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第1回◇学生との平和の対話集◇早稲田大学国際教養学部 基礎演習◇

学生との対話とは

こんにちは。上杉勇司と申します。私は早稲田大学国際教養学部で教鞭をとっています。この学部は英語ではSchool of International Liberal Studies 、略してSILSと呼びます。ここでは、私がSILSで担当している基礎演習(First Year Seminar A)で、私が受講生たちと交わした対話を書き留めていきます。毎週、受講生たちは、授業中の議論のなかから、各自の心に響いたことを私や学友に共有してくれます。ここでは、そのような学生からの語りかけに対する私の返信を綴っていきます。

基礎演習とは

SILSでは大部分の科目が英語で開講されています。紛争解決学や平和構築論を専門とする私の場合は、Peacebuilding and Humanitarian Aid in Armed ConflictsやHuman SecurityやIntroduction to Peace and Conflict Studiesといった科目を英語で教えています。 そのなかで、唯一、日本語で開講しているのが、ここで取り上げる基礎演習。毎年20名の新入生を対象に、大学生活を充実したものにするための基礎を提供するのが、この基礎演習の目的。私が担当する基礎演習では、平和の諸問題を題材として用いながら、批判的思考や複眼的思考を身につけることを達成目標に掲げています。同時に、新入生に「ホームルーム」的な場を提供することも意図しています。なぜならば、大学生活では、上級生になって「ゼミ」に所属するまで、互いを深く知り、学友として切磋琢磨する友人を作りにくいからです。基礎演習の時間では、学生たちが真剣に学友の意見に耳を傾け、自らの意見を共有することを大切にしています。

第一回 紛争とは何か

学生A

「今日は同じ授業を取った人たちと 交流を深めることができ、非常に良かったし授業自体も楽しかった。紛争の定義については、普段ニュース等でよく耳にすることはあってもそこまで深く考えることのない話題であったので難しかったが、自分の考えでは、紛争とは、規模の大小にかかわらず、思想や理念の違いによって民族や国同士が争いをすることであると思う。争いの手段は戦争という武力によるものだけではなく、経済制裁といった非武力的なものも紛争に含まれているのではないかと思った。」

上杉返答

思想や理念の違いが紛争の要因となっていることが、紛争の基本的性格だという理解ですね。

学生B

「初回の授業で色々な人のことを知ることができて、皆との距離が縮まった気がして嬉しかった!これからもディスカッションなどを通してFYSAのメンバーと楽しく学んでいきたい。
【私なりに考える、紛争とは?】思いついたことが多かったので、箇条書きにしました!
・戦争は国VS国、紛争は民族VS民族 のイメージが強く、紛争は宗教問題や、少数民族の迫害などが引き金となって起こっていることが多いと感じた
・戦争はテレビニュースや国連などで緊急性があるものとして大きく取り上げられることが多いのに対して、紛争は特定の国で、他国には認知されずに起こり、認知されにくいがゆえに支援が十分に届かず長期化しやすい
・そもそも考え方の違いで民族同士がぶつかり合っている場合、解決をすること自体が難しそう(戦争は利害を把握し、交渉によって譲り合いをすることが可能だが…)
・戦争は大きな国や力の強い国が関わっていることが多いが、紛争は小さな国や発展途上国で多く起こっている
・一度紛争が起こると、その国自体に紛争国としてネガティブなイメージがついてしまいやす(観光業や国の立ち位置に影響)
・紛争の方が、民間人や子供たちを不用意に巻き込んでしまっているイメージ。その影響で国が貧困化したりしてしまい、負のスパイラルから抜け出すのが難しくなっている。だから繰り返してしまう
・紛争は絶えず、いつでも世界のどこかで起こっている
・紛争は非営利団体が支援をしているイメージ」

上杉返答

自分の抱くイメージが他の人と共有されているか、チェックするといいですね。自分の意見をたくさん思いつけているのは凄いです。

学生C

「初めてのfirst year seminar A の授業、ありがとうございました!
授業中に外に行くのが新鮮で楽しかったです。話し合いをすると一人で考えるよりずっと気付きが多くて理解も深まるなあと改めて感じさせられました。先生がおっしゃっていたように、紛争は家庭内から国家同士までに及ぶ幅広い規模での衝突のことを指すと思います。戦争、内戦は紛争の中に含まれ、冷戦のように軍事力による直接的な衝突でないものも入るのではないかと思います。
言葉自体は知っていても、今まできちんと紛争の定義や戦争、内戦との違いを区別できていなかったことに気付きました。またそれらの言葉が実際に使われている場合を考えてみても、曖昧に使われていることがあり、定義の線引きが難しいと感じました。日本では規模が大きい紛争が身近に起こることがなく、ほとんどの人々が日常生活において深く考えたり多く口にする必要性がないからなのではないかと思いました。これからの授業を通して、ぼんやりとしか捉えていなかった紛争の輪郭を自分の中ではっきりさせることができるようになりたいです。」

