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第3回◇学生との平和の対話集◇早稲田大学国際教養学部 基礎演習◇

第三回 争いの「正義」とは何か

 今回の授業では、教科書で紹介された次の5点を起点に、学生たちに自由に議論してもらった。(1)紛争の当事者はなぜ正義を必要とするの?(2)正義は法律で定められているの?(3)なぜ宗教が関わる紛争はこじれるの?(4)テロをなくすための暴力は許される?(5)「報復」は本当に有効なの?

学生 国際連合の機能と課題

 私たちのグループでは、大きくまとめてなぜ世界的な問題を解決することが難しいのかということについて意見を共有し、国際連合の機能についての議論に発展しました。みんなが核心をついた意見や疑問を挙げてくれてとても興味深く、そのそれぞれに納得しました。
 安保理の国々が強い発言権を持つ場合が多いためにその国の都合のいいようにしか事は進まないと考えたときに、当事者以外の国で話し合い対応や措置をとっていくのが良いのではないかという意見に共感しました。加害国、被害国(視点が違えばどちらが害を加えたかどちらが被ったのか違うと思うので一概には言えないですが)両国とも、たとえ安保理の一員であったとしても関わらないとすれば解決するのではないかというものです。
 しかし力をあまり持たない国の意見が大国に買収されるおそれがあるという課題も挙げられました。そう考えると、国際連合は国の力が影響せず大国によって意向が左右されない組織になる必要があることになります。私は、そんな機関を組織することが果たして可能なのだろうかという疑問に行き着きました。当たり前なのかもしれないですが、国はその大小に関係なく国や国民を守るということを本質的な性格としてもち、そのためには政治的、経済的に少しでも優位に立ち自国の勢力を維持または拡大しようとするということを国際関係論の授業でも学びました。その中で自国の利益を一切考えずに世界を見たり、自分の力を振りかざすことなく他国と対等に渡り合ったりすることは非常に困難なことであると思います。また、武力行使でもしないかぎりは、今ある国のヒエラルキーを無視して平等な組織を作ることさえも難しいと思うのですが、それでは平和のために暴力をふるうことになり、それこそ本末転倒だと感じます。これについては国際的な機関について理解をより深めたうえでもっと考えてみたいと思いました。

上杉返答

自国の利益の追求が必ずしも常に対立や緊張になるわけではない。どうしたら利害を調整できるのか。その利害調整のための機構としての国際機関の役割を考えていくのが、現在も必要な視点だと思います。

学生 国連の改革と常任理事国

 現在の国際連合は世界を統制する組織として十分な役割を果たしていないように感じます。ロシアとウクライナの戦争でもロシアが国連安保理において常任理事国として拒否権を行使しているため制裁を加えることができずにいます。この現状を変えるためには今の制度を変えなければならないと感じます。戦後70年経っても第二次世界大戦の勝戦国が世界を牛耳っているシステムは常任理事国ではない国も5大国も平等に1国1票の権利を持つ総会でのみ変えることができると考えます。総会において話し合う機会を設けることができ、常任理事国ではない国が現在の体制に反対する事で国連を少しでも強い組織に変えることができるのではないかと思いました。

上杉返答

課題は既得権益をもつ大国に変革をどう促していくのか、にあると思います。それには、その他の国家が足並みを揃えないといけません。そこのもう一つの課題があります。

学生 アメリカのアフガニスタン侵攻と内政干渉

 アメリカがアフガニスタンに侵攻し、政府を倒す代わりに親米政権をたてたという点について、個人的にアメリカが自分勝手に行動しているように感じた。そう感じる理由は、その間の出来事を私たちがあまり習ってい無いからだと思う。ここで、前提知識がないと本の批評をすることも難しいと感じたので、前提知識を補うために、自分なりに9.11の出来事などを調べたいと思う。
 また、アメリカがビン=ラディンを殺害することができたのはアメリカが権力のある国だからであると思う。反対に、もし被害を受けたのが力のない弱い国だったら反撃をすることすら出来なかったと考えると、不平等を感じた。2つ目のグループでは、読んだ内容について問題提起をした。特に議論が盛り上がったことは「内政干渉の定義とは」という話題だった。
 国内で起きている問題(特に独裁下による暴力や不当拘束)などに他国が疑問を感じても、内政干渉である、と跳ね返されてしまい、問題が隠蔽されがちである。
 これに対して、国連を強化するべきだという意見が多く出た。そもそも国連の中心である常任理事国5カ国は戦勝国で形成されている。しかし、果たして戦勝国は元から平和を目指していたのか?力づくで戦勝国になったとしたらそんな国が国連の中核となっても良いのか、という点について議論した。答えは出なかったが、拒否権を無くすべきだとか常任理事国を無くすべきという議論は尽きないと思った。

上杉返答

問題意識をもって調べることは、知識として身につくと思います。内政干渉の定義は、面白い視点だと思いました。これまで、どのような内政干渉が実行されてきたのか、そのような行為が内政干渉として批判されてきたかいう具体例から積み上げて定義すると良いかもしれません。

