女はアルコール中毒で早世してしまうのだ。なんとも哀しいスターの末路だと思う。

1.大学選手権準々決勝の結果

早稲田27-21明治

 24日のリーグワンがパッとしないゲームだったので、「大学ラグビーレベル」と以下2.で酷評させてもらったが、この試合を見ると両チームとも安易なミス、それも攻め込んでのイージーミスで自滅するプレーが交互に続き、「やっぱり大学はこんなものか」という感想が強くなった。大学ラグビーは、良くも悪くも「大学ラグビー」という限界の中でやっていると思うし、そうした中ではテストマッチレベルの選手育成は不可能だろう。

 なお気になった部分として、この試合のレフェリー(関係ないけど、息子の高校ラグビー時代の同級生の知人)は、特に前半最初の早稲田のトライを筆頭に、明治のプレーでもかなりのスローフォワードを見逃していた。さすがに後半は的確に修正していたが、前半からこれらのプレーを反則にしていれば、試合の結果までとは言わないが、少なくとも流れは変わっていたと思う。

 以下、明治OBとしての感想。試合の肝としては、ノーサイド直前に明治が早稲田陣に攻め込んだところで、明治は着実にアタックを継続すればトライが取れたと思うが、キャプテンの実力が抜けているものだから、個人技で突破してしまったことにあったと思う。個人技で優れていても、多勢に無勢かつ孤立すればターンオーバーされてしまうわけで、これは無謀だった(ちなみに、リーグワンのワイルドナイツは、こんなプレーは絶対にしないから、なかなか負けない)。

 また、63分に明治が、早稲田陣ゴール前でスクラムを押して連続してPKをもらうが、通常ならタッチキック→ラインアウト→モール→トライを選択する(あるいは、キャプテンがNO.8の位置に入ってサイドアタックすることも十分できた)はずが、その前のスクラムで数回PKを取られたことに対するリベンジ意識が強すぎて、残り時間と戦いながら早めにスコアしなければならないのにも関わらず、時間を浪費するスクラムを選択したのは、正直自滅行為だったと思う(また、スクラムを押し切ってペナルティートライを得たことで、自己満足してしまったように見えた)。

 結局、明治は対抗戦意識を前面に出した良くも悪くも「学生らしい」ラグビーをして負けたのに対して、早稲田は良いゴールキッカーがいることから、PGを刻む「とにかく勝つ」というテストマッチのような(もちろんレベルは断然に異なるが)ラグビーをして、その通りに勝利した結果となった。学生ラグビーでは、昔からこうした勝敗の綾が沢山あったし、それを「ドラマ」として多くの人たちが楽しんでいたように思う。

 負けた明治だが、今回主力SOの伊藤が怪我で欠場したことも勝敗に影響したと思うが、彼を含めて正確無比のゴールキッカーであるCTB廣瀬、鋭いランニングを持つFB安田、突破力あるFL森山や福田らは、皆3年生以下なので、来シーズンの明治はかなり楽しみなチームになれるのではないか。そして、対抗戦ならいざ知らず、大学選手権では意地よりも勝負に徹する冷静なゲーム運びを目指して欲しい。

帝京50-0同志
 
 想像していた以上に、帝京の一方的なゲームとなった。それで、最初の数分でTVチャンネルをリーグワンに変えた。こんな試合が準々決勝であるのでは、今年の大学選手権で、帝京に勝てるチームはなさそうだ。

筑波20-17東海

 接戦になるとの期待通りに、筑波が3点差で勝利した。後半32分に東海がトライをして、17-10とリードしたが、その後35分に筑波がトライ&コンバージョンで、17-17の同点。さらに37分にPGを入れて逃げ切った。これで関東リーグ戦チームは全滅してしまったが、優勝したとはいえ、今シーズンの東海は、開幕戦で東洋に負けたくらいだから、チームとしては実力が足りなかったということだろう。

京産34-33慶應

 慶應が勝てば、大学ラグビーファン期待の早慶戦再戦が準決勝で実現したが、京産がなんとか踏ん張った結果となった。トライ数は5対5で、前半に慶應にシンビン、後半に京産にシンビンが出たことも結果に影響した。また、後半のシンビンを慶應が生かしきれなかったことと、慶應がコンバージョンを一つ多く決めた一方、京産がPGを決めたことが1点差の勝利となった。

 京産は、廣瀬監督の下で良くやっていると思う。今シーズンの慶應は、早稲田に惜敗するレベル(ただし、明治と帝京には完敗)だから、決して弱いチームではないので、ここで勝利したのは自信になるのではないか。準決勝の早稲田戦の奮闘を大いに期待したい。

