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【まとめ】だから僕たちは、組織を変えていける/斉藤徹

いろいろな組織開発に関する本を読んできたけれども、ここまで体系的かつ網羅的にエッセンスを盛り込んでてくれている書籍は初めてで、頭の中を整理しながら学べました。
悩んだときに立ち返れるバイブル的な存在になってくれそうです。

自分が組織開発をしていくにあたってのメモとしても、学びを投稿しておきたいと思います。

~記事中の絵文字の意味~
・🔰:用語紹介
・🎓:研究や会議の結果
・💡:個人的な気づき
・⭐:個人的重要ポイント

1.時代の変化と求められる組織像

・人や環境にやさしい企業、製品サービスを通じてファンとの深い信頼関係を構築する「共感する組織」にとっては追い風の時代

・従来の「組織に従属し、ライフとワークのバランスをとる生き方」ではなく「選択肢を広げ、学び続ける、ライフもワークも楽しむ生き方」を目指すようになった

・人生100年時代では、何度も新しい環境に移行するための能力やスキルが求められるようになる
🔰リカレント教育:生涯を通じた学び
💡成長の機会を組織に設けることは、人生100年時代を生きる従業員にとって貴重

組織は、お金視点から幸せ視点へ
・人々が企業に求めているのは、「人々に心から愛され、環境や社会に融合し、持続可能な繁栄に貢献できる存在になること」
🔰CSV (Creating Shared Value):社会との共通価値の創造。社会的価値を創出することで経済的価値を享受する考え方。

~知識社会にふさわしい組織像:知識社会の組織モデル~
・デジタルシフト:顧客の幸せを探求し、常に新しい価値を生み出す「学習する組織」
・ソーシャルシフト:社会の幸せを探求し、持続可能な繁栄をわかちあう「共感する組織」
・ライフシフト:社員の幸せを探求し、多様な人が自走して協働する「自走する組織」

本書 P.39

2.知識社会の組織モデル

🎓「マネジメントを再定義する会議」(2008年5月)
・とんでもなく時代遅れなマネジメントモデル=科学的管理法
・古い経営モデル:人の心を軽視した「数字重視の経営手法」
→ より重要なのは「人間的で、クリエイティブな経営モデル」

本書p.43
ゲイリーハメル『経営は何をすべきか』/ハーバード・ビジネス・レビュー「マネジメント2.0」

とんでもなく時代遅れなマネジントモデルあるあるは、

・志を改める:志や価値観が共有されていない
・能力を解き放つ:短期の成果が評価基準
・再生を促す:顧客よりも社内マターが優先
・権限を分散させる:意思決定の柔軟さやスピード感の欠如
・調和を追求する:全社利益よりも部門利益が優先
・発想を変える:新しい発想やイノベーションを考える余裕がない

(1) 環境から学び続ける「学習する組織」

・短期的な成果をあげることより、絶えず変化する「環境からの学習」を優先する組織
↔ 「硬直化した組織」
・部門間の関わりが希薄となり、縦割り化していった組織

●構造の改革:顧客視点の組織設計・スピード重視のシンプルな構造
●交流の改革:全社で知識を共有するプラットフォームとコミュニティ
●意識の変革:結果<学習優先の価値観・本音で話せる対話づくりと問題解決のためのコミュニケーションの技術

🔰OODAループ(VUCA時代への適応)

本書p.54 チェット・リチャーズ『OODA LOOP』

🔰サーバント・リーダーシップ
・「学習する」という能動的な行動を促すためには、統制して導く管理ではなく、統制を手放し、奉仕しながら導くことが大切。メンバーを支援し、コラボレーションを促し、組織が目指す成果に導く。

本書p.55 ロバート・グリーンリーフ『サーバント・リーダーシップ』

(2)社会とのつながりを大切にする「共感する組織」

・顧客や社会との「共感や信頼」を優先する組織
↔「警戒する組織」
・顧客ではなく、社内にメンバーの気持ちが向いている組織

●構造の改革:パーパスを核とした経営システム・現場への権限委譲
●交流の改革:顧客と対話できるコミュニティ・ソーシャルメディア
●意識の変革:率直で人間的な価値観・意味を共有する技術

