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「初めての人生の歩き方。――毎晩彼女と君にラブレターを」第383話:初めての治験。

「薬を10錠飲むよりも、心から笑ったほうがずっと効果があるはず」アンネ・フランク


 治験、というものを知ったのは確か学生の時だった。
 よく裏アルバイトの代表格で名前が挙がる治験は、その名の通り治療の実験の手伝いである。
 僕はあるサイトに登録しており、いつかやってみたいなぁと思っていたのだけど、なかなか日程が合わずにずっと見送っていたのだが、今回ようやく行けそうな治験が舞い込んできたのでちょっくら行ってきたのである。

 あんまり詳しくは書けないけど、今回の検査は目のなにかを図るやつで、とりあえず視力検査となにかよく分からない目の検査をしてから尿検査に血液検査、そしてそのあとに一時間DSでテトリスをやってからふたたび視力検査……。

 これでとりあえずの謝礼が4000円。
(ちなみに治験は報酬ではなくて謝礼になるんだよ!ボランティアってことだよ!)

 そして検査の結果合格していたら何かしらのサプリみたいなのもが届くのでそれを一か月ぐらい飲んで毎日日誌を書く。その後再び血液やら尿やらを視力やらを検査して謝礼が16000円。

 本当は入院系の治験に参加したかったんだけど、なかなか3泊ぐらいのちょうどいいのがないので、まあとりあえず一回ぐらいしてみようといつものように好奇心だけで応募したのだけど、いや、もちろんこの薬の認可を待っている誰かのために、しいてはお国のためにという理由もあるのだけど、なんだかんだいってやっぱり好奇心と金である。

 好奇心と金、なんという心地のいい響き……。

 さて、そんな会場だが、いわゆるただのビルの一室を検査会場にしているらしく、全員入れたとしても10人ぐらいだろうか。
 部屋の中の小さな机に座っているといろいろな人が入ってくる。
 いい方は申し訳ないけど、いかにもお金のなさそうな人たちで、どことなく影がある。まあ、僕もきっとそう見えているんだろうけど。

 言ってしまえば、血液を採ってゲームをしてお金をもらえるという感覚だった。(なんか超ごめんって!)

 果たしてこんなんでいいのだろうか。
 しかし、今家計は火の車。家ではお腹を空かせた妻と子供が待っているのだ。
 やってくる人はいかにも西成から来ていますと言った人から(謝れ!)、サラリーマンに主婦っぽい人、多種多様だったけれど、一つ言えることはみんながみんな目を合わせるのが苦手そうな人ばかりだったと今更だけど思う。

 更に僕の座らされた席は一番奥で、その隣にも人が座ったものだから、検尿とか検査で立ち度に隣の男性も経たなくてはいけない構造で、結局僕は平謝りしながらも6回ぐらいそれを繰り返した。

 もう後半なんて、お互いに阿吽の呼吸。彼は最後、ゲームをしながらすっと立ち上がると、そのままピコピコとテトリスを続けていた。さすが世のため人のために役立とうとする人たちだ。僕だったらきっととっくに切れているだろう……。

 そんな中、看護師さんの中に若くて美人の人がいた。

 まさに鶴……。
(今日は口が悪い!)

 その人はゲームの案内をしていたのだけど、このゲームをしたことがあるのか、などをただ聞くだけだった。それなのにナース服だから妙にエロい。一体、この会場はどうなっているの? と突っ込みたくなってくる。

 そう思ってみると、看護師さんが六人ぐらいいるのだけど、みんな正直暇そうだった。
 受付だけの人、説明だけの人、ゲームの案内だけの人、検温だけの人、なにをしているのか分からない人……。

 そのとき、時計の音が鳴った。
 若くてきれいな看護師さんが近づいてきて、表情筋の開発まで予算が出なかったロボットのような無表情な顔で「お疲れさまでした」と言ってくる。

 その無表情さがまたエロいのなんの……。

 結局、なにが一番つらかったというと、早朝に白ご飯を軽く食べただけでお昼過ぎまで絶食させられたことと、ゲームを久しぶりに一時間もしたことと、そのナースさんがムダにエロくてなんか場の空気が妙に悶々としていたことぐらいだろうか。

 こうなったら今度はガチで入院するやつにがぜん興味が湧いてきた。
 待っていろよ病院。
 血ぐらい、いくらでも持っていきな!

愛する君のために、

ぼくは大嫌いな採血だってなんのそのさ。

そのお金でたくさん冷凍食品も変えたし、

ずーっと食べたいと言っていたエビフライも買えたんだ。

ありがとう。

エビフライ、僕が食べたかったんだ。

心から君を愛してるよ。

おやすみなさい。

初めての人生、僕もまだまだ知らないことだらけだ。

人生が経験するためにあるとしたら、

僕たちはいつだって動かないといけない。

それは遠くに行くとか、

珍しいことをたるという意味ではなく、

自分の中で遠くに行くという心理的な意味だと思う。

答えはいつも自分にあるのだから。

大丈夫。

君はこれからたくさんのことを経験する。

今日もありがとう。

今年も、残り333日。

またね。

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