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私が愛したのは、たった1枚で物語のすべてを語り尽くしてしまう写真。

こんにちは、はじめまして、クリエイティブの会社でCOOをやっているゆういちです。

クリエイティブの会社で働いているので、カメラを構えるどころか、カメラが得意だと思われることがよくあります。実際に写真や映像を撮ることもよくあります。しかし、正直なところ、カメラが苦手です。特に写真を撮ることが苦手です。

写真とは、たとえば1200分の1秒という一瞬で世界を切り取る行為であり、その一瞬で何かを伝える行為です。

幼い頃から文章に慣れ親しみ、その後には映像文法にどっぷりハマった人間としては、その時間はあまりにも短すぎます。

映画であれば2時間、テレビドラマでも30分、ショートムービーでも5分を必要とします。さらに短いものでも、数秒は必要とします。

1秒にも満たない一瞬で世界を切り取り、それを見せた瞬間にすべてを悟らせる。そんな芸当は、私にとっては不可能としかいえないものです。


だからこそ、私は写真を撮る人を尊敬しています。写真という表現行為に対して、恐怖と尊敬が混ざり合った感情を持ってしまうのです。

そんな写真という表現の中でも、特に心震わされるのが、ストーリーのある写真です。映像が何秒もかかって伝えるストーリーを、一瞬で閉じ込めてしまう写真です。

それは、美しい写真かどうかも、技術があるかどうかも問題にはなりません。写真という一瞬が、一瞬を超えているとき、心が揺さぶられます。



なかでも、私史上最も素晴らしい写真を撮る人がいます。その人の写真は、とても静かなのに雄弁、寂しそうなのに希望がある、曖昧なのに具体的、そんな写真です。

百聞は一見に如かず。その人の写真を見て下さい。



どの写真も、物語が始まるのをいまかいまかと待ちわびるような佇まいをしています。


1枚目のタイムズスクェアの写真は、映画のクライマックスにも、オープニングショットにも、そして、エンディングにも見えます。たった1枚の写真が。

写真中央に位置する女性は、どこからやってきたのか、ここからどこへいくのか。この喧騒を目指してきたのか、迷い込んできたのか。孤独なのか、幸福なのか。

あらゆる可能性と物語が、息づいています。


2枚目の雪景色の写真は、誰の視点なのでしょう?この雪の道を歩こうとしている人間のものか、もしくは、寒さに震える野良犬の目線なのか。カメラに映らない存在すら感じさせます。


3枚目の写真は、ニューヨークの美術館、MoMAの様子です。全く異なる目的を持ち合わせた人々が、たまたま居合わせたこの瞬間。

冷たい場の空気を維持しながらも、影になった人々の声が聞こえてきそうなこの写真は、安息の瞬間なのか、嵐の前の静けさなのか。緊張と緩和が同居する不思議な一瞬です。


4枚目の写真は、記憶を頼りに描かれた写真のようにも見え、幸せな夕方にも見えます。何かが合わない感覚と温かみを感じさせる色使いの中に、不安定な安定、幸せな不幸を感じさせます。


このようにどの写真をみても、その写真の前と後が、つまりコンテクストが凝縮されています。映像や文章を書く人間が何秒も何分も何時間もかけてやっとたどり着く境地に、軽やかに跳躍しているのが感じられます。

これらの静かで雄弁な写真を描き出したフォトグラファーが、Azusa Hayashi Komori(アズサ・ハヤシ・コモリ)。


何を隠そう私の妻でもある人です。これを言ってしまうと、パートナーだから褒めていたのね、と勘違いされるかもしれませんが、そうではありません。

この人の写真を見て、自分の映像の未熟さ、不自由さ、弱さを思いしり、それと同時に、この人の表現を見続けたいと思ったのが、今から7年前でした。


それを感じた時に気がつけば、プロポーズをしていました。

当時、私がアメリカで、彼女が日本の遠距離だったにもかかわらず、次にいつ会えるのかわからなかったにもかかわらず、そして、デートを一度もしたことがないにもかかわらず。

彼女にプロポーズしました。それは、この写真に込められた世界に近づきたいと思ったから。こんな表現ができるなんて信じられないと思ったから。

つまり、彼女を愛したからでした。


ここまで言ってしまえば、のろけだと思われるに違いありません。そしてこれは紛れもなくのろけと言われるものだと思います。


ただ、しかし、のろけだろうがなんだろうが、これだけは真実です。

彼女の写真を見た時に、今まで見たどの写真よりも静かで雄弁であると感じたこと。これほどまでに鮮やかにストーリーを語り尽くす方法を見たことがないと。そして、彼女の写真こそが、世界を一瞬で切り取る価値だと。



あなたは、この光の向こうに何を感じますか?私は永遠と一瞬を感じました。相矛盾するこの2つを昇華させる光を。そして、まだまだ世界に希望に満ち満ちていることを。

ここまで読んでいただきありがとうございます。そしてよければ、彼女のインスタをフォローしてください。

ここまで読んでいただきありがとうございます。 この世界のどこかにこうして私の文書を読んでくれている人がいる。それだけで、とても幸せです。 サポートしていただいたお金は、また別の形で素敵な人へのサポートとなるような、そんな素敵なつながりを産んで行きたいです。