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「働けるだけでありがたい」という洗脳

日本の多くの働く母は「働かせてもらえるだけでありがたい」と思っている。

私がそれを言うとき、戦場を潜り抜けた兵士が「生きてるだけでありがたい」っていってるみたいだと思う。兵士に対しては、そんなばかな、戦争がない世の中のほうがいいに決まってるよと反論できる。なのにどうしてその言葉が出てくるのか。

働く環境が整っていないのに、働かないのは悪だという意識だけは最近増えてきて、専業主婦になる人は、働かなくなることに申し訳なさを感じている。私も今やめたらそう思うだろう。それは負傷兵が「戦地からおめおめと生きて帰ってきてしまいました」と言っているのと同じに聞こえてしまう。

いまは戦時中じゃないし、言論の自由も職業選択の自由もある。自分の意志で働いている。

しかし、この異常性に気づいてもなお、私はこの洗脳から完璧には抜けれないでいる。一体、何と戦っているのか。自分でもわからない、論理が正しいかどうかも怪しいが洗脳に抗ってみようと思う。

保育園不足、マタハラ、夫の転勤、子供の病気、ワンオペ疲労etc。。多くの同僚の女性たちがさまざまなトラップにかかり、会社から脱落したのを見てきて、いつかは自分もそうなるかもしれないという恐怖から逃れるためのこれは自衛の言葉なのだ。「働かせてもらえるだけでありがたい」と言わないとやっていけないのだ。なので自分自身で洗脳をかけているのかもしれない。

戦争してるわけじゃないのに洗脳なんてそんな大袈裟なと笑われるかもしれない。本当は働くことも辞めることも自由なはずだ。赤紙がきているわけじゃない。けど辞めるのが怖いと思っている。

20代女子は異常に気付いている

この異常性に若い世代は気付いている。


↑より引用ーー
「仕事を教えてくれている先輩のほうが、教えてもらっている私たちよりも給料が低いんだ……」みたいな。「自分たちもそうなるの?」みたいな感じで、めっちゃ不安になりました。
産休前の私たちはスキルを上げて成果を上げて、信頼を得て給料を上げて……みたいに考えているのに、産休後は「働かせてもらっているだけでありがたい」と思わないといけないの? みたいな感じでまた不安になる。

私はこれをみて、あぁ、これが異常だと公に言っていい世の中になったんだなぁと嬉しくなった。

「働きがいのある会社ランキング」、女性ランキング1位の会社でこれなのだ。真に男女平等な企業は自分で起業しない限り日本にはないのではないかと思う。

国は女性活躍を推進してる?

厚生労働省のサイトにこう書いてある。

時短勤務を当然の権利と思わず、周囲に迷惑を掛けている状態であることを十分認識し、いつまで今の状態か、育児のバックアップ体制をどのように整えているかなどを、周囲に伝え、理解を得られるよう努力をしていくことが大切です

この制度を作った人はよほどこれから制度が使える人に恨みがあったに違いない。女性活躍といいながらなんでこんなことをするのかさっぱりわからない。

会社の先輩ワーママは約10年前に、これを読んでこんな意識だから差別がなくならないんだと怒っていた。そして、他の上司も同僚もは先輩をわがままだと言っていた。私は自分が産むころにはみんな目が覚めるだろうと思っていたが、あぁ10年差し替えられてないんだと今日確認した。

コンビニのパートの人は昼勤でも夜勤でも短時間でも、ただそういう契約で働いているだけと思われているはずだ。時短勤務なんて言葉を作らず、パートのおばちゃんって名称でよかったんじゃないか。

短時間で新人よりも安い契約で働く制度。ただの制度だ。時短勤務の今のほうが私はよっぽど忙しい。

同一労働同一賃金法があるなら、私は新人より働いているので給料は高いはずだ。私のマクロをつかってる新人も同僚も私より稼いでるなら利用ライセンスフィーくれてもいいのよと思う。(私も使えない新人だったので冗談です)短時間しかいないのに固定費は一人前にかかっているので、机は在宅勤務するので撤去してくれてもいいが、装置利用時間が半分になったりしたらちょっと困る。コンビニパートもきっと同じ業務だとおもうが昼と夜で時給が違うので、この減額はまぁ100歩譲って受け入れるとして、ただの安いパートなのになんでこんなにへりくだって働かせていただかないといけないのだ。理解できない。

時短は急に休むから迷惑だって?それは短い時間とは別問題ですが、

急に休まない夫は悪くないんですか?急に休まなければならなくなる原因を取り除こうと考えたことはあるんですか?急に休んでも大丈夫な体制にしようと考えたことはあるんですか?

