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「デザイン思考」と現場のギャップを考える

2018年に経産省と特許庁から発表された、デザイン経営宣言にも重要な考え方として記載されている「デザイン思考」。現場のクリエーターとしては、様々な書籍や記事や講義では頻繁に目と耳にする単語である。

今回、改めてデザイン思考について簡単にまとめてみるとともに、果たして現場でいかほどこの思考が当てはめられ実践されているか、考えてみたいと思います。

デザイン思考の大原則

デザイン思考とは、人口科学や建築業界から誕生した考え方で、問題をデザインで見つけ出し、解決させる思考やプロセスを指します。デザイナーが日常的に使っているこの考え方が、どうやらビジネスにも利用できる、とデビット・M・ケリー(IDEO創設者)が発表し、注目を浴びた。

デザイン思考のプロセスは以下。

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共通認識(共感)を持つ→問題発見・定義する→問題解決のためのアイデアを創造→問題解決のためのプロトタイプ作成→テスト

これを繰り返します。

人間を中心に考え、何度も関係者でブレインストーミングや個別での創造を行います。デザイン思考は、失敗に対する恐れを失くすことができるとケリーは言います。また、箱の外で考えろ!"Think outside box"=型にはまるな、自由に考えろ、人とは違った考え方をしろ、とう言葉も注目されました。

デザイン思考のプロセスは、未来の顧客を想像し、創造的なアイデアを生み出すことができます。これを繰り返すことで、ひらめきが生まれるのです。

ピーター・ドラッガー(経営学者)はマーケティングについて「顧客を十分に理解し、顧客に合った製品やサービスを提供すること」と言っています。これは顧客=ユーザーの欲するもの、無意識に欲するものを嗅ぎ取り、製品やサービスを世に出すことはビジネスにおいてもいえることです。

デザイン思考のデザインという部分は、以前もお話したように狭い意味(色や形、見た目の雰囲気)だけでなく、ユーザーの行動、思考に関わる部分、すなわち広い意味でのデザインでもあることを指します。そのユーザーに影響を与える色や形、情報、ネーミングも含めてデザイン思考と言います。アートと商業デザインが異なるように、デザイナー視点でのデザインではなく、ユーザーを軸にしたデザインを行うことだという認識が必要です。

日本のデザインの現場で「デザイン思考」は入っているのか?

さて、自身のデザインの現場を考えてみます。なかなかデザイン思考を実践しているとは言い難い現状がありますね。

これは1つは組織の問題があると思います。

組織がかなり多くの部、つまり案件内でフェーズごとに役職もわけられているので、僕のいる組織なんかでは

課題を発見して共通認識をもつような部分は戦略フェーズととらえ、営業やストラテジック部隊が主に動く。それが終わるとマーケ部隊やUX部隊が、数字を元に戦術の基盤や枠組みを考え、全体の案件の要件定義に入る。そのあと、UX部隊やいわゆる表現に落とし込むデザイン部隊がアイデアを創造、UIやビジュアルのプロトタイプを制作し提案する。得意先のチェックが完了するとエンジニアが世に出す形に実装して市場投入、ローンチとなる。そのあとは、アナリティクス部隊で数値を検証し、再度全体でPDCAを回すといった具合。

全体の金額管理やクライアントとの折衝、制作進行は営業やプロデューサーやプロマネやディレクターが担当する。では、これらアカウント陣が全体を通して進めているので「デザイン思考」を実践しているかというと、あんまりそうでもない印象である。

何より、ADも含めデザイナーが戦略に関わるケース、そして関係スタッフ全員でワークショップなりブレストなり、意見交換やアイデア創出の時間が圧倒的に少ない。

そして、デザイナーが急に戦略の会議に入ったとて何も発さずに終わるのが関の山である。

つまり、フェーズが切り離された状態が当たり前になり、両者がそれで良いものとして仕事を進めている。急に環境を変えると怖気付いてしまう。

「デザイン思考」を本格的に現場で取り入れていくためには、アカウント陣もクリエイティブ陣も、個々で業務が完結しすぎている印象が強い。

IDEOで実践されているような、1つの案件に1つのチームが発生することはあるが、IDEOのように最初から最後までチーム全員が終始案件にベタ付きになることは稀である。

ここを解決しない限り、いわゆる創造的な解決法は見込めないように思う。広告会社のアイデアといえば、「有名人をキャスティングして認知度をあげよう~」が営業から降りてきて、クリエイティブにはそれをどう表現するかのお題だけまわってくる。デザイナーは作業員になるケースがやっぱりまだまだ多い印象ですね。

チームのあり方を変えるには、それぞれが「領域」を広げていかないといけない。デザイナーは「表現」はもう当たり前のように抑えて、その次のスキルを身につけないといけない

それは、デザイン経営宣言でも書かれているように、

デザイン・ビジネス・テクノロジー

領域を横断できるような人材にならないといけないということ。交渉やお金やマーケやテックやアナリティクスのスキルを身につけないといけないということ。

時代とともに更新されるデザイナー

別に経産省が全て正しいわけではないが、時代の流れが確実に変化した今、デザイナーも確実に変化しなければいけない。

今後、自分はこういった情報発信の場でやはりデザイン中心の話題を提供していくし、その中には当然「小手先」に見える技術も発信していく。しかし、真意は小手先にあるのではなく、最低限を抑えた上でさてデザイナーの価値をどう上げていくか、を考える土台にしたい意図があります。

なので時折こうした「世界的な大きな流れでの、デザイン」の話、身内だけでの小さな範囲での話ではないものもいれていこうと思ったわけです。

そういうわけで今後ともどうぞよろしくお願いします。

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ユウイチローデザインカレッジというチャンネルにて
YouTubeでデザインにまつわるお話をさせてもらってるのでそちらもよろしくお願いします!

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