学生 宗教と紛争の関係性

 私たちは「なぜ宗教が関わると紛争はこじれるのか」について話し合った。私がまず、「信仰心は戦力を動員するために利用されている」ということをへーっと思ったところとして紹介したところ、みんな一度は同意したものの、「でも本当のところはわからないよね、もしかしたら本当に信仰心から戦っているのかもしれないし」という発言があり、そこから、多くの実際に戦う人たちはきっと心の底からの信仰心と敵に対する憎しみ(?)から戦っているのだろう、しかし、上層部の人たちはきっと政治的・思想的な思惑があるのだろうとなった。
 私たちは、「戦いたいリーダーがみんなの信仰心を利用して戦力を集めている」というところには納得したものの、「ではどうしたら宗教が原因の紛争を解決できるのか」という点が本には載っていなかったので、そこに焦点を当てて議論した。また、本に一神教と多神教の話も出ていたが、一神教と多神教の問題でないなら何が問題なのだろうかという話になった。まずは日本での場合を考えた時に(日本は多神教の国と言われているし、まずは自分たちに当てはめて考えてみようと思った。)今日の日本では宗教が原因の紛争があまり見られないこと、考えられる理由は日本では信仰がそこまで厳しくない、思想が強すぎないことだが、昔の日本では仏教の宗派同士の激しい争いが結構あったよねという話になった。では、昔の日本と現代の日本の違いを考えると、その違いは生活の豊かさなのだろうか?というところに辿り着いた。確かに、現在紛争地と呼ばれいるような地域は発展途上のイメージがある。
 日本は比較的恵まれた環境にあることは間違いなく、豊かさのない人は自分が恵まれない環境にいることを、宗教(相手と自分で違う点だから攻撃しやすい)を口実に他人を攻撃するのではないだろうかという結論になった。では、国を豊かにするにはどうしたら良いのかを考えると、紛争を始めてしまうほど困っているのだから、そう簡単には解決しないのではないか。また、一般的には日本のODAのように、他の国が介入・支援することがいいのだろうかと考えるが、支援してもらって豊かになったとしても、これまでの過去から生まれた憎しみは消えないので紛争は続きそうだ。そうすると、やっぱり宗教が原因の紛争の真の理由は、もちろん生活の余裕さや国の豊かさは絶対影響しているものの、本質的にはもっと違うことなのではないか、と会話を振り返って今は思う。自分たちのグループでも、それぞれのグループで話し合ったことの共有をした際にも、とても感じたのだが、何かの原因がわかったとして、じゃあそれをどう解決したらいいのかを現実的に考えると全然いい方法が思いつかなくてとても難しい。
 例えば、テロに対する報復がアリなのかという話題に対して、ある学生は、テロは理由なくやっているわけじゃなくて何か主義主張があるわけで、しかしテロに屈してしまったら、テロが要求を通す手段になってしまう、と問題提起した。では、テロを起こしてしまうというところまで辿り着いてしまう前に要求をもっと違う形で主張して貰えばよいのではと思った。だが、例えば政治的な基盤が整っていなければ選挙で意思表明も難しいだろうし、国内で解決できるようなレベルの問題でもないからテロ組織は国際的にアピールしているのだろう。
 また、ある国内で非人道的なことが行われていて、他国がそれを国連などの正式な場で指摘したとしても内政干渉とされた場合何もできなくなってしまうため、政策に関する干渉はなしでも人権などに関する干渉ならありにしたらどうだろうかという話題が上がった。実際政策(政治)と人権侵害の問題は深く絡まってて切り離せないから線引きが難しく、現実的に考えると困ってしまうことが多々あった。最後になって、「私たちが何かを考えたところで出てくることはこのくらいで、私たちが考えて解決したら世の中こんな困ってないよねー」という話になり本当にそうだなと感じたが、一方でこのように一人一人が真剣に考えることで解決には至らなくても見えてくるものがあることも実感した。

上杉返答

色々な人の意見を重ねて議論をしている様子が再現されていて嬉しく思いました。書かれていない解決策とは、一人ひとりが真剣に考えたことをもとに行動に移すことで、小さな波が生まれることによって見えてくるのだと思います。