この時短勤務の洗脳は先輩のおかげて受けていない、両立の洗脳もこの前トレードオフだと解いた、急に休むのもチームメンバーは非常に理解がある、私が働けなければ子持ち女性エンジニアは誰も働けないという危機感を持ってくれているようだ。

一体私に何の洗脳が残っているのだろう。心当たりがあるとすれば、ワーカーホリックすぎて、戦場を去るのが悔しいワーホリック兵士みたいになってるのかもしれない。

理不尽への不満防止洗脳

「働けるだけでありがたい」は人によっては何重にもかかっている洗脳なのではないだろうか。それは理不尽への不満防止措置だ。

「生きてるだけでありがたい」という兵士が「戦争反対!」とデモをするとは思えない。

レジリエンス(理不尽への適応力)という言葉を最近覚えたが、レジリエンスが高く、両立もワンオペも当たり前にこなし、むしろ逆境を楽しんでいるような鉄人女性が出世する。きっと彼女にとってその状態は幸せなのではないだろうか。なぜならば、レジリエンスが高いことは人生を楽しむには素晴らしい能力なのだ。

世の中は他にも理不尽だらけなので、レジリエンスが高いほうがいいと思う。

しかし、この育児負荷を母親だけにかけた状態を受け入れて、レジリエンスを高めて命を削ってバリバリ働くという選択は私にはできない。無力な子供を置いて倒れるわけにはいかない。なのでこの方針では働く母は増えないのだろう。

いい悪いで考えるとよくわからなくなってきた。

アカデミアの理不尽から考える

別のものなら冷静に見れるので、ここでアカデミアの理不尽を見てみよう。日本のポスドクの待遇は酷い、数年の契約しかない。


越水先生:したいことがあるなら是非進んでほしいですが、保証がありません。でも、私はしたいことがしたくて進んできて後悔はしていません。私は、研究ができなくなったとしてもコンビニでバイトしてれば生きてはいられるし、と思ってます。
安定しないことが理由で今の仕事を辞めようとは全然思わない、そのくらい研究が楽しいです。是非楽しいと思えている人には続けてもらいたいです。

このようなアカデミアの博士への冷遇はひどいと思う。コンビニバイトでもいいじゃないかとは家族のある私は全く思えないのだが、それでも少ないポストに沢山の応募がある。それに研究にのめり込んでる感じの女子は私はけっこう好きだ。Love!なので良いか悪いかの議論はここでもいったん忘れる必要がある。

しかしながら、将来の保証がなくても研究が楽しいと思っているレジリエンスの高い先生がアカデミアの待遇改善運動をするとは思えない。立場的に言わされているのかもしれないが、もしこれが本心なのなら、理不尽に適応して職があるこの状態がハッピーなのだ。待遇改善運動などに時間をとられるくらいなら研究していると思う。

とすると、当事者であるワーママだけにこの会社のジェンダー理不尽問題を押し付けている状態であれば絶対に解けない構造になっているのではないか。

そして私も当事者であり、私の思う良い悪いは当てにならない。

当事者ではない第3者が入らないといけない。一部の若い女性が気付いたことは希望だ。でも未だ多くの人は無関心だ。

母の愛は洗脳を解くカギ

エンジニアが愛だなんて、もーー似合わないことこの上ないがこれしか思いつかなかった。

戦時中も母の愛だけは洗脳されてなかった。「生き残っただけでありがたいと思え」なんて母親だけは思ってなかった「最愛の息子に出兵しないでほしい、戦争がなくなってほしい」と出兵する子供に行かないでと泣いて憲兵に母親は殴られたなんてエピソードが沢山あった。

私は母親なので、もし娘が自分と同じ状況になったらどうだろうかと考えることでこの洗脳が解けるのではないだろうか。

娘がいない人は、息子の嫁でもいいし、未来の孫娘でも、姪でも、育休をとりたい息子でも、近所のかわいいあのこでもいい。

そう考えると「育休後働けるだけでありがたい」を「育休後も働けるのは当たり前だ」に意識を変えないといけないと思う。そうしなければ解決策が出てこないのだ。思考を停止して自分を守ってる場合じゃないのだ。

”娘にさせたくないことを自分がしない。” 

こう思って自分の働き方を見直す時期なのだ。そうしないと私たち今のワーママが洗脳にかかっていない若い世代の足かせになってしまうのではないか。

「わたしはいいのよ」とパンを娘に分け与える母親は美しいかもしれないが娘は私もたべれなくなるのかとずっと不安なままだろう。みんながおなか一杯になる未来を描かないと貧しいままだ。

「育休後働けるだけでありがたい」はおかしい。けれどずっと言えなかった。サイボウズの20代女子言ってくれてありがとう。

子供が生まれても当たり前に働く、父親なら普通にやってることだ。たったこの一言を言うだけのために私はこんなに長々4000字近く言い訳をしなければいけないのか。

理論展開が下手すぎるのを差し引いてもやはりおかしい。わたしのジェンダー意識もおかしい。