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【必読】『D2C』  世界のルールはもう書き換えられた。

どうもユウイチローです。

今回は、時代をシフトさせたブランド戦略「D2C」を、一気に一般ビジネスパーソンに認知させた書籍『「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略 D2C』佐々木康裕 著 をご紹介しようと思います。

D2Cって何?

Direct to Consumer の略で、「メーカーが、小売りや代理店などを介さずに、ECサイトから直売するモデル」という意味です。言葉だけ受け取ると、「あーアマゾンみたいなやつね」「まー自分には関係ない技術だ」ぐらいの反応が多くありそうですが、このD2Cは、今のビジネスの構造、社会そのものをディスラプト(破壊)する、もう既にしている、凄まじい破壊力を持っているのです。そしてそれは全世界の人々に影響するものなのです。

デザインと関係あるの?

僕は「デザイン」について日々語っている人間ですが、表面だけみるとデザインとD2Cとは無縁に思いますよね。しかししかし、超絶に関係があるものなのです、だから焦ってこの記事を書かせてもらった所存です。

D2Cの本質は、ブランド戦略です。小売がちょいとパワーアップした、程度の話では全くありません。

ブランドとデザインはセットです。デザインで作るのは「モノ」と「コト」であるとお話ししてきましたが、「モノ」も「コト」もブランドそのものであると言えます。

だから、ブランド戦略という絶大な力を持ったD2Cは、ブランドを扱う僕らに大きな影響を与えます。

この本の筆者、takuramの 佐々木さんビジネスデザイナーとして、ビジネスマインドとクリエイティブマインドを駆使して様々な企業の課題を発見/解決されています。(最近いろんなメディアでよく見ます)

普段から「デザイン」を生業とする筆者が、普段の仕事とD2Cが密接につながっているとして出版された渾身の1冊なのです。

僕のいる広告業界は、いままさにD2Cの影響でぶっ壊れようとしている印象を抱きます。消えて無くなるわけではないですが、広告業界のあきらかな不振は、D2Cの影響をモロに受けていると感じざるを得ません

電通が青い顔をしているのは、コロナウイルスに直撃されたからだけではありません。昨年グループ連結で想定外の808億円の赤字を叩き出したからです。全ての要因ではないでしょうが、「広告代理店のしごと」を古いモデルの一部と位置付けるD2Cは、確実に広告の世界をディスラプトしているのは間違いないでしょう。

それでは本の内容に入ります。

大規模市場のディスラプト

僕たちがよく見てきたブランド=伝統的なブランドの市場が、少しずつ、時には一瞬で崩れ去っています。

アメリカの寝具マットレス最大手「Mattress Firm」が2018年10月に破産報告。創業1986年、全米で3300の店舗を持っていた巨大チェンーンです。

破産に導いたのは創業わずか4年のD2Cブランド「Casper」だった。このように、創業まもないD2C企業が老舗の伝統ブランドをあっさりと駆逐してしまえるほど、とてつもない力を秘めている。ではD2Cと伝統的なブランドにはどんな違いがあるのでしょうか。

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D2Cブランドと伝統的なブランドの差を以下にまとめます。

ミレニアル世代…1980年代から2000年代初頭までに生まれた人。その後をZ世代(1990年代後半から2000年代の初頭に生まれた人)という。 X世代…1960年代初頭または半ばから1980年代に生まれた人

①「ものづくり屋」ではなく「テック企業」である

図の「出発点」の違いですが、D2Cブランドと伝統的ブランドの差異を如実に表すのがデータサイエンティストの存在。ある程度成長したD2C企業にはデータサイエンティストが数十人はいる。顧客データの分析が、マーケティングや出店計画など経営の意思決定にとても重要な役割を果たします。

一方で、伝統的ブランドはデータサイエンティストは一人も存在しないことが多い。

D2Cブランドは、ものづくりはもちろん行うが、競争優位性は必ずしもそこではない。創業当初から大量のエンジニアやSNSマーケティングのプロを揃えます。施策を細かくデータ化し、グロース手法や使用するKPIもテック企業のそれに近い。