学生 テロと報復

 教科書を読んで新たに知って驚いたことを班のメンバーと共有して、また章の最初に書かれている問いに対して考えました。自分たちは「テロに対して報復をするべきか」について考えました。そもそもテロとは何かを考え、そこからテロに対する報復をするべきかを検討しました。テロとは国家に対して自分の要求を通すために過激な手段を使う行為を指し、それに対する報復はやむを得ないと結論付けました。というのも一度テロ行為を無視してしまうと、他の集団が「自分たちがテロを行っても報復されない。だから自分たちも行おう」と考え、テロが絶えなくなってしまうと考えたからです。どの立場(第三者なのか被害者なのか)が報復を行うべきかについてはまだ考えられていませんが、一度誤った行為を行ったものには制裁を加えることは将来のためにも必要なことだと思われます。また、被害側になって考えてみれば自分の親族が殺されたり、街を破壊されている状況で冷静に対談で和解を求めるのは不可能に近いと考えます。よってテロと同じ規模でなくてもテロに対して何らかの報復はするべきだと考えました。また、ある学生が言った、「そもそもテロを未然に防げるように強化するべきだ」という考えに納得しました。国が政策の一部としてテロ対策を強化してテロが起きないようにできれば被害も未然に防げ、報復をする必要もなくなるので、テロが起きないように対策をしっかりとるべきだと思いました。
 その後、他の班のメンバー達と各班が決めた問いとそれに対する答えを共有しあった。ある学生が言っていた、宗教を利用して発生する紛争についての話が興味深かった。昔の日本の宗派同士の争いやキリシタン弾圧などを例にして、「どうして今の日本では宗教紛争が起きなくなったか」についての考察や、「宗教が紛争の火種として用いられないようにするために何をするべきか」の考えを聞いてとても分かりやすく納得した。このような問いは絶対的正解がないため考えるのがとても大変だという話になったが、正解が一つしかない事象や明確な正解をもつ事象の方が世の中には少ないのでこのように様々な側面から考えることはとても大切だと思った。

上杉返答

テロを未然に防ぐ手段として北風と太陽の二つのアプローチが少なくとも考えられます。人々の不満を事前に察知して改善をしていくことで不満が暴力化しないようにする。AIやビッグデータを使って人々の不満を政治家がつかみタイムリーに改革をしていく社会は、いい社会といえるかもしれません。

学生 宗教紛争の解決策

 自分達のグループは初めに「なぜ宗教が関わる紛争はこじれるの?」について話し合った。個人的には、宗教が戦争の道具に使われるという考え方は聞いたこともあり、実際に歴史の授業でもそのように教わったことがある。いざニュースなどで宗教内での紛争を見聞きすると、やはり宗教そのものについて争っているように見えていた。実際に戦争で使われる側(兵士、戦闘員)は確かに自分の信仰のために戦っていると思うし、ある意味では宗教そのものについて争っているとも言えるのではないかと感じた。ただ使う側の人間は資源や領土、権威を獲得するために宗教を道具として利用し人々を動員していることも事実であり、視点によって見方が変わってしまうのではないかと思う。
 グループでは本文に明確な答えがなかった宗教がらみの戦争の解決策について話し合った。「金持ち喧嘩せず」と高校時代の世界史の先生から言われたことがあったので、戦争の原因は貧しさ、欲求不満なのではないか?宗教はそれをさらに深刻化させる下地的な何かであって、そうであれば国を豊かにすること一番の解決策なのではないかという結論に至った。確かに望むものが手に入っている状態でリスクを冒してわざわざ他人と争う必要はなく、必然的に争いは起きにくくなると考えられるが、必ずしもそうであるとは限らないし、そもそも貧しさから脱却し、国を豊かにするために戦争をしていると仮定していて、その解決策が国を豊かにするというのもなんだかよくわからない論理だと思えてきた。
 二つ目のグループでは皆が持ち寄ったものを共有した。内政干渉については、どこまでが内政干渉かという線引きが難しかった。中国によるウイグル人問題については指摘するべき事案ではあるが、過度な指摘はやはり内政干渉になってしまうのか?それともウイグル人を保護するためであれば許されるのか?とぜひ議論をしてみたいと感じた。自分としては当事国から内政干渉だと批判されたとしても、外部からの圧力は意味のあることで許されるべきではないのかと思った。紛争はそれぞれケースが異なっていて、解決のための普遍的な答えはおそらく存在しないのでそれぞれの状況に合わせて解決策を練ることが重要だと感じた。

上杉返答

宗教そのものについて争うとは、どういうことですか?どちらの教義が正しいかを巡る争いですか?イグル問題と内政干渉の議論は発展させて考察する余地がありますね。よろしければ、議論を深める視点や広める視点を加えてください。