 来年1月2日にある準決勝の組み合わせは、京産対早稲田と帝京対筑波になった。順当なら決勝は早稲田対帝京で、帝京が連覇か?と思うが、意外と京産対筑波の新鮮な対戦になるかも知れないと密かに期待している。

2.リーグワン第二週の結果

コベルコ神戸スティーラーズ58-36花園近鉄ライナーズ

 初めのうちは、相互にトライを取りあって面白いと思ったが、こうまでノーガードの打ち合いになってしまうと、乱打戦と蔑む以前に「ちゃんとタックルせい!」とTVに向かって思わず叫んでしまうようなゲームだった。この試合を見た中学生や高校生には、アタックの参考になっても、「ディフェンスは絶対にお手本にしてはいけません」という状況で、せっかく先週の開幕試合では、「大学よりはるかに高いレベル」と絶賛した自分を反省する次第となった。

 なお、スティーラーズの10番を、さかんに「日本代表SO」と解説者が強調しているが、少なくともこんなレベルのタックルやディフェンスをしているようでは、日本代表がテストマッチで勝つことはむずかしいと思う。また、毎回「こうしたミスや苦い経験が全て糧になっている」と大変ポジティヴに評価しているが、それがリーグワン終了まで続くのであれば、やはり日本代表失格と言われても仕方ないと思う。

 最後に、この試合だけで判断するのは全く早計ではあるが、長年スティーラーズの試合を見てきた直感からすれば、今年のスティーラーズのリーグワン優勝はかなり難しいし、ベスト4入りさえも厳しいと思う。もちろん、負けたライナーズはもっと厳しいが。

東芝ブレイブルーパス17-7ブラックラムズ東京

 実力的にブレイブルーパスが圧倒するかと思ったが、実際にブレイブルーパスが攻めて、ブラックラムズが必死にディフェンスするプレーが大半を占めた。それでも、わずか17点(2トライのうち一つはペナルティートライ)だけで、攻めても攻めてもトライが取れない拙攻をブレイブルーパスが繰り返す場面が続いた。見方を変えれば、ブラックラムズが良く防戦したともいえるが、スティーラーズ対ライナーズがノーガードの打ち合いなら、この試合はガードだけしてまともなパンチが出来なかった拙攻のゲームと言える。

 特にブレイブルーパスは、トライを取れる良い選手がそろっているのだから、もっと理詰めでトライを取るプレーを見せて欲しい。ブラカッダー監督は、クルセイダーズ監督時代はまったく成果を出せず、後任のスコット・ロバートソンと好対照の評価をされたコーチだから、誰かよいアタックコーチを入れてみたらどうだろうか。

 負けたブラックラムズは、防戦一方ながら部分的には、ブレイブルーパスより良くできたラグビーをしていたと思う。しかし、アタック大好きの10番がチームとして機能していないように思う。彼のようなタイプは、15番辺りに置いてプレーさせると生きるが、ゲームメークをするようなポジションには向かないのではないか。そういう点では、日本代表入りしたメイン平をSOで使ってみたい。

三菱相模原ダイナボアーズ27-24トヨタヴェルブリッツ

 ヴェルブリッツが順当に勝つように思っていたが、なんとダイナボアーズが3点差の見事な勝利を挙げた。それも、ノーサイド直前にヴェルブリッツに攻め込まれるが、必死のディフェンスで守りきるという良い勝利だった。ヴェルブリッツにとっては、地元瑞穂のゲームで負けたため、チーム及びファンとしてはかなり落胆する結果だろう。

 一方のダイナボアーズは、ヴェルブリッツにアウェイで勝つ力があることを考慮すれば、最低でも中位グループに入れる力を証明できたと思う。ディビジョン2からの昇格組みだが、意外とこれからのゲームが楽しみになってきた。

横浜キャノンイーグルス27-27クボタスピアーズ船橋・東京

 イーグルスが、SO田村優の活躍で前半リードするが、後半にスピアーズが、SOバーナード・フォリーの正確なPGで追いすがり、ノーサイド直前に同点トライを挙げる。フォリーのコンバージョンが決まれば2点差で勝利だったが、惜しくも外して引き分けとなった。

 引き分けとは言え、内容的にはイーグルスが勝ちに等しい良い試合をしたと思う。また、SO田村は、先週のスティーラーズ戦を見てもわかるように、日本代表SOとして相応しい活躍を見せている。来年のRWCのSOは、松田、田村、山沢の3人がベストではないか。若い李については、もっとディフェンスを練習するという前提で、2027年RWCを目標にしてもらいたい。

