【果たして成り立つ?】日本の伝統工芸・技術を売りにしたD2Cブランドづくり

自己紹介

こんにちは、森です。FABRIC TOKYOというアパレルD2CブランドでCEOを務めており、日々Twitter(@yuichiroM)や音声メディアstand.fmではD2Cブランドの情報やスタートアップの起業や経営について発信しています。よろしければフォローをお願いします!
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しばし雑談

さて、日曜日ですね。相変わらず家からほとんど出ない生活が続いています。

金曜日は1日中会議が続いていて、午前中は経営会議があり、午後は取締役会がありました。毎回ヒートアップして、「疲れるけど楽しい!」そんな会議が経営会議と取締役会です。

うちの会社では、経営会議とは呼んでいなくて、「UX30」という風に呼んでいます。
他には「UX365」という会議があって、UX30が経営の短期的な課題について話し合う場で、UX365というのが経営の1年後の姿を話し合う場というように決めています。UX30は週に1度、UX365は月に1度の会議です。
どうしても経営会議というのは、短期的な話と中長期の話とが混ざりがちなので、分けています。

こんな感じで会議の1日でした。皆さんはどうお過ごしでしょうか。

それでは本日も質問に答えていきます。

質問「日本の伝統技術を通して、誇れる日本を打ち出していきたいです。少し世界観としては飛躍しすぎでしょうか。」

質問全文「老舗の餅屋です。提供できる世界観を見つめ直しています。日本の伝統技術を通して、海外に劣っていると認識している日本人に、誇れる日本を打ち出していきたいです。
少し世界観としては飛躍しすぎでしょうか。
もし世界観を提供する内容を考える上でアドバイスがありましたらいただけると嬉しいです。
よろしくお願いいたします。」

といった質問です。ありがとうございます。お餅屋さんで老舗ということですが、何代目かの後継ぎの経営者の方でしょうか。

海外に劣っていると認識している日本人に対して、誇れる日本を打ち出していきたいという世界観についてのご質問なのですが、懸念されているほど全然飛躍し過ぎではなく、いいのではないでしょうか。というのが最初の感想です。

ただ、「誇れる日本を打ち出します」というのは、「誇れる日本がコンセプトのお餅です」と言っても、なかなかターゲットの数が少ないのではないかなと思います。言い方を少し変えてあげるといいでしょう。

直接的に伝統技術を訴求しても顧客が置いてけぼりになりかねない

顧客が置いてけぼりになる、とはどういうことでしょうか?それは、顧客目線の欠如です。
やはり我々は日本人ですので、日本人が作るものが人気だったり質が良かったり売れていたりしますと、ついつい嬉しい気持ちになってしまいます。
逆にいうと、そういった誇れるものが次第に失われているということには、やはり目を背けられない、そんな日本人のアイデンティティーがあるのではないかなと思います。

このような根底にある共感への想いなどを駆り立てるのはかんたんではなく、どうブランドに転換し、顧客の価値に転換するかということだと思います。

上手にやられている例を2つご紹介します。

事例①吉祥寺発の時計ブランド「Knot(ノット)」

吉祥寺発の時計ブランド「Knot(ノット)」さんです。こちらは日本の伝統技術である時計です。

時計は精密機器という、日本がトップクラスの技術を誇るという商材なのですが、どうしても日本製の時計はSEIKOやCITIZENといった企業によって価格が高騰していました。
時計は何十万もするものも多いですよね。僕みたいな一般人やそういうものになかなか手を出せないような人たちや、手を出さないような人たちもいます。Knotという企業は日本の伝統技術の時計の制作をより手軽な形にし、ものづくりの良さを伝えていくというビジネスモデルを作っています。

Knotさんはビジネスモデルが面白いです。
時計のベルトを交換型にし、カスタムオーダーにしています。そのベルトを何本も買うお客様が多くて、それで収益が成り立つというような面白い工夫をしていらっしゃいます。
そのため、低価格で時計を提供できますし、収益がしっかり立つということでブランドもビジネスとして成り立って継続していくという形になっています。

事例②メイド・イン・ジャパンのファクトリーブランド専門EC「Factelier (ファクトリエ)」

もう1つの事例は「Factelier (ファクトリエ)」さんというアパレルのブランドです。

ファクトリエさんは工場と直接提携して、工場の名前も出し、各商品を作っているという会社さんです。
2013年ぐらいに立ち上がったブランドなのですが、2013年に立ち上がった時はファクトリエさんはシャツをリリースするところから初めています。
熊本県の人吉市というところに「HITOYOSHI」という非常に有名なシャツ工場さんがあるのですが、そのHITOYOSHIのシャツの販売を始めたのが、ブランドの始まりになります。
最初から「語れるものづくり」というものがコンセプトでした。

アパレルの国内の生産比率は1990年は50%ほどあったのですが、今では3%を切っています。この30年間で半分以上が国産から海外製になったというのが、この30年間のアパレル業界のものづくりの大きなトレンドだったのではないかと思っています。
冒頭でお話した通り、我々は日本人ですから、日本のものづくり、日本のものが衰退していく姿には、見て見ぬ振りはできない気持ちを持っています。
ファクトリエさんはこういった逆境に立たされている工場を、「なんとか元気にしていきたい。なんとかものづくりの良さを後世に引き継いでいきたい。」という思いをお持ちで、負のサイクルから正のサイクルにするということで、自社のファクトリーブランドを持ち、「Factelier by HITOYOSHI」というタグを洋服に付けていて、工場と共創する非常にユニークな形でものづくり、ブランドづくりを実践されています。

しかし多くの人々はファクトリエさんのブランドミッションに共感をする一方で、購入理由はサプライチェーンの透明性から感じる「適正価格」にあるでしょう。

3つの円の重なる部分でブランド価値をつくる

結局世界観訴求と同時に、価値提供が大切ということです。

誇れる日本というものをしっかり打ち出していきたいという質問者さんのご質問に関しましては、そういった方向性は全く問題ないというか、むしろ素晴らしいとは思うのですが

・なぜ人はその商品を買うのか
・なぜ人は応援してくれるのか
・誇れる日本を打ち出すだけで増えるお客さまはどれくらいいるのか

ということを考える必要があります。
共感型のブランドづくりだと思いますので、共感してもらえる理由というのを交通整理し、ブランドの世界観づくりをしていくのがおすすめだと思います。

過去にも話したことがあるのですが、今のブランディングの方向性としては3つの円で考えるといいのではないかと思います。

・1つ目の円が顧客価値
・2つ目の円が企業価値
・3つ目の円が社会価値

3つの円

顧客価値
これは非常に簡単です。
お客様が買う理由があるのか、お金を払う理由があるのかどうかということです。

企業価値
企業価値というのは我々のように商品を提供する側です。
こちらにもビジネス的なメリットがあるのかということです。

平成の時代までのブランディングというのは、ここまでで終わっていたのですが、令和の時代になり時代が移り変わっていく中で、社会価値という円が加わりました。

社会価値
例をあげますと、最近は地球環境が汚染されていますので、地球環境に良いものづくりを心がけるということや、先ほどご紹介したように、ものづくりが失われていくところを再生させるという社会的な価値といったように、なんらかの自分がいる業界の中で、社会的課題が明確になってきている部分があると思っています。

こちらの社会的な意義という円を考え、上述した顧客価値、企業価値、社会価値の3つの円が重なり合うことは何なのかと考えたらいいと思います。

今日はブランドの世界観を提供するうえでの、ご質問をいただきましたので、回答させていただきました。

参考になれば幸いです。

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それではまたお会いしましょう。


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