CO2削減!冷房28℃設定がこの国を確実に滅ぼす


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1 官公庁の常識に一石を投じた姫路市

平成中頃からCO2削減のために、冷房の設定温度を28℃にする取り組みが始まり、官公庁、公共施設、病院など人が集まるところは軒並み冷房は28℃設定となり、令和元年の今完全にその設定温度は社会に定着したように思う。

しかし、兵庫県姫路市はこの定着した冷房の設定温度に一石を投じる実証実験を行った。

兵庫県姫路市は今夏の市庁舎内の室温を、環境省が「クールビズ」として呼び掛ける28度よりも低い25度に設定した実証実験について効果を職員に尋ね、業務効率が向上したと感じている職員が85%に上ったと発表した
また、業務効率が「とても向上した」と回答したのは42%で、「少し向上した」が43%だった。勤務後の疲労感について「かなり軽減された」と「少し軽減された」は合計83%。就業意欲の高まりを実感した人も83%いた
残業時間は昨年に比べて1人当たりの月平均で2.9時間減少し、全体で約4千万円の人件費削減につながった。一方、電気使用量が増加したことに伴う電気・ガスの料金は計約7万円増えた。

環境省にとっても各官公庁にとっても衝撃的な実証実験結果を公表したのである。

また、25℃は夏日の温度である。28℃は物事を集中して考えるとき、思考スピードと正確性が落ちる体感は私が公務員時代感じていたし、働くだれもが感じていた。

ちなみに11年前の調査結果ではあるが、室温が25℃から1℃上昇するごとに作業効率が2%ずつ低下し、28℃は1万3000円の損失が出るという調査結果が出ていた。

日本建築学会の調査では、2008年に神奈川県の電話交換手100人を対象に1年間かけた調査で、室温が25度から1度上がるごとに作業効率が2%ずつ低下し、冷房温度を28度とした場合、冷房の設定が25度の場合と比べ、軽装のみでは、能率低下で期間中、オフィス1平方メートルあたり約1万3000円の損失が出ると発表した。

民間の調査では冷房28℃設定は能率を下げ、非効率であることが実験で証明されているが、この結果を官公庁で実証実験した姫路市は非常に画期的で、一石を投じたものと思われる。

2 自分たちの労働環境改善に消極的な公務員たち

「環境省」がCO2削減のため、各官公庁にCO2削減目標を掲げさせ、削減目標に向けて削減させる取り組みを促している。

各官公庁としても環境省が冷房28℃設定を推奨しているため、削減目標到達のためにも、冷房の設定温度を28℃設定にする。

したがって、各都道府県、各市町村が国の環境省の指針に逆らって、冷房の設定温度を28℃未満にするなんて、姫路市がやったことは型破りでまず考えられない出来事なのである。

官公庁というものは、保守的で、国の指針通りにやってればいいよね?どこかの市や県がやってるからうちがやっても前例があるからいいよね?国や上司、議員、市民から責められにくいよね?という保守的で消極的な意識が強い。

ましてや自分たちの労働環境の改善は、公務員の性質上要求しにくい。

単純に考えてしまえば、大きな役所ほど冷房のための電気代も高額になるため、「冷房の設定温度を上げたい」という主張は議員や市民に同意を得られにくいものと考えられ、能率が下がり、残業時間及び人件費がおそらく増大していると感覚的には分かっていても、実証実験をするにも内部調整、組織内での合意が難しく、なかなか実現できなかったと思われる。環境省の業務の執行を市で行う担当部署から間違いなく猛烈な反対をされ、計画は頓挫するのは簡単に想像できる。

ここで実証実験を行うことの内部調整、組織内での合意が取れ、実証実験を実施し、分析、結果公表までやってのけた姫路市は元公務員からみても、極めて合理的考えができる市役所だと思う。

どう考えても、冷房28℃設定は効率を低下させ、残業時間が増大し、人件費も増大させていると体感している官公庁は多かったはずだが、令和元年まで盲信的に続けてしまった。

ニュースの記事ではCO2の削減の比較はされていないが、冷房25℃のCO2排出量と冷房28℃のCO2排出量の比較検証は必要である。感覚的には庁舎から排出されるCO2排出量は削減できているのではないか?と個人的に思う。

3 多角的総合的な視点が欠落し、変える勇気もない

姫路市の実証実験は、冷房28℃設定より25℃設定の方が電気代は7万円増えるが、残業時間削減により4000万円のコスト削減ができるというインパクトのある結果が出た。

どうしても目先の電気代削減、CO2削減に目が行ってしまい、本当にトータル的にコスト削減になるような合理的考えができない、合理的な考えが組織内でも受け入れられなかったように思う。

