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<ラグビー>南アフリカ対ブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズ第3テスト,プレビュー

南アフリカ・スプリングボクス対ブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズ

日時:2021年8月7日(土)19:00キックオフ
場所:ケープタウン・スタジアム,ケープタウン
レフェリー:マシュウ・ライナル(フランス)
アシスタントレフェリー1: ベン・オキーフ(NZ)
アシスタントレフェリー2: ニック・ベリー(オーストラリア)
TMO:マリウス・ユンカー(南アフリカ)

ブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズ:
ウィン・ジョーンズ、ケン・オウウェンス,タディグ・ファーロング、マロ・イトジェ、アルンウィン・ジョーンズ(キャプテン)コートニー・ロウズ、トム・カリー、ジャック・コーナン、アリスター・プライス、ダン・ビガー、デューハン・ファンデルメルヴァ、バンディー・アーキ,ロビー・ヘンショウ、ジョシュ・アダムズ,リアム・ウィリアムス
(リザーブ)
ルーク・カーワンディッキー、マコ・ヴニポラ,カイル・シンクラー、アダム・ベアード,サム・シモンズ,コナー・マリー,フィン・ラッセル、エリオット・デイリー

南アフリカ・スプリングボクス:
スティーヴン・キッショフ,ボンギ・ムボナンビ,フランス・マルアーブ,エベン・エツベス,ルード・デヤーガー,シヤ・コリシ(キャプテン),フランコ・モスタート,ジャスパー・ウィーゼ,コブス・ライナッハ,ハンドレ・ポラード(バイスキャプテン),マカゾレ・マピンピ,ダミアン・デアレンデ,ルッカンヨ・アーム,チェスリン・コルベ,ウィリー・ルルー
(リザーブ)
マルコム・マルクス,トレヴァー・ニャカネ,ヴィンセント・コッホ,マルコ・ファンスタッデン,クワッガ・スミス、ハースケル・ヤンチース,モルネ・ステイン,ダミアン・ウィルムゼ

プレビュー:
ライオンズのワレン・ゲイトランド監督は、先週後半の,オールブラックス監督イアン・フォスターが「眠くなってしまった」とコメントした,FW戦とキックのみの退屈かつ消極的な試合で,特に後半は空中戦に敗れたことを踏まえ,シリーズ優勝を決める最終戦に先発6人を入れ替えてきた。

1番PRウィン・ジョーンズが怪我から戻ったため,マコ・ヴニポラを17番に下げた。2番HOケン・オウウェンスと16番ルーク・カーワンディッキーをローテーションした。9番SHもアリスター・プライスと21番コナー・マリーでローテーションしている。リザーブFWの19番LOアダム・ベアードと20番サム・シモンズは,シリーズテストマッチ初出場となる。先週の試合で噛みつきプレーを指摘された,PRカイル・シンクラーは,裁定に付されることなく18番のリザーブに入っている。

FWよりもBKを空中戦とフィジカルバトルに備えて変更させた。キックキャッチに難があると見られた11番WTBデューハン・ファンデルメルヴァは残ったが,13番CTBクリス・ハリスを下げ,代わりにフィジカルに強いバンディー・アーキを入れ,12番だったCTBロビー・ヘンショウが13番に移動した。

残るバックスリーは,14番WTBアンソニー・ワトソンとFBスチュアート・ホッグを下げ,14番にはトライゲッターのジョシュ・アダムズ,FBには空中戦に強いリアム・ウィリアムスを先発させる。リザーブも,これまで22番でSOとCTBの控えだったオウウェン・ファレルを下げ,怪我から回復したフィン・ラッセルを22番に入れた。ロングキックを武器にしているエリオット・デイリーは23番で残った。

南アフリカ・スプリングボクス監督のジャック・ニーナバー監督は、先週の南アフリカが得意とする退屈な試合で勝利したことで,一安心している。しかし,フィジカル勝負に徹したツケから怪我人が出てしまった。

SHファフ・デクラーク,ブライドサイドFLピータースティフ・デュトイが怪我で欠場する。9番にはコブス・ライナッハ,リザーブの21番にはハースケル・ヤンチースが入った。7番FLは,本来LOのフランコ・モスタートが移動し,モスタートが担当していたLOには先週リザーブから活躍したルード・デヤーガーが入った。なお,この試合で復帰が期待されたNO.8デュアン・ファルミューレンは,足首の怪我の回復が間に合わず,結局最後までプレーするチャンスがなかった。

BKは,先週の試合でレッドカード相当の空中タックルをしたもののイエローで済んだ,WTBチェスリン・コルベは,裁定に付されることなく引き続き14番で先発する。リザーブでは,従来のFW5人+BK3人に戻した関係もあり,大ベテランのSOモルネ・ステインが22番に入った。テストマッチでのプレーは2016年以来5年振りとなる。後半,ステインのハイパントキックとPGを中心にしていくゲームプランが見えてくる。

先々週から引き続き、ラグビーの発展及びエンターテイメント性の観点からはかなりかけ離れた、重量級FWによる密集戦とBKによる単調なキックテニスが繰り返されたゲームが繰り返しされている。両チームの特性からは、致し方ない部分もあるが、東京オリンピックで世界が盛り上がっている中で,ラグビーの魅力を発信できないようなゲーム内容は,4年に一度というラグビー界の大型イベントとしては,かなり寂しすぎるものとなっている。

前回2017年のライオンズNZ遠征の第3テストマッチでは,フランス人レフェリー2人による,ノーサイド直前の適正な判定を覆す奇怪なレフェリングで,オールブラックスの勝ちを取り消し,1勝1敗1分という結果に無理矢理してしまったが,今回もシリーズを通じてレフェリングに対する両チームからの不満が多い。その背景には,ラグビー本来のトライを取り合うという明快な勝負とならずに,お互いに相手チームから反則を得て,PGで得点を競うという後ろ向きのゲームをしていることが最大の理由ではないだろうか。

2017年第3テストマッチの誤審については,フランス人レフェリーはその後関係者に謝罪したそうだが,今回は誤審発生以前の問題があると思う。両チームのプレー振りがいたずらにレフェリーに難しい判断を委ねすぎていることが問題となっているのだ。この結果,本来80分+2~3分であるべき試合時間が,100分以上に延びているのは,TMOの回数が多すぎるためと指摘されている。

ラグビーのレフェリーは,野球などのアンパイアではない。白か黒かを判定するためにいるのではなく,両チームがラグビーを楽しみ,トライを取り合えるようにゲームを円滑に進行することがその役割だ。従って,反則とPGが多いゲームは,ラグビー本来の趣旨から遠く離れているといえる。そして,そうしたゲームを進行するレフェリーは,非常に気の毒に思う。

こうしたことを打開できるのは,ひとえに両チームのプレー振り如何にかかっている。勝敗云々よりも,ラグビーの発展に寄与するような面白いゲームを期待したい。

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