学生 正義と内政干渉の議論

 最初のグループでは、まず紛争の当事者はなぜ正義を必要とするのか?という話をしました。その際、本書でアンパンマンについての記述が見受けられ、アンパンマンの話を軸に正義とは何かと思考しました。私自身が物事を哲学的に考えてしまう癖があるため、つい「正義とは何か、その価値基準は何か」という話に注目してしまい、『平和』の論点から逸脱する議論を持ち出してしまったので、今後は気をつけたいです。
 しかし、一方で「正義とは何か」と考えるのも無駄ではないと思います。大義名分たる正義は人に納得されなければいけない、しかしその正義が認められるのが特定の地域だけだからこそ他の地域の『正義』と対立してしまう。つまり、潜在的な意識の差があるから国際関係は拗れる一方のだと改めて当たり前なことを確認できました。
 その次に各班持ち合いの疑問を共有しました。内政不干渉についての言及が非常に興味深かったです。内政不干渉とはどこまでが境界になるのかと議論しました。私の考えとしては、内政に干渉することは越権行為であると考え、原則としては他機関が口出ししてはいけないと思います。しかし、ウイグルの問題についての指摘があり、自己の考えの欠落を確認できました。ウイグルの人権侵害について他国が内政といって不干渉の立場をとっていいのか。人権のレベルと国家の権利のレベルではどちらを優先するべきなのか、新しい疑問が生まれました。私の考えとしては、やはり内政干渉は明確な境界(つまり、内政に口を出すこと)を設けないと強国の意のままになってしまうと思います。しかし、ウイグルなどの人権の問題については世界人権宣言等の国際連合の意思に反するため、国際機関として干渉することは許されるのではないかと感じました。

上杉返答

ディスカッション中になされた問題提起は多くの人の琴線に触れたようですね。脱線は重要です。それに正義を哲学するのは、平和への道の一つです。

学生 正義、国際連合、内政干渉

 私たちの班では、正義は法律で定められているのかという点について話し合いました。大国の定める定義が世界の基準になりつつあることに疑問を持ち、現在の国際連合の体制は適当であるか否か議論を交わしました。戦後70年以上が経過した今でも第二次世界大戦の勝戦国が絶対的な力を持っている制度を変えるには、既得権益を得ていない国同士が団結して総会で訴える必要性があると考えます。常に大国の傘下に入っている小国と絶対的権利を固持する大国とが対等に議論できるようにするのは一筋縄で行く問題ではないと感じますが、国の大小に関わらず平等な権利を持てるよう促していく以外方法はないのではないかと思いました。
 二つ目の班ではそれぞれの班で出た話題を共有し合い、最も興味のあるトピックについて語り合いました。他国の争いに他国が外側から口や手をだす事で新たに大きな争いが生じるため、どこまでが過干渉なのか線引きをしなければならないという意見を中心に議論を行いました。実際問題、イラクやアフガニスタンにおいても米国の干渉は歯止めをきかせられていなかったように感じました。結果として多くの犠牲を出し現地から撤退していく米兵の姿を見て、やはり全てを牛耳るのは米国なんだと幾度と感じたことがあります。その体制も徐々に変えていかなければならないのではないかと考えました。内政干渉は今までにない新しい紛争解決の視点だと考え、その定義づけも国際連合で発案されるべきだと思いました。

上杉返答

法の支配は秩序維持の鍵を握ります。国際関係でも一国内の内戦でも力をもったものをいかに納得させるのかが思案のしどころです。万人の万人に対する闘争を終わりにするための法の支配。その方策を検討していきましょう。

学生 正義、内政干渉、国際機関

 1つ目の班では「紛争の当事者はなぜ正義を必要とするのか」について話し合った。
 争いでは双方に「正義」があり、理解されにくい「正義」を掲げている側が悪役とされ、より多くの人が賛同する「正義」を持つ側の暴力が正当化されるということがアンパンマンの例えから考えられた。
 2つ目の班では、「どこからどこまでが内政干渉か」 という議論に関して、 「『口を出すな』と『危ない時に助けてほしい』を両立することは難しい」という発言に共感した。
 特定の国に支援を求めると、支援した側とされた側の上下関係のような空気は避けられないものであり、見返りとして土地などの権利を要求されることもある。このようなことを避けるためにも、共同で支援を行う国際機関が求められると思う。
 しかし現在の国連は問題解決のための実行力がなさすぎるため、改革が必要だという意見が、自分を含め班の中で多く挙がった。

上杉返答

『口を出すな』と『危ない時に助けてほしい』を両立することは難しい。。。その通りかもしれません。この二項対立を乗り越える第三の道(これら2極の間に位置する多様な方法)を編み出してください。

学生 正義、テロ、国際機関

 正義という言葉のあいまいさや立場による違いなどを主に話し合った。多数派が現状を維持するために少数派を弾圧することによって平和を維持しようとすることでテロという結果になってしまうということや、正義という名の下で拷問が行われていたという事実を知って入ってくる情報を鵜吞みにしてしまうことの危険性に気づかされた。
 また、シンガポールが圧倒的な武力を持つことによって反対派を抑制したり、情報を管理したりしているということを聞いて、国家としてどのように対応し行くべきなのかを話し合うことができてよかった。国連の権力や現状についてもウクライナでの武力衝突を例に挙げながら常任理事国の制度や、国連総会について話し合うことができ、よかったと思う。