学生D

「・紛争の定義を作って共通認識にしないと話している内容がずれてしまう、という先生のお話を聞き、定義付けの重要さを理解した。
・紛争の定義について話し合う時に「武力とは何を指すのか」といった疑問が出てきたことで、定義付けに使う言葉も定義しなければならない難しさも感じた。
・私の考えでの紛争は、お互いが要求を通すために譲らない状況を指すので定義が広く、その中に戦争(兵器を使った組織同士の紛争)、テロ(要求を通すための暴力、武力行使)のような小集合が重なりつつ存在するイメージだが、話し合いの際に多くの人が納得できる共通の定義を作るために、イメージではなく言葉で説明できるようにすることが必要だと感じた。
・クラスのメンバーのことを知った上で外の空気に触れながら話し合うことで、遠慮をすることが減り、みんなが自分の意見を言えたように思う。」

学生E

「授業に行く前はどんな雰囲気なのだろうと不安でしたが、最初から和やかな空気でクラス全体で楽しく話せて安心しました。庭園で皆と交流できたのもとても楽しかったです。
紛争と戦争の違いについて深く考えたことがなかったのでまとまった答えを出すのが難しかったですが、皆それぞれ異なる解釈があり、また共通点もあり、なるほどと思うことがたくさんあって興味深かったです。自分は、紛争は争い全般のことをいい、その中の一つが戦争なのだと思います。ニュースでは、民族同士に争いを報道する際に「紛争」を使うことが多いので、武力ではなくても、そこに何らかの衝突があれば「紛争」になるのではないかと考えました。先生のお話を聞いて、議論をする上では、そこで用いられる言葉について共通の定義を全員が持つことが大切なのだと気づきました。
この授業を通して、日頃のニュースを見るだけでは得ることの出来ないところまで深く紛争について学んでいきたいです。」

学生F

「教室ではなく、開けた屋外でディスカッション等を行ったことで、緊張しすぎることなく議論を深めることができたと感じます。自分が定義する「紛争」と他の人の「紛争」の定義の違いを知ることができたおかげで自分の視野が広がったと同時に、議論する際に一つの言葉を定義することがどれほど重要なのか、を十分に理解しました。
 私は「紛争」をありとあらゆる意味での争いだと定義します。紛争は広い意味での対立や争い、個人間から団体に及ぶものを指すのに対し、戦争は国家間の争いに限定されているのだと考えました。私が「戦争」という言葉を耳にした際に思い浮かべるのは第一次世界大戦やロシアウクライナ戦争などです。対照的に「紛争」という言葉を聞いた際に想像するのは「シリア内戦」や「ルワンダ紛争」などです。これらは「戦争」のように国家同士が対立し起こった争いではなく、政府と民衆、民族と民族などの対立が原因となって始まった争いであるため、私の中で「紛争」として定義されていたのだと考えます。」

学生G

「まだ授業がはじまって間もないので、わからないことも多く緊張していましたが、雰囲気の良いクラスで安心しました。またペアで話す機会を設けていただきありがとうございました。これからもデスカッションなどを通してクラスメイトと仲良くなりたいと思います。
 紛争と聞いたときに最初に思ったことは規模の小さい争いであると思いました。しかし、戦争との違いについて考えると規模の問題だけではないと考えました。戦争は国同士が軍隊を用いて戦うのに対して、紛争は国民やある特定の人種の人が自分たちのために戦うものだと思いました。今回のディスカッションを通して言葉の意味について考えることの大切さを実感しました。普段使っている言葉でも、定義の知らないものもあると思うのでこれから先はそういった理解も深めていきたいと思います。」