②「間接販売」ではなく「直接販売」する

D2CはEコマースでも店舗でも、顧客とダイレクトに対話します。顧客と直接コミュニケーションをとり、間に小売や広告代理店を挟まない。TwitterやInstagramを活用しダイレクトに対話しながら、ブランドのファンを増やすのです。そして、オンラインを主戦場としながらもリアル店舗を持つことが多い。オンラインでデータを取得済みのため、パーソナライズされた接客が可能。誰がいつなんの商品をどこで買ったかを把握し、どんなワードでウェブサイトなどに入ってきたかわかることで、1to1のサービスが実現できる。

一方で伝統的なブランドは、どんな人がどこで何を買ったかは、属人的なアナログなデータになりがちだ。このようなデータを使うことは、顧客満足を推理ゲームのような感覚で満たしていかざるを得ない。

③「高価格化」ではなく「低価格化」を志向する

Warby ParkerというアメリカのメガネD2Cブランドがある。そのブランドが市場に参入した当時は、伝統的なメガネブランドは中間業者を何社も挟み込むことで、原価数千円のメガネが10倍近くもの300ドルほどの価格になっていました。

Warby Parkerは小売を全く介さず直販を徹底することで99ドルの価格を実現。その上で徹底的にブランディングにこだわる。しかしその際、値段をつり上げるようなことはしない。伝統的なブランドはここの考え方が異なります。

④「着実な成長」ではなく「指数関数的成長」を遂げる

CasperやAwayといったD2Cブランドは設立初年度100億円から3年で400億円といった指数関数的成長を達成している。これはプロダクト戦略という早期に売り上げが立ちやすい事業領域に加え、インターネットというスケール増幅装置のおかげで実現した仕組みの組み合わせで生まれたものです。

⑤「プロダクト」ではなく「ライフスタイル」を売る

D2Cブランドはプロダクトを販売するのではない。世界観やライフスタイルを販売しています。今の顧客は「機能」だけでなく「感情」を買おうとしています。

Casperを「マットレス屋」と捉えてはいけないです。CEOのフィリップ・クリムは「Nikeは、運動するアクティブなライフスタイルを魅力的なものにし、Whole Foodsは健康的な食生活を誰もが手が届くものにした。運動、食事に加えて、睡眠がウェルネスの第3の柱になる」と言っています。

睡眠を通じて新しいライフスタイルの実現、新しいカルチャーの創出を目指しているのです。

店舗のシンプルで優れたデザイン空間のみならず、寝室専用の照明もリリースしたり、特筆すべきはCrepperが発行する雑誌「WOOLLY」の存在。自社のプロダクトには一切触れず、ヨガやウェルネス、睡眠、健康などのテーマでクオリティの高い多数のグラフィックに彩られた雑誌を発刊。さらに、ニューヨークでは昼寝専用スペースもオープン。

マットレスというプロダクトだけでなく、「睡眠」を中心としたライフスタイルを売り物にしているのです。

⑥「X世代以上」ではなく「ミレニアル世代以下」をターゲットとする

D2Cは「小売のミレニアル世代化」とも言われます。古いユーザー体験やコミュニケーションに慣れた世代ではなく、デジタルの発展とともに育ち、新しい消費の価値観を持ったミレニアル世代に対してサービスを届けていきます。この、「対象マーケットのシフト」もとても大きなポイントです。

アメリカのミレニアル世代は就職のタイミング前後でリーマンショックが起き、不況によりキャリア開始の出だしをくじかれています。そのため、その上の世代と比較してまだまだ給与水準が低いのです。そのためミレニアル世代は消費の特徴が倹約的、慎重と言われます。そのためD2Cブランドの安価なプロダクトはミレニアル世代への大きな訴求点となります。