上杉返答

正義の議論と国家の議論を関連づけた着眼点は素晴らしい。そして、国家のあり方や政策に対して、私たち国民に何ができるのか、を合わせて考察していきましょう。

学生 正義とテロ行為への報復

 今日は争いの「正義」とテロ行為に対する報復の必要性について議論した。筆者は紛争の当事者たちどちらも自らの「正義」を主張して争っているといっていたが、まさしくその通りだと思った。それと同時に、筆者はアンパンマンは正義の名のもとにバイキンマンという「悪」に対して暴力をふるっていると言っていたが、現実だと双方が自らを正義だと思っているため、アンパンマンどうしが殴り合っている、という絵になるためなかなかにシュールだなと思った。
 その後、テロに対する報復やテロ組織に対する暴力の正当性についても議論した。本文にも書いてある通り、復讐はさらなる復讐にしかつながらないと思ったし、その復讐行為にかかる費用もばかにならないと思った。しかし、同時に構造的な暴力が存在する以上、テロ組織が存在するのは避けられない事なのではないのかと思った。なぜなら僕が思うにテロ行為は構造的な暴力が表面化したものだと思うからだ。そしてテロ組織を避けられない以上テロ行為は未然に防ぐことが平和に繋がるのではないかと思った。現に、シンガポールなどの国は政府が厳重な監視のもとテロに走るであろう人達を事前に察知し”再教育”を施す。
 上杉先生はシンガポールの監視社会を息苦しくかんじないのか?と聞いてくれましたがぼくは慣れたというのもありますが、今ある平和を享受するためにも致し方ないのではないかと思います。

上杉返答

シュールな現実が横行しています。復讐心は、なぜ生まれてくるのだろうか。復讐心を乗り越えるために、何が効果的なのだろうか。慣れと「構造的暴力」や「文化的暴力」の違いは?

学生 紛争における正義と報復

 まず私たちは「紛争の当事者はなぜ正義を必要とするの」かを読み、意見を交わしました。正義という言葉の反対は悪ではなく、また別の正義だという話はどこかで聞いたことがあり、この章の内容は、まさにそのような感じでした。一つ私にとって大きな発見があり、それはこの本が述べていた、「私たちにはみな、自尊心があり」「誰もが自分は良い人間なのだと思いたい」というところです。正直に言うと私はこれまで「正義」という言葉は人間が自身の利益を求める行為の隠れ蓑でしかないと考えていたため、初めは皆が「正義の味方」になりたいという部分について懐疑的でした。しかし、アンパンマンの例えを読んだ後、その考えは変わりました。アンパンマンを主に見るのは小さな子どもです。非常に純粋かつ正直な存在で、そういった子たちにアンパンマンが受け入れられている。その事実に気づいたとき、確かに人間というのはほとんど本能的に「正義の味方」であろうとしているんだろうなと思い直しました。
 テロへの報復についての章で、テロリストは元より暴力で現状を変えようとしているのではなく話し合いや武力を伴わない訴えの末、変えることが出来なかったからテロに走るしかなかったのではないかと述べていたのが非常に印象的でした。前回の授業でも、話し合いによって解決できないことは暴力で解決するしかないのかという疑問が浮かんできたのですが、その時思いついたのはストライキを行うという解決策です。それなりの数がある集団ならば、今の体制には協力しないという無言の抵抗によって意見を通すことができるかもしれません。しかし、数が少ない少数派の場合はどうしたらいいのでしょうか。声が小さいと文字通り聞こえないか無視されるという結果に終わってしまいます。そうなってくると少数派は武力によって目に見える形で主張するしかできなくなってしまうような気がしてなりません。そうして暴力に走った人たちのことを私たちは悪と捉え、正義の鉄槌を下す。本当に解決の糸口が見えず、この授業が終わるまで考え続けても答えは出ないと思います。
 最後にふと思い浮かんだことがあるのですが、それはヒトラーのことです。彼の背景には詳しくありませんが、演説が巧みだったと聞きます。もしもそれだけで大衆の心を掴み、自身の正義を認めさせたのだとしたら、彼は武力を使わずに主張を押し通すことに成功した例なのかもしれないと思いました。

上杉返答

「正義という言葉の反対は悪ではなく、また別の正義だ」言い得て妙ですね。アンパンマンの事例が腑に落ちたようで筆者として嬉しいです。暴力に頼らない抵抗(意思表示)の方法を見直すのは重要だと思います。ご指摘のとおり、ヒトラーは演説がうまかったと言われます。しかし、同時に突撃隊や親衛隊という暴力装置を駆使していたことも事実です。https://amzn.asia/d/17UrOhi