🔰オーセンティック・リーダーシップ
・自分自身の価値観や信念に正直となり、思いと発言、行動に一貫性を持ち、自身の弱みも含めて自分らしさを大切にするリーダー像。社員、顧客、社会と共感する関係性をつくるリーダーシップ。

(3)メンバーが自ら考え、共創する「自走する組織」

・社員自らが考え、協働し、成果を生む組織
↔「自由放任の組織」
・上司の指示がないと、受け身であるがゆえに、社員は迷い、何をしたらよいか分からない

カギは「自律と対話」
●構造の変革:内発性を重んじた人事システム・多様な社内ネットワーク
●交流の変革:社内外の人をつなぐビデオ会議や交流プラットフォーム
●意識の変革:自律行動を重視する価値観、動機付けの技術

🔰シェアド・リーダーシップ
・リーダーを固定せず、メンバー全員が何らかの形で影響し合い、適材適所で自然発生的にリーダーシップを発揮し、リーダーとフォロワーを循環するスタイル。専門性や個性から、その場に最適なメンバーがリードするのであり、組織から与えられて担うのではない。
→ 組織の問題を自分ごと化して考えるようになり、結果として組織のエンゲージメントが深まっていく

🎓シェアド・リーダーシップは垂直型リーダーシップよりもチームの成果が高めやすい。特に複雑なタスクを受け持つチームにおいてその傾向が顕著。

本書p.71

(4)まとめ

(1)~(3)で紹介した組織特性のサマリー

本書p.73

この理想の組織モデルにシフトさせていくために何から始めればいいのか。決して「結果」から求めてはいけない。
まず取り組むべきは「関係性」である。
ダニエル・キムが提唱する「成功循環モデル」が基盤となる。

3つの組織を実現するためのエッセンス
・学習する組織の核心:関係の質の向上
・共感する組織の核心:思考の質の向上
・自走する組織の革新:行動の質の向上

本書p.74
本書p.75 Daniel H. Kim 「WHAT IS YOUR ORGANIZATION'S CORE THEORY OF SUCCESS?」 

3.関係の質を変える ~学習する組織~

・どうすれば良いかをトップが考え、他の人全てをその大戦略家の命令に従わせることなど、もはや不可能な時代
→ 組織内のあらゆるレベルで、人々の決意や学習する能力を引き出す方法を見つける組織が真に卓越した存在になる組織

学習する組織を支える3つの柱

本書 p.81 ピーター・センゲ『学習する組織』

(1)心理的安全性

🎓プロジェクト・アリストテレス(Project Aristotle)
・グーグルによる生産性改革プロジェクトの総称
個人の生産性の合計とチームの生産性は相関関係が少なく、チームの生産性向上のためには「集団的知性がいかに生まれるか」という視点が重要であることが分かった。
 =「チームメンバー個人のパフォーマンスが、チームの生産性には大きな影響を与えない」
 =「心理的安全性が重要」
▼成功するチームの集団規範における共通点を発見
 ①均等な発言機会
 ②社会的感受性の高さ
▼5つのチーム成功因子を特定

本書 p.92
本書 p.93

🔰集団的知性
・「誰がチームのメンバーであるか」よりも「チームがどのように協力しているか」の方がチームの生産性にとって重要
🔰集団規範
・組織で活動していく中で自然に形成される思考の枠組み(認知や判断、行動について「こうあるべきだ」という基準や価値観)
🔰心理的安全性
・チームメイトなど周りの評価に怯えることなく、自分の意見や想いを発信するために必要となる要素
🔰社会的感受性
・他者の感情を、顔色から読み取る能力。自分の発言が相手に及ぼす影響を理解し、相手の表情や言動を見て、想いを読み取ることができる。