ミレニアル世代は小さい頃からPCやスマートフォンを持ち、必ずしもマス媒体を情報取得の第一手段としません。ネットで洋服を買う、知らない人とチャットするなど、上世代が躊躇することに抵抗を感じません

また、彼らの10人に4人が大卒で、それまでの世代と比べ最も教養のある世代でもあります。教育の過程で「リサイクル」「ダイバーシティ」など倫理・環境などに配慮したブランドを好む傾向にあります。

⑦「顧客」ではなく「コミュニティ」として扱う

D2Cは顧客を、一緒にブランドを始め、育てていく「仲間」のように扱う。熱烈なファンであり、新製品へのフィードバックも絶えず送り、改善案を考えてくれる。彼らの存在は顧客というよりマーケターであり、共同開発者であり、エヴァンジェリストでもあります。D2Cはその顧客の1部をコミュニティ化し、そのコミュニティを「製品開発チームの一員」として扱うことに優れています。

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「モノからコト」から「コト付きのモノ」へ

より大きな視点で長期的な消費トレンドからD2Cを見てみます。

以前YouTubeでも、時代はモノを必要としなくなりコトの消費が叫ばれているといった話をしました。消費者は車や洋服やアクセサリーよりも、旅行や友達との食事やヨガや読書といった「コト=体験」におおきな価値を感じるようになっていると。

コトというのは、モノを伴わずに提供できるすべてのサービス。トヨタがオビリティサービスを始めたり、ルイヴィトンがホテルを始めたり、Appleが音楽配信サービスを始めたりと。

こうした事例はモノを扱ってきた企業の「コト化」を表すが、一方でD2Cブランドはメガネやスーツケースや洋服やスニーカーなど「モノ」を売る会社です。この逆説的なサービスをどう解釈するのか。

結論的には、D2Cは「モノ付きのコト」を売っている会社であるという、新たな流れを作っています。

優れた顧客体験を提供する、インターネットサービスであるという「コト」的な側面を持ちつつ、リアル店舗を持ち、実質的な「モノ」を核としながら世界観を作り込む。顧客との関係性を深め、紡いでいく。このハイブリッド性こそ、D2Cの強みなのです。

クリエイティブ(デザイン)はD2Cの力の源泉

最後に、僕が特筆したいポイント。D2Cエコシステムの主要プレイヤーの1つがクリエーティブエージェンシーであると指摘されています。

D2Cに限らず、現代の顧客はデジタルを介して情報収集、摂取することがデフォルトになって、ブランドが制作しなければならないコンテンツは爆発的に増えています。それぞれのコンテンツに対して、適切で高品質なクリエイティブを確保しなければいけないのです。

ブランドが発する360度展開の言語的、非言語的メッセージを通じてブランド体験を知覚します。SNSでの各施策、店舗の外観、接客スタイル、受け取るフライヤー、ウェブサイトのデザイン、オンライン購入の流れ、カスタマーサービスのやりとり・・これらを一貫したブランドとして成立させる「デザイン」は重要なファクターです。

プロダクトそのもの、そしてそれ以上に製品周辺のコンテクスト(製品が提供するイメージ、ブランドの特徴、ライフスタイル、プロダクトの届け方など)を訴求する。顧客体験やストーリーのイノベーションといえるでしょう。

そういった「コンテクスト」の開発がD2Cにおいてはマストな条件となる。製品以外のビジュアル、テキストなどその組み合わせでつくられる、「何をどう見せるか、どう語るか」というビジュアルや言葉選びのクオリティがD2Cブランドの競争力の源泉となるのです。

このような、業界をディスプラクトする企業が勃興することで時代が代わり、ビジネスのルールが変わろうとも、「人が動く」源泉としての「デザイン」の力は健在します。そんなデザインを、これからも大切に育てていこうと、日々精進しています。

というわけで今後ともどうぞよろしくお願いします!

YouTube動画もやってますのでぜひ!

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