学生 正義、法律、安保理の役割

 私たちのグループは主に「正義は法律で定められているの?」ということについて話し合いました。合法、正義の定義は正直曖昧だし、両者が正義だと思っていることをやった結果対立することもあると思うので一般論では言いにくいものであると思った。また、安保理が認めた暴力(武力行使)ならいい、とされていることに私たちは少し疑問を抱いていて、価値観がバラバラな中である特定の価値観に従って良し悪しを決めるのは少し違うのかなと思いました。しかし、安保理がなかったり常任理事国5カ国の設定を無くしてしまうのは全体の秩序をなくしてしまう気もするし、よりまとまりがなくなるとも考えられる。また、無くそうと思っても力のある国の特権を無くすことになるのでことがうまくいくとも限らないと思うので難しい問題だと感じた。
 しかし常任理事国の制度で一番厄介と感じてしまうのは「拒否権制度」で、現在のウクライナとロシアの戦争もロシアが拒否権を行使することによってややこしくなってしまっている。この制度によって平和がより遠のいていると感じるとともに、私たちはこの制度が自分たちの「正義」を守る手段なのかなとも思った。
 大まかに資本主義と社会主義の価値観の違いというのが昔からあって今でもその価値観の違いはあって、アメリカ側とロシア側で少しわだかまりがずっとあり、アメリカ寄りの考え方が主にされてきている中で価値観の押し付けを「拒否権」というものによって防いでるとも考えられると思った。多数派に合わせて価値観を変えなければいけないということはないと思うし、これはある種の権利と言われればそうも捉えられる気がした。それでもロシアウクライナのようなこともあってはならないとも思ったので私たちは解決策の一つとして「自国が関わる問題では拒否権を行使できない」というのをあげた。これは結構いい案でもあるがまだ正直問題もあって、賄賂が発生したり自国ってどこまで関係していることを指すのかとかまだあやふやなところもある。バックに実はどこかの国がついている、というのは良くある話なので、そこはもっと考える必要があると思った。

上杉返答

国連安保理の拒否権が正義を守る手段という考察。嫌なものは嫌として断固拒否できる制度は有益なのか。もちろん、拒否権行使に至る過程で十分な意思疎通と議論が欠かせません。それができているのか、という視点も有益でしょう。

学生 紛争、正義、テロについての議論

 紛争と宗教の関係や「正義」、テロへの反応について話し合った。紛争において、「宗教は思想統一や戦意高揚のために利用されている」という、紛争指導者側の視点のみで私は考えていたので、「宗教を第一の理由にして戦う末端の兵士もいるだろう」という意見が興味深かった。また、「戦争をするのは大抵貧しい人。現状に不満を抱きにくい金持ちは戦争しない」という意見は新鮮だった。ただ、金持ちでも、武器売買といった面での利益を求めて戦争に加担することもあるのではないかとも思った。「正義」の話では国連の常任理事国が議題に挙がり、「常任理事国ローテーション制」「問題の当事者には投票権なし」という意見が面白いと思ったし、それらのリスク(前者の場合は賄賂横行、後者の場合は北朝鮮などの特定の国の暴走)についての意見にも納得した。私は、常任理事国制度は80年近く前に生まれたものだから、時代に応じて制度の改変は必要とは思う。とはいえ、現状の制度に代わるより良い制度はなかなか思いつかず、この問題は十分な時間とより深い議論を要すると感じた。
 テロに関しては、シンガポールを例にした「国家の強大な武力・情報力でテロを未然に防ぐ」という意見が興味深かった。シンガポールは監視社会であるというのも初耳だったし、「監視社会でも特に不満はない」と聞いて少し意外に感じた。中国に住んでいた頃、中国人の知り合いに「共産党の政治に不満はないのか」とこっそり聞いたときに、「生活は豊かで、現状維持に不満はない」と答えたのを思い出して、それと体制に対する考え方が似ているのと思った。一方で、強大な武力でのテロ対策というのは警察や軍部の権力濫用に繋がる危険性が十分にあると思った。「今までそんなことは無かったから大丈夫」とも言えなくもないが、絶対ではないためやはり安心しきれないと思った。特に、最近他の授業でトルコ政治を学び、「2016年のクーデター未遂事件は、護憲の為の軍の政治介入ではなくただのテロだ」という見方もあると知っただけに、強くそう思った。

上杉返答

授業中の議論から派生して、国家と国民の関係性にまで話題が及んでいたことを嬉しく思います。不満とは、どういう時に発生するのか。その解消法として、人々は、どのような方法を選ぶのか。AIやビッグデーターの活用によって、国家は国民を満足させやすくなるのか(住民投票をしなくてもデータが国民の嗜好を示す?!)。