脳科学の観点からも心理的安全性は重要
・過度な不安には学習を妨げるマイナス効果がある
・不安が大きくなりすぎると生理的な資源を消費し、脳のワーキングメモリ(作業記憶)や新しい情報の取り込みが制限される

🔰デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)
・何かに集中しておらず、ぼんやりしているときに活性化する脳の神経回路。散歩や風呂、トイレ、雑談をしているときに活発化し、脳に取り入れられた情報を任意につなぐ役割を持つ。
💡雑談タイムはイノベーション創出の源泉であることが脳科学的にも証明されている

心理的安全性を阻害する要因 ~4つの不安~
・「無知」「無能」「否定」「邪魔」と評価されることへの不安

本書 p.97

本音で共創する場
・ざっくばらんに多様な意見を出し合い、価値を生み出せる「本音で共創する場」こそ、高い心理的安全性を維持した、理想的な協業の場

(2)心理的安全性の高め方

①共感デザイン
・メンバーが人間性を回復し、自然体で他者に共感する感覚を取り戻し、チーム内の信頼関係を高め「コンフォートゾーン」に入るためのプロセス
・「ホールネス」「他者の尊重」「相互理解」の3ステップ

②価値デザイン
・信頼関係のあるメンバーが率直な意見を出し合い、それらを集約してチームとしての価値創造を目指す「ラーニングゾーン」に入るための”集団的知性”を発揮するプロセス
・「パーパスの共有」「第三案の共創」「安心の醸成」の3ステップ

本書 p.101

①-1 共感デザイン:ホールネス ~自然体の自分に戻る~

・「偽りの自分」を演出することなく、ありのままの自分をさらけ出すこと
・自分本来の感覚や感情を尊重し、他者の喜びが自分の喜びに通じることに気付くことで、二つに分かれた自分を統合すること
→ 自分への自信を取り戻すと、自分の本音を恐れることなく話せるようになる
💡個人的には、自分の大切にする価値観に沿った結果、それが他者にとっても嬉しいことである際に、自己の統合が図れるのではないか?と思う

🔰ホールネス
・ありのままの自分をさらけ出すこと。心理的安全性の基盤ともいえる。
🔰代償的自己
・外部から期待された役割を生きる「偽りの側面」
・自分の気持ちに正直に生きたいという「本当の自分」と二面性を形成する
🔰社会脳
・自己と他者、そして社会を結ぶ脳の働き
・人間の脳は、人のためにつくすことに大きな喜びと幸福を感じる仕組みになっている

①-2 共感デザイン:他者の尊重 ~他者を人間として尊重する~

・他者を「利益をあげるための道具」として見るのではなく、「異なる価値観を持つ対等な人間」として向き合う姿勢を持つこと
→ 組織のメンバーが、お互いを人間としてリスペクトする意識を持つことが、心理的に安全な場の基盤となる

🔰社会規範
・「損得勘定」よりも「善意や常識」が重んじられる行動の基準
・「われとなんじ」という人間的な見方であり、お互いの人格や価値観を理解し、信頼し合う間柄
🔰互酬性の規範
・お互い様という感覚
🔰市場規範
・「損得勘定」に基づく行動の基準
・「われとそれ」というビジネス的な見方であり、相手を人間というよりも道具として捉え、私情を抜きにして相手に役割や機能を求める

①-3 共感デザイン:相互の理解 ~本音で話せる間柄になる~

・相手の気持ちを想像し、できるだけオープンに自己開示をする
→ 双方の心の中にある不安を解消する。「この人は自分に不利益をもたらす存在ではない」と確信でき、お互いの警戒心が解かれることで、はじめて相互信頼の扉が開く。

🔰ラポールの形成
・お互いに自己開示し、相手を理解しようと想像力を働かせると、脳内の共感を制御する神経メカニズムが作動して、自分の脳と相手の脳が協調し、共鳴し合う。双方の心に橋が架かる。