学生H

「自分にとって初めてのFirst Year Seminnarだったので少し緊張したが、実際にはクラスの皆がとても良い人たちだったのでとても安心した。大隈庭園で授業を行うとは全く思いもしなかったので少し驚きだったが、普段とは違う環境で議論をしてみるのも有意義だと感じた。
 私は「紛争」と「戦争」は宣戦布告の有無によって区別されると考えていたので、国家や個人など対立するものの規模によって定義されるだろうという考えは、私にとって新しい視点だった。更に、グループで『紛争』の定義を話し合った際には、わずか4人であってもそれぞれ全く異なった考えを持っていることを認識し、何事においても適切な話し合いを行う重要性をよく理解することができた。また、議論の途中で上杉先生が「議題をきちんと定義しなければならない」とおっしゃられていたことに深く共感した。「議論を行う双方が同じ前提の元に立っていなければ、その議論が適切に成立しているとは言えない」ということは言われてみれば当然のことではあるかもしれないが、実際的に実行されているとは言い難いだろうと感じた。
 そして何より今回の議題である「紛争」や「戦争」といったものも、対立する双方による適切な議論をもって解決していくべき事柄であろうと考えた。今まで私があまり深く考えることのなかった類いの議題だったので、これから自分の考えを深めていきたい。」

上杉返答

定義の重要性を指摘してくれた通り、日常会話では、議論の前提としての定義の共有はしませんが、これから書くことになるレポートなどでは、前提を明らかにしておくことが重要になります。ご指摘のように、定義に使った用語もさらに定義が必要になるという現実もありますね。

学生I

「まずはSeminar A第一回目、ほとんどの方と初対面だったのに和気あいあいとした雰囲気の中で授業を進められてとても楽しかったです。やはり一言に話し合いやディスカッションと言っても、教室で座って行うフォーマルなものもあれば今日のように芝生に座ってピクニックのような形もあるんだなと思ったし、いい意味で緊張感が少ない状態のままクラスメイトのみんなと話し合いができたのは貴重な経験でした。
 紛争の定義でについての話し合いでは、紛争と戦争の違いから定義を導き出そうとしました。戦争は紛争の一部なのか、はたまたその逆なのか、どちらの方が規模が大きいのか、武力行使の有無は関係するのか、争っているのが国同士なのか内戦なのか。また、紛争は英語でconflict, 戦争はwarであることを考えるとconflictの方が定義が広い感じがする、などという風にSILS生の得意分野である英語を用いて考えたりもしました。自分一人ではなかなか思いつかないような疑問や仮説を共有し合えたことで自分の視野も大きく広がった気がします。個人的には紛争はある国の内部で起こっている民族または宗教対立のこと、戦争は国同士で行われている争いのこと、というイメージが強いです。基本的な定義付けの確認が大切だと思った一方で、はっきりと定義をつけてしまうことによって、例えば戦争より紛争の方が大規模だからそっちの方の解決を急ぐべき、などといったナンセンスな優劣がついてしまう恐れもあるのかな、とも思いました。」

上杉返答

物事の良い側面と悪い側面の両方を考察した点は素晴らしいと思います。

学生J

今日、このゼミを通して僕は軍隊という戦争をする組織にいながら戦争や紛争の定義についてあまり深く考えてこなかったことに気が付きました。しかし、今日みんなとの交流を経て戦争は政治的目的を達成する手段の一つに過ぎないのに対して、紛争は個や集団が自分の思想や理念を実現しようとする上で生じる衝突ではないのかと思いました。同時にこの定義では当てはまらない事例もあると思うのでこの授業でいろいろ学び、紛争についての理解をより深めていきたいと思います。今日は色んな人と議論を交わしたり意見を聞けたりして楽しかったです。」

上杉返答

紛争を思想や理念をめぐる対立と考えた着想の背景には何があるのでしょうか?

学生J:ニュースや周りでよく耳にする紛争(イスラエルパレスチナ紛争、トルコクルド紛争など)の大半が思想や理念をもとに争っているとおもったから紛争は思想や理念をめぐる対立なのではないかと思いました。

上杉:さらに、それらの紛争が思想や理念の対立だと考えた根拠は?

学生J:宗教上の対立や民族同士の対立をマクロ的な観点から見ると思想や理念の対立といえるのではないかと思ったからです。

上杉:では、それらをミクロの視点で見直すと何か違って見えますか?

学生K

「初授業で不安もあったがUG先生を筆頭に明るく気さくな人しかいないクラスで、これから楽しく授業に臨めそうだと感じた。今日のメイントピックである紛争について、自分は初めは民族間の対立か国家間の対立かといった単純な考えしかもっていなかったが、グループで話し合う中で多様な考えに触れ、より自身の考えを深めることができ、多角的な視点で物事を捉えることで多くの発見があるということを体感することができた。」