静岡ブルーレヴズ14-15埼玉ワイルドナイツ

 これが本当に強いチームとそうでないチームとの、言葉にならない実力差なのだろうと思う。つまり、ワイルドナイツは日本版オールブラックスで、ブルーレヴズは少し前までのアルゼンチンといったところだろうか。プレー内容及びドラマ性において、まさに今週のベストゲームだった

 試合は、前半をワイルドナイツ8-7ブルーレヴズで終えたのは、両チームとも想定内だったと思う。しかし、50分に堀江翔太らを入れたワイルドナイツに対して、ブルーレヴズがトライを挙げて14―8と逆転したことは、ワイルドナイツとしても想定外だったのではないか。さらにブルーレヴズは、SHブリン・ホールとFLクワッガ・スミスという外人傭兵2人の活躍で、ワイルドナイツに得点させないイライラするようなゲームを最後まで継続していた。

 しかしブルーレヴズは、75分にシンビンを出してしまい、残り時間を14人で戦うことになったのは、チームとしては想定外の致命傷だった。そして、当然ワイルドナイツは、まるでドラマの筋書きのように着々とブルーレヴズ陣内に前進し、21番SH小山大輝が78分にトライを挙げる。続いて、22番SO山沢拓也がコンバージョンを決めて、14-15と再逆転して、この素晴らしいドラマは終演となった。なお、まるで芸のない余興のようになったが、ノーサイドのホーンを鳴らす係が間違えて残り時間5秒で鳴らしてしまったのは、プロの運営としてはかなりお粗末だったが、ワイルドナイツボールで試合再開したのは、極めて正しいレフェリングだったのが救いとなった。

東京サンゴリアス50-19グリーンロケッツ東葛

 サンゴリアスは、SOアーロン・クルーデンがプレーできない状態のため、この試合では森谷をSOにし、田村熙をリザーブにした一種の非常態勢でやっている。しかし、さすがに先週のような稚拙なゲームはせず、順当に下位チームに圧勝した。底力があるチームとそうでないチームとの差が出たように見た。

3.インターナショナルラグビー関連

(1)イングランドの新監督にスティーヴ・ボーズウィックが就任

 成績不振を理由にして解雇されたエディー・ジョーンズの後任として、レスタータイガーズ監督のスティーヴ・ボーズウィックが、新たなイングランド代表監督に就任した。2027年RWCまでの5年契約。
 
 ボーズウィックは、イングランド代表LOとして57キャップを持っている他、ジョーンズ監督時代の日本代表アシスタントコーチ及びイングランド代表のアシスタントコーチを務めた経験がある。その後レスター監督に就任し、良い成果を挙げ続けていることが評価された。

 また、レスターでアシスタントコーチをしていたケヴィン・シンフィールドが、イングランドのディフェンス担当のアシスタントコーチとして、ボーズウィックとともにイングランド代表コーチ陣に加わった。シンフィールドは、リーグラグビーのイングランド代表26キャップ、英国代表14キャップを持つゴールキッカーで、英国スーパーリーグの得点記録を持っている。なお、その他の担当コーチについては、近々に指名する予定としている。

 一方、レスターの後任には、SHとしてプレーしていた元イングランド代表33キャップを持つリチャード・ウィッグルスワースが、現役を引退するともに監督に就任した。今回、ボーズウィック就任発表がかなり遅れた背景には、レスターがボーズウィック及びシンフィールドとの契約を途中解除すること、及びウィッグルワース就任手続きなどが影響していたと思われる。

 ボーズウィックとシンフィールドの就任で、ジョーンズ時代のイングランド代表がどのように変わるかを予想するのは難しいが、ジョーンズ時代に導入されたオーストラリアやNZスタイルのオープンプレーは減少すると思う。そして、イングランド伝統のFW戦とキックプレーに終始する一方、得点の大半をPGで獲得する、南アフリカタイプのラグビーになる可能性が高いと思われる。また、ボーズウィック自身もインタビューに答えて、「ジョーンズ時代はRWC優勝が目標だったが、毎試合勝利を目指すこと、そのためにはセットプレーの安定が必要」と述べているので、やはり伝統的なプレーに回帰すると思われる。