メンバーが前向きになるための場づくりのアイデアが大切
・チェックイン:会議の始めに、ポジティブな話題をシェアする
・ライフシェア:個々にライフラインチャートをつくり、発表し合う
・悩みのシェア:仕事の進捗だけでなく、今の忙しさや悩みを共有する
・悩みの相談室:メンバーの抱える仕事の悩みを、みんなで解決する

②-1 価値デザイン:パーパスの共有 ~意識を価値創造に向ける~

・メンバーの視点をチーム内の人間関係から顧客の価値創造へ変える
・組織のパーパスを実現するための価値創造に意識を向ける
→ 多様な意見を組み合わせ、健全な第三案を生み出すための環境を整える

本書 p.111

②-2 価値デザイン:第三案の共創 ~建設的に第三案を共創する~

・自動的な思考のもとになる「推論のはしご」を意識し、想定外の悪い事態の発生時や人からの反論時に、そのはしごをゆっくり登る習慣をつける
・相手を責めるのではなく、ともに価値を生むことを共通の目的とし、穏やかな問いかけによってお互いのどこに違いがあるのかを確認し合う
→ 信頼関係の醸成や心理的に安全な場づくりによって、建設的な議論にプラスになる

🔰推論のはしご
・現実の世界を、選択的に観察し、解釈し、仮説を立てて、結論を出す思考プロセス。瞬時な条件反射に役立つ反面、下手をすると固定観念や思い込みを強化し、感知する情報を狭めてしまう。

②-3 価値デザイン:安心感の醸成 ~場に安心を生む~

・「あなたはここにいて安全だ」という帰属シグナルを送り続けること

🎓チームのパフォーマンスは「帰属シグナル」と強い相関関係がある
🔰帰属シグナル
・安全なつながりを構築するような態度
例)笑顔、物理的な距離の近さ、アイコンタクト、相手と同一の動作、エネルギーの交流、順番に発言、相手への気配り、ボディランゲージ、声の高さ、ぶれない価値観など

(3)心理的安全性を創り出すリーダー像

4つの思考に注意し、望ましい行動をとる

本書 p.121
本書 p.125

🔰トレイン・ザ・トレーナー
・リーダー自身が心理的安全性の大切さを伝える先生になり、部下に心理的安全性を伝えるためのトレーニングと機会を提供する

(4)心理的安全性の落とし穴

①空気読みすぎ体質 ~「気配りこそ命」という誤解~

落とし穴:空気を読みすぎてしまい、自分自身が本音を話せていない
解決策:いつでも自然体に。人間関係から価値創造に目を向ける。
= 「ホールネス」&「パーパスの共有」

🔰集団浅慮
・心理的に安全な場を創ろうとするあまりに、相手の反応や顔色を伺うことが習慣化して、自分を主張できなくなってしまう問題。仲がよくなりすぎるチームに起きることが多い。「いい人の仮面」状態。

②決められない組織 ~「全員一致すべき」という誤解~

落とし穴:均質さやリスクを重んじ全員一致を目指すので何も決まらない
解決策:対話を大切にする。パーパスを共有し走りながら考える。信念に基づいて異議を唱えるメンバーがいなければ採用する。
= 「パーパスの共有」

・全員の意見をそのまま取り入れることは、対話や議論を放棄することの裏返しであり、結論の先延ばしか、多数決かの二択になってゆく
・リスクゼロ志向は自ら変革する力を失う

③話し合い万能主義 ~「話し合えば解決する」という誤解~

落とし穴:話し合えばすべてが解決するはず。でも実際には解決しない。
解決策:発散と収束を繰り返して、チームと個人の相互作用を最大化する

・価値はチームと個人の相互作用によって生み出されるものであり、心理的に安全な場だけでは解決できるものではない。
・特にアイデア収束の局面では、専門能力や個人の暗黙知が重要

4.思考の質を変える ~共感する組織~

(1)仕事の意味「WHY」を考える

・人が自立的に動くための核心は「しなくちゃ」という意識が「したい」という感覚に変わること。「自走する組織」の原動力。
・自己決定理論の6段階の動機付けにおける「内発的動機づけ」に該当
・リーダーは情報と仕事を配る人ではなく、意味と希望を伝える人
・組織や社会の規範をメンバーに消化・吸収してもらい、自走してもらう

