強い者は弱い者を守り、優しい者は人の痛みに寄り添い、私は感電するほどの喜びを歌いたい

公開から４ヶ月。やっと(今さら)観に行きました。『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』。

昔からアニメをほとんど観ないし漫画も同じくなので(ジブリも付き合いで観に行く程度)、ほんとなら足を運ぶこともない映画だったのかもしれませんが、昨年かなり話題になり、映画も日本の興行収入ランキングでまさかの第一位になるほど勢いのある作品ですから端くれとはいえエンターテイメントの世界に身を置く者としては観ておかねばならんのではないかと思ったのです。

この「観ておかねば」という言葉ですが、大して興味はないが半ば義務的に、というのではありません。その時の流行り＝時代に受け入れられてるいるものに自分がどんな反応をするのか、今まで観てきたいろんなものから形成された自分の中の何と反応するのか、そういった点での興味がありますし、人前に立つ者としてちゃんと時代との接点は見失わずにいたいという気持ちもあります(４ヶ月遅れでよく言うよ)。

そういう意味で言えば、数少ないちゃんと全話観たアニメ作品として『新世紀エヴァンゲリオン』があります。言ってもTV放送から10年近く過ぎてからの後追いですが。旧劇は自分史的映画ランキングではトップ20に入るほど大好きな映画だし、エヴァを観てたから『シン・ゴジラ』をより楽しめた側面は大いにあります。

とはいえ、これだけ数多くのコンテンツが様々なメディアで日々発表される時代ですから、ほとんどの流行は取りこぼしてます。発掘作業の方が楽しいし、忙しいくらい。だから時代との接点を〜とか偉そうなこと言ったってちゃんと接点持てるのは自分のアンテナに引っかかったほんの一握りの作品だけっていうのが残念なところではあります。

前置きが、長ぇ。

で、鬼滅ですよ。昨年、映画になる前にNetflixで前述の理由から一応観たんです。でも生来の続きモノを観るのが苦手な性質と、状況や心情の説明ゼリフのあまりの多さが気になっちゃって５話くらいまでで止まってしまっていました。それでも同世代の友人たちが映画を観て大泣きしたとか、煉獄さんにハマりまくってるとかいう話を聞いて、とりあえず観てみるか、と思い立ったわけです。

めっっっっっちゃくちゃ良かった(泣)。

普段映画でも舞台でもどんなに面白いものでも暗くて静かという環境的に眠くなって寝ちゃうことが多いのですが、一睡もせず、なんなら目を見開いてました。手に汗握るというか身体にも力が入って煉獄さんを応援してた(笑)。

とにかく脚本が良いと思いました。展開はテンポが良くて無駄がないし、キャラクターが絞られてるから分かりやすい。そして黒澤映画とか『スターウォーズ』、あとはジャンプの先輩である『ダイの大冒険』の手法や要素が踏襲されてて、実はそんなに新しいことはしてないから、王道パターンなんだなぁと(決してハッピーエンドな方のではないけれど)。まぁジャンプだからそりゃそうなんですけど。

個人的には煉獄さんのお母さんの言葉が刺さりまくりました。強さ優しさ、人が生まれ持った性質は何のためにあるのか。最近ちょっとしたことでイライラして人を傷つけたりしがちだった自分をとても反省しました。何様だったんだ俺は。だからこそ最後、煉獄さんの目の前にお母さんが現れた時は喉がギューッと締まって涙腺は崩壊。

観賞中これだけ身も心も持ってかれる映画はそうそうあるものではありません。そして終演後の心洗われ、また泣きそうになる感覚…お前完全に持ってかれちゃってんじゃん。

とは言え、アニメ版から感じていた説明ゼリフの多さはやはり気になるところではありました。言わなくてもわかるよ、とか、そこは察さてくれよ、っていう。敵キャラもそんなに事情って言わなきゃいけないものかなぁって。たとえば『ファントム・メナス』に登場するダース・モールというキャラクター。劇中ほとんど喋らないし、当然出自などのパーソナリティも分からない。にもかかわらずシリーズ中での人気もインパクトもすごいですし、情報が少ないからこそファンはいろんな考察や議論をして盛り上がる。

これに関しては日本人どんどん頭悪くなってるというか、想像や考察をしなくなってしまっているから(もちろんそうさせる作品もたくさんある。『PUI PUI モルカー』とか)、オタク受けと一般受けの分断が進んでる、とは断言できないし、何ならずっと前から進んでるのかもしれないけど、なんとなくそんなことは感じました。

結論、観てほんとによかった。感動した。もっかい観たいかも。これが日本の興行収入ランキング１位なの納得だよ。全然オッケー。なんで僕が許可してんのかわかんないですけど。

あと、みんな言ってますが映像すごかったです。一番最初の葉が陽炎で揺れてる？ところから目を奪われました。雪とか水とか森とか、自然なものがこれ実写？？って錯覚するくらい。

以上、アニメを５話までしか観てない上で映画を観て大変感動した人間のアレでした。友人曰く、アニメも漫画も観たらもっと鬼滅を好きになるよ、とのこと。