 一方、解雇されたエディー・ジョーンズは、「20年前は選手に対して厳しい練習を課したが、今は非常にやさしい練習にしているので、パワハラとの指摘は当たらない。さらに、イングランド協会は最初から自分を解雇するような姿勢であったこと、それに伴って急激にメディアからの批判が強まった」と指摘し、自分の解雇は規定路線であったように述べている。また、今シーズンのイングランドが不調となった原因として、「多くのイングランド代表がプレーするサラセンズが、サラリーキャップ制違反でディビジョン2に降格させられ、質の高いプレーを選手ができなかった」ためと、責任転嫁している。

(2)少し前まで、日本の福岡で開催されていた高校生チームのワールドカップ(サニックス主催)は、新型コロナウイルスの影響もあって無くなってしまったのは、とても残念だった。しかし、場所をタイに代えて今年開催され、NZの強豪ハミルトンボーイズスクールが優勝した。こういう大会は毎年開催して欲しい。そして、日本からもぜひ参加して欲しい。高校生には、ラグビーの国際試合というだけでなく、人生を学ぶ(外国人との交流を持つ)機会という、大変に良い経験になると思うから。

4.2023年1月1日以降適用される、WRのルール変更について


 
 WR(ワールドラグビー協会)は、2023年1月1日から適用されるルール変更を発表した。ゴールキックにかける時間、セットプレーの時間、TMOによる長時間のチェックなど、試合時間が長くなる要因を排除することを目的としており、すでにセヴンズやフランス国内リーグで試行した結果、マイナス要素は少ないと判断したもの。

 その内容を、英語原文から私訳したものを以下に紹介する。日本協会のルールブックでは、もっと別の翻訳になると思うので、あくまで参考まで。

(a)コンバージョンキック:トライを認められた後、90秒以内に行う。ボールを置きなおす時間も含まれる。違反した場合は、コンバージョンが取り消される。
(b)PK:PKとしてプレー開始した後、60秒以内に行う。ボールを置きなおす時間も含まれる。違反した場合は、スクラムが与えられる。
(c)遅延行為:プレヤーは遅延行為をしてはならない。違反した場合は、相手チームにフリーキックが与えられる。
(d)ラインアウト:ラインアウトに参加するプレヤーは、遅延してはならない。違反した場合は、相手チームにフリーキックが与えられる。
(e)スクラム:スクラムを組む場所が指定された後、30秒以内にスクラムを組む体制にならねばならない。違反した場合は、相手チームにフリーキックが与えられる。

 昔のラグビーは、スクラムは集まってすぐに組んでいたので、組み直しでも時間はあまりかからなかった。ゴールキックも成功率が低かったこともあって、時間をかける選手はいなかった。そもそも、キックティーを使用しておらず、芝や土をスパイクで蹴ってティーを作っていた。当然、昔はTMOはなかったので、レフェリーが見ていないところでの反則が見逃されたことが多かったが、おおらかだった。また、トライの判定は、レフェリー一人が独断でやっていたので、TVで映像を見ると間違っていることも多々あった。

 もちろん、ラグビーがより安全でエンターテイメントなスポーツに進化するためには、TMOの導入や、選手がセットプレーやゴールキックに時間をかけて行なう慎重さも必要だが、正直言って、現在はあきらかに時間をかけすぎている(そのため私は、例えば見たい試合が競合してTV中継されている場合は、メインで視聴している試合でゴールキックをしている時や、スクラムを組みなおしている時に、別のチャンネルに切り替えている。別チェンネルの一連のプレーが終わった後に元のチャンネルに戻しても、直前にゴールキックが終わっていることも多々あったくらいだ)。

 また、昔のラグビーの試合は、ロスタイムやハーフタイムの時間が少なかったから、90分あれば一試合を十分見られた。それが、プロ野球のようにTVの90分枠に収まらないようになり、今や120分枠で放映されている。ところで、私が野球を見ない理由は、やたら時間がかかる上に、プレーしていない時間が多すぎるからだ。そもそも野球は、イギリスの貴族が時間潰しに始めたクリケットからアメリカで改良・進化したものだから、スタジアムでビールを飲んで、ピーナッツをつまみながら、仲間や家族と談笑しつつ見られるスポーツだ。だから、試合の進行がゆったりとしている。とりわけ、ピッチャー交代の時なんて、TVCM放映のために特別に作っているのではないかと思えるくらい長い。

 だから私は、このWRの決定を支持したい。そのために、例えばゴールキックの精度が一時的に落ちても気にしない。今のスポーツ科学なら、すぐにゴールキッカーが短時間で正確なキックをできるような方法を考え付くだろうから。

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