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ヴェネチア・ビエンナーレ

水の都イタリア・ヴェネチアにて、2年に一度だけ開催される、世界最大規模の建築の祭典「ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展2018 」に11月末に訪れました。世界各国のパビリオンでは、国を代表するコミッショナー・キュレーターによる、テーマに応えた独自の展示が展開されており、2日間では全てをまわりきれないほど見応えがありました。ここでは一部をご紹介します。

総合テーマは「freespace」。freespaceとは何を意味するのか、どう捉え表現するのか。多種多様な応答があり、カルチャーの違いや各国を取り巻く問題に思いを馳せることができることがこの展示会の大きな魅力です。

ベルギー館
EU 本部や NATO 本部が置かれているベルギーは、英国離脱による分裂の危機など、欧州連合(EU)が対峙している課題に対して、もう一度1つに取り戻すべくEUROTOPIEという名で「freespace」を展示。建物には裸足で中に入ると、揺れ動くEUの状況を表現しているかのように、地響きのような音と振動が伝わってくる。円形に広がっている空間の真ん中には円柱のミラーがあり、そこにはメッセージが自由に描けるようになっている。

イスラエル館
宗教や宗派によって価値観の異なる人びとの思いや暮らしがせめぎ合う5つの聖地の状況を表現。どの宗教がその時代を支配をしていたかにより、聖地の建物のデザインが年代ごとに変わっていく様子が見て取れる。一つの空間をシェアしたり、複雑に編み込まれた歴史や空間の中で、それぞれの居場所を獲得したりながら形成されるコミュニティとしての「freespace」を展示。

オーストリア館
ヨーロッパの大陸の中央に位置し、国を取り巻く東西南北の諸国から様々な影響を受け、各国の橋渡し役として、あるいは人々が出会う場所としての役割をもつオーストリアは「東西の違いと融合」をfree spaceで表現。東側はオリエンタルな要素として、柔らかな布や曲線を用いて風を感じられる設計。西側は、ウエスタンな要素として、直線を多く用い天井の吹き抜けから光を感じられる設計となっている。

日本(日本人建築家の展示)
建物で遊べる幼稚園「ふじようちえん」が子どもたちに自由に使われている様子を「freespace」の体現と捉え、巨大な模型に空撮動画をプロジェクションマッピングして表現。一つ屋根の下、一つの村のような、壁のない空間を作り出している。

スカンジナビア半島館(フィンランド、ノルウェー、スウェーデン)    

私の一番のお気に入りはこれ。"Another Generosity もうひとつの寛大さ" 。自然と建築環境が共に支え合い、いかに共生共存できるかを探る。人と自然が生きるのに欠かせない、水と空気をバルーンで可視化。またこのバルーンは、人間自体の最小の生命体である細胞を表現している。

キュレーターの方と直接お話をすることができ、彼女から現代アートの見方を教えてもらえたのは大きな収穫でした。アートを見ることに慣れていない私は、つい先に説明を読んでしまいます。しかし、彼女が言うには、「まず何も読まずに、見て感じることが大事。自分がそれをどう感じるか。それを見て自分は何をイメージするのかを考える。それから説明を読む。アートの解釈に正解も間違いもない。自分流の考え方を先にもつことで、こう言う見方もあるのか、と幅が広がる。そしてキュレーターやその場にいる人に話しかけて対話をすると深みが増して、より面白くなるの。」と教えてもらっいました。それぞれの展示を通じてカルチャーの違いや対峙している課題を、展示そのものから、そしてそこにいる人々との対話を通じて深く感じることができた2日間でした。


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