本書 p.153

🔰自己決定理論
・内発的動機づけへと至るまでの道筋を探求する理論

本書 p.146-147 エドワード・デシ『人を伸ばす力』
本書 p.146-147 エドワード・デシ『人を伸ばす力』

🔰内発的動機づけ
・好奇心や関心、そこから生まれるやりがいや達成感など、自分自身の内なる欲求に起因するもの
🔰内在化(内面化)
・組織や社会が持つ規範を、自分自身の規範として受け入れること

(2)社会にとっての仕事の意味

・人々が企業に求めているのは完璧さではなく、人間的な誠実さ。その根幹となるものが「パーパス」。それに基づく言動の一致性を試されている。

目指す北極星がある組織は強い
・組織が信じる不動の理念
・「自分たちは何を信じるのか」という問いへの答え
「ミッション・ビジョン・バリュー」で構成される
・全社組織だけでなく、部や課、プロジェクトなどのチームでも北極星を持つことができる
・一般的に「ミッション」は創業者ないし経営者の思いを大切にし、「ビジョン」は経営陣が原案を創り、社員の賛同を広く得ることが望ましい。一方で「バリュー」は社員の日常行動につながるものなので、全社参加型でじっくり創りあげられるとよい。

本書 p.159 フィリップ・コトラー『マーケティング3.0』

🔰ミッション(≒パーパス)
・この組織は何のために存在しているのか(「社会における存在意義」)
≒ 理念、使命、フィロソフィー
・組織の持続可能性を決定づけるもの
・「何によって世界をより良くするか?」「持続可能で将来の展開も含んだ使命となっているか?」「使命に独自性があるか?」がポイント
・CSVとの関係が深い
🔰ビジョン
・未来を創り出すもので「組織にとって望ましい未来像」を描き出したもの
・「どんな会社、組織、ブランドになりたいか?」「独りよがりではなく、社員や顧客、広く生活者が共感するものか?」「社員が実現可能性を感じる未来像か?」がポイント
・社員が可能性を感じ、ともに歩みたいと心から願う未来像になっていることが肝要
🔰バリュー
・組織における核心的な価値、「その組織は何を大切にしているか」をあらわすもの。メンバーにとっての行動の規範となる。
・ミッション・ビジョンを実現するために企業やブランドが共有すべき「組織として共有する価値観」
・「当社らしさとは何か?」「社員の行動を具体的に導くことができる内容か?」「社員を幸せにする内容になっているか?」がポイント

(3)自分にとっての仕事の意味

🎓「外的な目標を持つ人」は「内的な目標を持つ人」と比べて、常に未達成への不安を抱えており、その達成度にかかわらず幸福度が低い

・「人間が手にしうる最も美しい運命、最も素晴らしい幸運は、情熱を傾けられる仕事で生計をたてられることである」/アブラハム・マズロー
・「幸せには、喜びの追求、夢中の追求、意味の追求の3種類があり、意味の追求こそ最も深く持続的なものである」/マーティン・セリグマン
🔰意味の追求
・自分より大きな何か(自分が所属するコミュニティ)に捧げるために、自分の最も高い強みを使うこと

⭐三方よしを目指してよい
= 「自分」と「顧客」と「社会」のみんなが幸せになる仕事を目指す
↔ 「滅私奉公」(個人的な感情を抑えて、公に奉ずる日本的精神)
  ・自分を殺しており、自分にとっての仕事の意味を見出せていない

🎓「主体性を持つギバー」が最も成功する
・自分にとって意義のあることを主体的に選択し、自分の取り分のためではなく、顧客や同僚の幸せのために高い成果を目指す
・自分が楽しめること、自分が意義を感じることをする
・自らが考えた意義に喜びを感じて仕事をしている
↔ 最も成功から遠いのは「自己犠牲のギバ-」(滅私奉公)