冷房25℃設定にすると、間違いなく電気代はアップすることは確かである。絶対コストアップすることが明確だから公務員というものはリスクと感じ、それに触れないようにする。

この第一関門である電気代アップを乗り越える勇気が姫路市以外になかったのである。

4 私が居た行政庁の話:残業中は冷房禁止

もう退職してしまいましたが、私の公務員時代のときの話をします。(結構最近の話)

私がいた行政庁は、環境省の指針を遵守し、もちろん冷房28℃設定だった。

そして、残業中の冷房は禁止だった。

冷房28℃設定とは厄介なもので、実際の室内温度やデスクやお客様窓口の温度は30℃前後である。

夏に窓口に来たお客様によく言われるクレームは、「ここ冷房ついてるの?」「汗が止まらない」「暑すぎる」と庁舎内の温度にまつわるご意見が大半だった。

実態の温度は30℃なのである。

30℃は気象庁は真夏日と読んでいます。

熱中症のリスクが一気に高まります。

市町村役場は、高齢者のお客様や乳幼児を連れた親子がよく来ますので、この方々の健康が心配でした。

また、人員削減され、一人あたりの業務量が増大しているため、長時間労働が慢性化している職場でした。

日中は、お客様対応、仕事で外出、他部署や業者と打ち合わせ、外部の人との会議など⇨「相手がいる仕事」「日中でなければ成立しない仕事」

残業中は、日中の仕事の議事録作成、定例業務の遂行、意思決定をする素案や根拠資料作成⇨「自分の仕事をする時間」

今後の政策を決定したり、決定のための資料作成は残業中にやらざるを得ない。

私がいた行政庁は予算が潤沢にあったが、CO2削減目標を厳しい数値で掲げていたため、環境の部署が残業中は冷房禁止にしていました。

暑い地域なので、残業中は窓をあけて、朦朧としながら、ミスの許されない仕事をしていました。

私がいた部署はまだ子どもが生まれたばかりの職員も数多くおり、早く帰りたい職員も多かったが、暑さで思考力が低下し、残業中の会議が停滞することもあった。

暑く朦朧としながら、作業効率が低いなか、多くの人命生活に関わる事業の意思決定をしていたのは、下っ端職員の私でも行政としてミスが起きないか不安で仕方がなかった。

冬は冬で寒く、残業中は暖房が禁止されていたため、コートや手袋をしながら残業していました。

足元が冷えますし、手先がかじかんで、手袋をしても上手くパソコンのキーボードを打てませんでした。

効率が悪い状態で、ダラダラ残業することになっていることに非常に疑問を持つ職員も多かったですが、CO2削減のためだと意見は切り捨てられていました。

もちろん、CO2削減は地球のために大事なことだと理解はしているが、効率性とコスト性の合理的な判断ができているとは思えなかった。

5 冷房28℃が設定がこの国を確実に滅ぼす

姫路市や他の民間の実証実験結果からも冷房28℃設定は効率性を低下させることが明確になった。

冷房28℃で効率性が低下しているということは、お分かりのとおり、生産性が落ちているということ。

長時間働く、日本のGDPは低いと一般的に言われています。

この国の行く末を決める政策を考え、執行していく官公庁が暑くて頭が朦朧しながら長時間働くのは、生産性が低い。

暑い中、生産性の高い政策を考えれるだろうか。

厚生労働省の職員のデスクの温度は30℃を超えている。

子供の頃、冷房がついていない学校に通っていた人は思い出してみてほしい。

30℃を超える真夏日のなか、勉強はスピーディーに手がついただろうか。

暑くて手がつかなかった人が多かったと思う。

30℃を超える真夏日の室温のなか、統計資料の数値を分析しながら、国民のための質の高い政策立案、執行を効率的にスピーディーにできるだろうか。

職場の冷房設定温度を25℃にして、有効的な政策立案、執行したことで、国民に効果が還元され、社会が豊かになるのであれば、3℃分の電気代は必要経費かもしれない。

不夜城となっている霞が関の労働時間が削減できれば、3℃分のCO2排出量よりも、削減できる量が大きいかもしれない。

少子高齢社会により沈没していくこの国がまた輝きを取り戻すために、職場の冷房の設定温度は本当に適切なのか、今一度見直す時期に来ているはずだ。

6 あとがき

初めてnoteを書かさせていただきました。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

地方自治体である姫路市の実証実験だったため、官公庁の冷房の設定温度にフォーカスして、自身の体験談も踏まえ、noteを書きました。

たった3℃だけど、されど3℃…

社会がよりよい方向に行きますように。

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