学生 正義と内政干渉についての議論

 最初のグループでは、アメリカが9.11への報復措置としてビンラディンを殺害するまでの過程の中で行われてきた多くの拷問や不当な拘束などが、そもそもあまり報道されていないために知られていないことや、そもそも報復措置は正義なのか、ということなどを話し合いました。また、正義という言葉は定義するのが容易ではなく、そもそも定義付けをするべきなのかも疑問である単語なので、一概にこれは正義か否かという議論をするのも難しいなと思いました。
 次のグループでは、お互いの班の問いと各自の見解について話し合いました。私がみんなに提示した問いは「内政干渉は政策ではなく非人道的なことが行われているときのみ認められるべきか」というものでした。これについては、人道に関することと政治は繋がりがあり、それを切り離して内政干渉の可否を判断するのは難しいのではという意見が出て、確かにその通りだなと思いました。しかし、グローバル化が謳われている今日の世界で、他国で行われている非人道的な行為について何もできないというのはあまりに残酷かつ悔しい話なので、今後何かしらの措置を取るべきなのは間違いないはずです。
 また、宗教紛争の原因である、「国を豊かにしたい」という思いは、紛争がなくならないと可能にならない。しかし彼らは生活に不満があるから紛争を起こしている。という圧倒的な負のジレンマの話については、正直パッとこうすれば良くなるかもね!と言うことができないくらい難しく、みんなでしばらく頭を捻りました。
 テロリストや紛争を起こす人々は、最初から暴力という手段に走ったのではなく、弱い立場に立たされ続けた挙句、自分たちの意見を聞いてもらうには暴力という手段しか残っていなかったという意見も踏まえると、やはり全員が国を豊かにしたいと思っているはずなのに争ってしまうというループに陥ってしまっているんだなと思いました。真の豊かさとはなんなのかについても今度ゆっくり考えたいです。最終的には、この前まで高校生だった私たちが数分話しただけで解決策が見つかっていたら、そもそもこんな紛争なんか起こってないよね。という話になり、改めて私たちがこの授業で扱っている多くの問題の複雑さを確認できたと思います。

上杉返答

友人の発言に真摯に耳を傾けている様子がうかがえました。長い時間をかければ妙案が見つかるとは限りません。新鮮な目で柔軟な発想をすることによって、たとえ数分の議論からだって何かが見えてくるはずです。

学生 正義、内政干渉、安保理の議論

 初めに、「正義は法律で定められているのか」をトピックとして話し合った。その議論中に国際連合の安全保障理事会が使う軍事制裁は合法化されているということを疑問視する声が上がった。安保理の暴力を正当化することができると言うことなら、それは国際社会を5大国が実質的に支配してしまうことにつながるのではないか、第二次世界大戦から長い月日が経過し国際情勢が大きく変化しているにもかかわらず安保理が絶対的な権利の「拒否権」を行使できるのはおかしいのでは、との意見も出た。しかし世界の安定のためには拒否権は必要であり、失くしてしまうことでリスクが生じ得る、と思考を巡らすと必ずしも拒否権や安保理が悪であるとは言い難いことに気付き、考え込んでしまった。
 次に各班で出た議題を共有しあった。その中でも特に興味深く感じたのは「内政不干渉の定義はなんなのか」ということである。もちろん他国が一国の政治に深く干渉し、政治体制を乗っ取ってしまうようなことはあってはならない。しかし、一国が人道的に受け入れ難いことをしている場合はどうなのか、またNPOのような一国と密着して支援を行うような団体が、政府から補助金を受け取ったら、それは内政干渉にあたるのだろうか。このような複雑な問題は多角的な視点から話し合うことが重要であるため、また機会があれば議論して意見を聞いてみたいと感じた。

上杉返答

最後の政府とNPOの関係する部分が、どのように内政干渉の議論とか変わるのか、関連性や接点がよくわかりません。補足説明をしていただけますか?

学生返信

NPOなどの団体は教育や就労支援を提供すること通して、その国に大きな実質的だけではなく意識的な改革も施すのではないかと考えています。そこで、これらの機関に他国の政府が補助金を与えるのは「そのような改革活動を支持します、お手伝いします」と言っているのと同じなのではないか、と感じました。

上杉返信

なるほど。通常は、外国のNPOが当該国で活動する場合には、当該国の許可が要ります(職員のVISAも含め)。そこで契約を交わすのですが、当該国政府が認める活動でないと入国もできませんので、その意味で内政干渉とは言いにくいかもしれません。ただし、戦争中に非合法に反政府勢力を支援する場合などは、これには当てはまりません。

学生 正義と紛争、テロの原因と対処

 三回目の授業では、「紛争の当事者はなぜ正義を必要とするのか」という題について話し合った。
 争う当事者たちは必ず各々の正義を持っており、だからこそ暴力までも正当化することができるのだと分かった。話し合いの中で面白かったのは、アンパンマンが出てきた時である。本の中のたとえ話でアンパンマンのことが書かれており、アンパンマンが暴力をふるっていても「正義の味方」とされるには、バイキンマンが悪事を働いていることが必須になるということであった。そこから私たちは、バイキンマンにも自分なりの正義があって行動しているのではないかと考えた。アンパンマンについてそれほど深く考えたことは無かったので楽しかった。
 本題に戻ると、当事者たちはどちらも「正義」をもっているとするならば、当たり前だが今までの紛争やテロにおいて「悪者」とされてきた人々にもそれがあるということになる。テロのことを考えると、加害者たちはなにか耐えられないような不満があり、平和的な解決策が何もなかったがために最終手段としテロを起こしてしまったのかもしれない。我々は、テロが起こったあと、加害者たちを単に「悪者」扱いし、彼らが抱えていた原因となる不満ついては追求せず、何も対処しないでいいのだろうか。このことが、とても印象に残った。テロを起こすことは決して許されることではないが、二度と起こさないためにも、遅くなる前に国際社会が弱者に手を差し伸べる必要があると感じた。