本書 p.185 アダム・グラント『GIVE & TAKE』
本書 p.187 アダム・グラント『GIVE & TAKE』

⭐どんな仕事でも「天職(コーリング)」になる
🎓仕事に意味を見出している人は自分の仕事を天職だと感じている
🔰ジョブ・クラフティング
・働く人自らが、仕事に新たな意味を見出したり、仕事内容の範囲を変えたりすることであり、自分自身で仕事を意味づけし、自分の仕事を、より意義深いものに変えていくこと

本書 p.173

(4)意味の共有の落とし穴

①意味の押し売り ~「意味を伝えればいい」という誤解~

落とし穴:仕事の意味を繰り返し伝えれば、きっと分かってもらえるはず
解決策:自らが理念を率先垂範し、理念と行動を繋ぐ。一人ひとりの腹落ちこそが大事。

・一人ひとりがその意味を腹落ちさせ、自分自身の価値観と統合することがメンバーの行動変容に繋がる

②ボトムアップ願望 ~「個の総和が全体になる」という誤解~

落とし穴:個人の総和をボトムアップしたい。それで組織はまとまるはず。
解決策:組織が持つ「自社らしさ」を話し合い、言語化し、共有する

・多様な社会において、個人の思いをボトムアップしても組織の理念にはならない
→ 自社の魅力や価値観は何か。自社が持つ使命とは何か。それらを言語化し、共有し、社員に内在化させることがポイント。

③自分探し症候群 ~「自分探しで解決する」という誤解~

落とし穴:自分を探せば、答えも理想郷もきっとある。でも辿り着けない。
解決策:今の自分を否定せず、そこを起点として、現実に意味づけする

🔰青い鳥症候群
・現実を直視せず、今の環境とは異なるところに理想を探し続けてしまう
・特に、自分に合う職場や仕事など、外面の探索を続ける

5.行動の質を変える ~自走する組織~

(1)3つの心理的欲求

🎓ソーマキューブの実験
・報酬を与えることで本人の活動の意味が変わり、活動への意欲を失うことが分かった by エドワード・デシ

→ 自己決定理論を構築。3つの心理的欲求が満たされると、人間は動機づけられ、生産的になり、幸福を感じる
自律性:「自分でやりたい」「自らの行動を自分自身で選択したい」。自己決定の欲求。人は自ら選択することによって、自身の行動に意味づけし、納得して活動に取り組むことができる。
有能感:「能力を発揮したい」「おかれた環境と効果的に関わり、有能でありたい」。自律性を発揮できる時に、それが最適な難易度を持った挑戦となるときにもたらされる。(フロー体験
関係性:「人々といい関係を持ちたい」「人を思いやり、思いやりを受けたい」「人を愛し、愛されたい」。関係性が満たされる選択肢を自らが選べば、自律性との両立が可能。

🎓エンゲージメントと生産性
・エンゲージメントの高い企業では社員が仕事に費やす時間が増加。優秀な人材も確保できる。結果として個人も組織も生産性を向上できる。
給与や福利厚生の充実などに業績との強い関連性は見られず、エンゲージメントとの間に強い相関関係がある
・「自律性」「有能感」「関係性」「意味の共有」が満たされるとエンゲージメントは向上する。(「期待」「貢献」「帰属」「成長」の実感)

本書 p.201

(2)自律性

①組織の罠
・組織の原則が適用されるほど、成熟に向かっていた人間を未成熟な状態に戻してしまい、個人の成長を阻むようになる

▼成長を阻む組織の4原則
1 仕事の専門家…個人の能力が部分的にしか用いられない
2 命令の系統…下位の者は、従属的・受動的にならざるを得ない
3 指揮の統一…個人が自発的に目標設定することにはならない
4 管理の範囲…末端の個人にとっては、自己の統制範囲を狭める

・組織内で自己実現することが困難になり、欲求不満や葛藤が募ることで、「組織の歯車」になったと感じる
→ 組織を去る、出世して管理者になる、心を守るために順応する、無関心になり報酬にのみ価値をおく、のいずれかをとるようになる
→ 後者2つは働きがいを見失い、心理的エネルギーが減少する