上杉返答

多角的な視点で物事を捉え多くの発見をしたという実体験は貴重です。

学生L

「初めて顔を合わせるメンバーでしたが、皆気さくでしっかりと自分の意見を持っていたため議論を進めやすかったです。今まで紛争という言葉はテレビや新聞で度々耳にしてきたものの遠い国、地域の話だと思い深く考えてきませんでした。いろいろと思案を巡らせた結果、私が気づいたことは紛争とは果てのない争いだということです。戦争は国という規模で戦うという性質上、統率が不可欠であり、作戦を練って行動し、どちらかに限界が来れば終結します。しかし紛争は戦う主体が極めて複雑であり、先をあまり見据えることなく傷つけ、人が死んでいきます。初回の授業で、争いとは真逆の穏やかな青空の下で紛争を考えたのは何というか皮肉な気がしますが、あのように誰もが楽しく過ごせている時間は平和と呼ぶにふさわしいものであり、人類の目標地点だとも感じました。紛争と平和という対になる物事を考えられたのは非常に良かったです。」

上杉返答

皮肉ですね。平和でないと思案する余裕が生まれないのかもしれません。

学生M

「授業に行く前はこの授業の雰囲気やメンバーが誰なのか分からず緊張したが、皆フレンドリーで先生も優しそうな方で安心しました。教室という場所に囚われず、開放的な大隈庭園で授業したのは斬新で面白いなと感じました。グループワークの際、それぞれが自分が考える戦争と紛争の違いについて積極的に考えを述べていて、その積極性や考えの内容に強く刺激を受けました。
 私は「戦争」は国同士が自国の利益のみを求めて争い、第三者である他国や国家組織が仲介を行い両国の妥協点を探り、折衷案を提示し最終的に和解へ進むものだと考えます。以降は両国は貿易などを再開し、完璧でなくとも関係を修復するものだと思います。「紛争」は国内で民族間や宗教間で起こるもので、発生の原因は主に考え方や価値観の違いにあると考えます。そのため、具体的な解決策が見出せず、また、国民一人一人に自分たちの宗派や文化が正しく相手は間違っているという考えがあるため、紛争は解決しにくく泥沼化しやすいと考えます。今までこのようなテーマについて考えたことがないためかなり考えが偏っている気がしますが、今後の授業を経てどのように考えが変化していくのか楽しみです。」

上杉返答

毎週レビューをつけることで自分の思考の変化の足跡を辿ることができますよ!

学生N

「最初の授業で緊張しましたが、みなさん気さくな方で話しやすく、先生も面白くて、これから楽しい皆さんと勉強できることがとても嬉しいです。
 紛争の定義について皆で話し合った時、誰1人としてはっきりわからず、定義を考えることの大切さがわかりました。私の考える紛争、戦争、内戦の違いは以下です。
・戦争…国と国の戦い。この言い方だと紛争と同じになっていしまいそうだが、戦争の場合、ある国の中にいくつか民族があったとしても戦争時には団結して戦う
・内戦…ある国の中で起こる戦いで、理由や目的は様々
・紛争…民族的、宗教的なアイデンティティーを守るための戦い
また、話し合いの際はぼんやりと「紛争は戦争と言う大きな枠組みの中にある戦争の一種」だと考えていましたが、考えを重ねてゆくうちに紛争というのはもっと決まった形にとらわれず、何かのために人々が戦うことを紛争と呼んでいいのではないかとも考えます。
 初め、先生が今この仕事をやっている理由をおっしゃった際に感じたことがあります。私たちが高校2年生の時にウクライナ侵略が始まり、皮肉にも平和について考えることが多くなりました。しかしどれだけ考えてもどのようにしたら世の中の戦争や紛争を解決する根本的な方法が自分では思いつかず、それがきっかけで大学では平和に関する勉強をしようと考えるようになりました。しかし世界中で問題になっているのにただ私が勉強したところで世界が変えられるのかと無力感に襲われることが多かったのですが、先生のように様々なやり方があるし、無駄なことは何一つないのだとわかりました。授業を通して最終的に自分なりの紛争に対する考えを確立させ、将来に活かしたいです。」

上杉返答

私の高校生の時と重なるものがありますね!