上杉返答

「我々は、テロが起こったあと、加害者たちを単に「悪者」扱いし、彼らが抱えていた原因となる不満ついては追求せず、何も対処しないでいいのだろうか。」私もこの点が気になります。

学生 国連の安保理と紛争解決の難しさ

 今回はまず、グループで、正義は法律で定められているのかということに関して話し合った。そこで一番の論点となったのが、国連の安全保障理事会の決定により行使される軍事制裁の正当性だった。安保理には五か国の常任理事国がいて、それぞれが拒否権を持つ以上そこで行使が決定される軍事制裁は正当ではないのではないかと思った。しかし拒否権をなくし非常任理事国の決めることを全て通すようになってしまっても逆に平和が脅かされるのではないかという意見も出て、合法化された暴力の良し悪しについては結局答えがまとまらなかった。
 そのあと、各班で出た意見を交換し合った。その中で、国を豊かにするために紛争が起こるが、国を豊かにするためには紛争を終わらせる必要がある。しかしそうすると国を豊かにするという目的は果たせない。といった負の連鎖が続いてしまうよねという話題が出てきて、これが紛争解決の核心を突いた考えで、この負の連鎖を断ち切ることができれば紛争も解決できるだろうと思った。だが、これはまた一番解決するのが困難な問題だとも思い、この授業の中で、世界で起きている紛争を解決することの難しさを改めて感じた。

上杉返答

負の連鎖を一刀両断に断ち切ることは難しくても、徐々に鎖を解きほぐしていくことは諦めてはいけないと思います。一つの鎖でいいので、解きほぐす方法を考えてみてください。

学生 テロ報復と内政干渉の議論

 1つ目のグループでは「テロに対して報復をするべきか」について考えた。最初はテロとはという話から始まった。テロはたくさんの人に怖い思いをさせるだけではなく、それの影響で政府が何かしらの動きをすることだと私は思いました。テロが起きてしまった時は反応しないという選択肢はなかなかないと私はいった。他人としては反応をしない、冷静に考えるということはできるが、実際自分が被害者側に回るとそううまくいきません。ある学生はテロが起きる前に防ぐというのが一番いいのではないかといった。シンガポールでの経験について語ってくれた。確かに起きてからは悪化することが多いため、そもそも起きないようにするのが一番だと思う。
 2つ目のグループは、各グループで読んだ内容について語り合った。各自でまとめを発表した後、「内政干渉」について議論をした。私は国や国民のHypocrisy(偽善?)が気になる話をした。普段は「口を出すな」と言っている国や国民は問題に合ったときに「助けて」ということが多く、その2つは両立することができないと思うといった。また、国連の話が出た。常任理事国が存在することによって本当に国連内での平等は存在するのか。そして国連を強化すべきなのか。常任理事国は第二次世界大戦を勝利した国に構成されているため、本当にこの五カ国は「平和」を理解して目指しているのかという疑問があがった。結局、国連をどうやって「直す」のかはわからないが、改善する必要はあると思う。

上杉返答

テロを起きないようにする、という目標に対して、さまざまなアプローチが考えられる。どのアプローチも効果的といえるのか?第三者の場合は、口を出すなといいやすい。自分の場合は、助けてもらいたい、と思うのが人間?!

学生

 話し合いの中でもグループにいる人によってさまざまな意見や見方が出てくるのは面白いと思った。それそれがしっかりと自分の視点で物事を捉えられていることがすごいと思いました。一つの視点や意見に対して、別の視点からの見解などを言っていて、戦争や紛争といった複雑な問題を解決していく上で大事なことだと思いました。

総括

 学生たちは、現在の国際秩序の中核を担っている国連の安全保障理事会に改善の余地があることを疑っていない。とりわけ、常任理事国が持つ拒否権を、どうにかしないといけないという問題意識を共有していた。同時に、そのような改革を、どう実施することが現実的なのか。改革をするとした場合、どういった代替案が考えられるのか。これらの具体的な方策については、妙案が思いつかないようだった。
 くわえて、国連が基盤とする内政不干渉の原則が、21世紀の国際秩序を維持するうえで障害になっているという認識もあった。大国の拒否権、国家主権といった既得権益を解体して、新たな秩序を形成することの難しさを痛感したようだ。
 この既得権益をもつ者から抵抗を受けない形で改革を進めることが、改革の成功の必要条件になりそうだ。国際秩序、国内秩序、組織内秩序のいずれのレベルにおいても、それが肝になる。同時に、既得権益を握るものへの武力行使(暴力的革命)に頼らず、対話によって変革を促す術ことが、いま紛争解決学に問われている。

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