②責任感の罠
・圧力をかけらるほどリーダーは管理的になり、メンバーの内発的動機づけ、創造性、概念的理解を低下させる
・リーダーは組織に貢献しようという思いで、よかれと思って管理的な行動を強める。真面目な人ほど陥りやすい。
・コントロール欲求が高まり、非内発的動機づけに走ることで、多重の規律が形成されてしまう

③罠をなくすには?
⭐規律を最小化すること

・「しなくちゃ」の断捨離を徹底的に行い、個人の中に「しよう」「したい」という気持ちを芽吹かせる
・組織内に横行する、あらゆるムダな規律、手続き、習慣を見直し、抜本的に改善する。複雑なものを徹底的なシンプルにする。

1 「ゼロベース思考」で定期的に断捨離する
・過去の経験から積み上げた前提知識や思い込みをいったんゼロにして、ベースがない状態から物事を考える
・WHYにあたる「利用者に提供する価値(ミッション)」に集中し、システムを極限までシンプルに絞り込む

2 問題発生時に「ダブルループ学習」で断捨離する
・問題の根本に何があるかを考え、真因を改善する
・発生した問題に対して、既存の目的や前提そのものを疑い、そこから軌道修正を行う
・時間がかかっても、根治治療を行う
↔ シングルループ学習
・過去の学習や成功体験をもとに問題解決を図ること。本質的なエラーを除外できない欠陥を持つ。

3 複雑な統制を「組織のチカラ」で断捨離する

・統制する代わりに、社内を透明にする「透明のチカラ」を導入する
・様々な情報がオープンになり誰でも閲覧できるようになれば、メンバーは社内外からの共感と評価、ピア・プレッシャーの中で協働する

⭐効果的なアクションのステップ例
1 理念と照らし合わせて、チームが本来持つべき「パーパス」を話し合う
2 価値創出と無関係な「無意味な規律、無駄なシステム」を洗い出す
3 無意味な規律やシステムがある理由を「なぜ」を繰り返して深掘りする
4 根っこの問題を発見したら、クリエイティブにその解決方法を考える
5 リスクを想定した肥大化した文章表現も、徹底的にシンプルにする
6 「透明のチカラ」で、シンプルに解決できることはないかを検討する
7 1~6を日常業務に取り入れ、シンプルなシステムを維持、進化させる

(3)有能感

⭐フロー体験を創り出す

・時間を忘れて熱中している状態=「心理的エネルギー」が高い状態
・幸せと成長を最大限に両立させることが可能

本書 p.219

⭐2つのポイント
①ベイビー・ステップを用意する

本書 p.220 出典:ミハイ・チクセントミハイ『フロー体験 喜びの現象学』

②ティーチングとコーチング
・適切な課題(WHAT)は提示するが、その実現方法(HOW)に関しては過干渉せず、成果に対する適切なフィードバックで成長を促す
・メンバーの熟達レベルと課題の難易度によって、「技術を教えるティーチング」と「問いによって本人から答えを引き出すコーチング」を組み合わせることで、学びが加速する

本書 p.221 田口智博 医学書院「コーチングで、力を最大限に発揮するサポートを」

(4)関係性

⭐主体性を持つギバー
※(2)自律性:「主体性を持つギバー」参照

⭐4つのコミュニケーションの技術
・「傾聴」:想像力をフルに働かせて、相手の気持ちに共感する。相手目線で世界がどう見えているのか、感情移入して聴く。
・「伝える」:わたしメッセージで、WHYとともに一次感情を伝える
・「問う」:オープン・クエスチョン。WHAT(何が)やWHY(どうすれば)を用いて、相手の意見を引き出す。
・「共創する」:人と問題を切り離し、ともに満足できる第三案を一緒に考える

