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徒然ゆうじ 「お見舞いのこと」

某月某日

友人が入院しているのを思い出し、見舞いに行く。

病院は郊外のような中心街にあり、
人通りが多く活気はない道の先に見える。
ワビとサビで裏打ちされた建物は
昭和の面影を全面に出して地方だ。

理由を探すのに苦労するほど混んでいる院内。
患者とナースをかいくぐって部屋へ。

ベッドの並びを確認して堂々の入室。
いきなり友人と目が合って狼狽。
中距離から言葉を散らして歩み寄る。

調子はどうかと問うと、
病人ではトップクラスだという。

大部屋はどうかと問うと、
個室の空きがないか聞いたが
何も言ってこないという。

「聞いたのは いつ?」
「1週間前」

ナースを呼んで、つめる。


取り留めと熱意のない話が尽きたころにナースが点滴を持って登場。

「薬のあと、生理食塩水の方は一気に入れます」

ポトポトと頼りない点滴を確認。
再び会話をもてあそぶ。

薬が終わったので見ると
食塩水が滝のように落ちている。

ナースコール。

「点と点がつながっている」
「いいのです」

いぶかしげな2人に「落ち切る前に止めますから呼んでください」と言い残し去っていく。

しばらくすると底が見えてきたので、すかさずナースコール。




…泣きそうになりながら2人がかりでチューブを押さえているところにナース。
満を持して止まる。

しばらく健闘を称え合った後、
なんだか小さく見える友人を残して帰途についた。

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