学生O

「初めての授業でクラスメイトと仲良くなれるか不安だったけれど先生があだ名もあわせて自己紹介したり、外に出るときに二人組にして仲を深めて他己紹介をしたり、大隈庭園に散歩に出かけたり、すぐに打ち解けることができる環境を作ってくださって不安が一気に消え、とても楽しかったです!
 戦争と紛争の違いについてのディスカッションを通して今まであまり考えたことがなかったけれどよく考えたら結構違いがあるなと感じました。
・戦争は国家間で行われるのに対して紛争は民族などもっと小規模で行われている
・戦争は国家が主導して動いていて国民に戦闘体制に入るように促している、つまりあまり国民が率先して感情的に戦いを求める要素が少ないのに対して紛争は人々が感情的に争っているイメージ
・戦争は国の利害(資源など)のために行われるのに対して紛争は利害というよりも民族間などの考え方の違いから生まれるもの
・戦争は終わるとそこまでわだかまりが残らないイメージ(国民同士というより国家同士の戦いのため)なのに対し紛争は終わっても考え方が違う、合わないからずるずるとひきづっているイメージ
・戦争は大きい国が行っていることが多いのに対し紛争は発展途上国で起こっているものが多く、そこに第三者の先進国(アメリカなど)が介入して無理やり終わらせている
・戦争はその場その場で立場が変わることがあるのに対し、紛争におけては宗教、民族、ナショナリズムが関連しているから信念が強く、自分達の立場を貫くことが多い」

上杉返答

たくさんアイデアが出て素晴らしいです。

学生P

「本日の授業で人と関わることの大切さを改めて感じることが出来ました。初めて会う人と臆することなく話せたのは堅苦しいイメージのある教室ではなく、自然いっぱいの庭園で議論できたおかげだと思います。凄く楽しかったです。私の持っていた紛争のイメージは国内間での争いでした。例えば政府vs一般市民もしくは国内の軍vs政府といった構図です。対照的に戦争は他国同士の争いであると考えていました。しかし同じグループの人と議論を交わしていくうちに、兵器を使うのが戦争で使わないのが紛争であるといった意見や土地や物資を巡る争いが戦争で宗教や経済的対立が紛争であるという考え方があると知り、自分の中でのイメージが変わっていきました。今まで改めて深く考えることのなかったテーマでしたが、今のロシアとウクライナの戦争やアフガニスタン紛争など身近な国際問題に結びついているように感じました。はっきりとした戦争と紛争の違いを言葉で説明することはまだ難しいですが、それぞれの状況に応じた平和的解決の糸口を見出すことは可能だと思います。第二講以降で授業を受け、友達と相談し合いながらヒントを得て学びを深めていきたいです。」

上杉返答

思考の過程が再現されていて有益なレビューです。自分の考えが変わった理由などを書き留めておくと良いかもしれません。

学生Q

「初めての授業はやってい行けるかとても不安で、緊張していたけれど、先生がクラス全員であだ名をつける時間を設けてくれたり、クラスメイトと一緒にお散歩して話すという機会を与えてくれたおかげでその不安はすぐ消え去り、これからの授業がとても楽しみになりました!!これからもクラスメイトと交流を深めて雰囲気を良くしていきたいなと思いました!
 戦争と紛争の違いについて
 私たちのグループでは戦争を明確に始まりと終わりがあるものと定義づけました。第2次世界大戦や南北戦争などは戦争の代表例ですが、これらの戦争はどちらかの陣営が宣戦布告し、戦いを仕掛けることにより始まります。そしてどちらかの陣営の首都が陥落したり、トップが殺されることにより、一方が降伏をして、戦争は終わります。
 それに対して、紛争は明確に陣営が分かれているものではないと私たちは考えました。紛争は、宣戦布告などはなしに突然始まるものだと思うので、多くの人は実際どことどこが対立しているのか把握しにくいのではと考えました。また私は、紛争の多くは宗教や民族の違いで起きるものだと考えているため、複数の宗教を信仰している者や複数の民族の血を引くもの達は誰と戦うべきなのか分からないまま、兵器を持ってしまうため混戦状態に陥りやすいのではないかと思いました。
 また私たちのグループは、戦争を行う目的は土地の侵略や一方の民族や国などを滅ぼす場合多いけれど紛争はどちらが優位なのかという事を明らかにするために行われるのではないかと考えました。
 様々な意見がグループ内で出たため、戦争や紛争の定義についてより深く考えることができました。そしてこれからの授業でもっとたくさんの意見を聞いて自分なりに戦争と紛争の定義をまとめていきたいと思いました。」

上杉返答

差異の付け方が面白い。明確な始まりと終わり。こうやって二項対立的に考えていくのが一つの思考法です。その弊害もありますが、利点もあります。

本日の教訓

新学期をスタートさせるうえで、場づくりは重要です。学生たちに積極的に議論してもらうためには、人間関係をまずは構築してもらうことが先決。高校時代の正解を学ぶ受け身的な学習という習慣や教室での学生に求められる振る舞いについての先入観を壊すことも大切。私のフィードバックは短いものですが、学生の問いかけは、充実しています。これから、対話を重ねていきながら、視野を広げ、思考を深めていきます。乞うご期待!


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