(5)動機づけの落とし穴

①ポジティブの罠 ~「褒めることが大切」という誤解~

落とし穴:否定せずに褒める。それが伸びるコツ。でもやる気が続かない。
解決策:感謝・敬意・勇気づけ。成長を促すフィードバックの技術を学ぶ。

・「褒める」代わりに、「横の関係」を前提とした「感謝」と「敬意」そして「勇気づけ」の言葉を伝える
・勇気とは、困難を乗り越えて、成長し続けるためのエネルギー。結果を評価するのではなく、行動を応援する。
・フィードバックの場面では、相手の成長を思い、率直に意見を伝える

②トンネル・ビジョン現象 ~「私は孤立している」という誤解~

落とし穴:内発的動機づけは難しい。焦るのは私だけ。組織で孤立する。
解決策:一気にすべては変わらない。壁をつくらず、一人ずつ対話する。

🔰トンネル・ビジョン
・心理的視野狭窄。不安や不満などのストレスを抱えたときに視野が狭くなり、中心部分しか見えなくなってしまう現象。

感度の高い人からはじめて、決して壁をつくらず、焦らずに、対話と学習を繰り返しながら時を待つ。やがて様子をみていた人たちが賛同し、望ましい潮流ができる。
⭐それまで確固たる信念を持って、少しずつ現実をよくしていく

③指示待ちの部下 ~「あの人は自ら動かない」という誤解~

落とし穴:指示待ちの人がいるとイライラする。自分でやった方が早い。
解決策:対話が大切。その前に自分が仕事を抱え込んでいないか振り返る。

・相手の立場になりきって、その人の抱える葛藤や悩みを理解しようと努力する。その人の理解者になることから始める。
・勝手に上司が抱え込んでいる場合もある。部下を信頼して役割を明確にし、仕事をひとつの単位で任せる。言葉をはさみたくなったら、答えを伝えるよりも問いかけによって気づきを促す。

6.新しい組織を目指すには?

⭐6つの変革アクション
①まずあなたが第一歩踏み出そう
・自分の内面を変えることから始める。信念を醸成し、小さな一歩を踏み出す
②自分のことを正しく認識しよう
・自己を変革する。そのために愛ある批評家の声を聴き、「自己認識力」を高める
③影響が届くところから始めよう
・自分の「影響の輪」を見極める。そこに自身の心理的エネルギーを集中する。
④小さな成功を育てていこう
・信念を持ち、関係・思考・行動と変革を進める。価値を生むことに集中する。
⑤反対者の信頼を得る努力をする
・反対者にも、情熱を伝え、信頼を得る努力をする。次第に関係性は変わっていく。「成果をあげたい、組織をよくしたい」という思いは共通。価値観や方法論が異なるだけ。
⑥常にチームの希望でいよう
・困難は学習のチャンス。希望を抱き、みんなで助け合い、乗り越えて成長する。
⑦共感をつなぎ、影響の輪を広げよう
・ティッピングポイントはきっと訪れる。一期一会の気持ちで対話を広げる。

🔰セルフ・アウェアネス(自己認識力)
・自分の感情、長所、短所、欲求、衝動などを深く理解する能力
・内面的自己認識:自分の価値観や情熱、感情、長所や短所、他者への影響力などに関する認識
・外面的自己認識:他者が自分をどのように見ているかに関する認識
🔰愛ある批評家(Loving critic)
・その人のためを思って真実を伝えてくれる他者
🔰ライティングセラピー
・自身の抱えている悩みや不安といったネガティブな気持ちを言葉にするトレーニング。メタ認知力の向上、精神の安定化に効果がある。
🔰クリエイティブ・テンション
・ありたい姿と現実との乖離。テンション(緊張)は前を向くためのエネルギー。ギャップは伸び代であり、成長の機会。
・現実を正しく理解して行動し、経験から学習することで理想のビジョンに近づく。
🔰エモーショナル・テンション
・ギャップや結果に落胆し、不安や自己否定となってビジョンが変質していってしまう心の状態。学習を阻害する。
🔰ティッピングポイント
・アイデアや社会的行動がある閾値をこえると、野火のように広がってゆく、劇的な瞬間

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