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「チェックメイト」というバレエを知っていますか?

今回は「チェックメイト」というバレエについて書いていきます。日本ではあまり上演されない作品のため、知らない人も多いと思います。ちなみに、来月22日(土)&23日(日)に新国立劇場中劇場にて行われる、私が所属するバレエ団の公演で上演する作品のひとつです🩰

振付は二ネット・ド・ヴァロア。英国ロイヤル・バレエ団の礎ともいわれる方です。チェスをモチーフにしていて、”愛"を表す赤色の駒と”死”を表す黒色の駒が対峙する形で進み、最後には”死”が勝利するストーリーです。初演は1937年。当時のヨーロッパでは第二次世界大戦が始まろうとしていた時代です。このような時代背景から、"愛と死の対立”はすなわち、”平和と戦争の対立”ともされています。

個人的になぜか、このバレエから連想してしまうものがあるのですが、それがパブロ・ピカソが描いた「ゲルニカ」です。調べてみたところ、ゲルニカの制作年も同じく1937年でした (同じ時代に描かれた作品だとは思っていたけれど、まさかピッタリ一緒だとは!)。どちらも戦場のリアルな現場を描いている訳ではないのに、観る者にその恐怖や残酷さがしっかりと伝わってきます。

ピカソのキュビズムの代表作ともいわれる「ゲルニカ」ですが、「チェックメイト」にもこのキュビズムの影響を感じます。例えば、舞台背景やチェス盤を表す床、駒のヘッドドレスなどです。舞台美術を手掛けたのは、エドワード・マクナイト・コーファー。アメリカで生まれ育ち、渡仏後その前衛美術に魅了されたという経緯があり、そのセンスがバレエの舞台美術にも表れているのが分かります。互いに作品に触れた時の第一印象みたいなものが似てるな~と感じたのには、こうした表現様式に共通点があるからなのではないかと思います。

実はド・ヴァロアとピカソには、「バレエ・リュス」という共通のルーツがあります。この時代に活躍した芸術家たちは、何らかの形でバレエ・リュスに携わっていたり、関係性があることが多いですよね。ピカソがバレエ・リュスの舞台装置や衣装を手掛けていた時期にド・ヴァロアもまた、バレエ・リュスで活躍していました。彼女自身も、ピカソの芸術的センスの影響を受けたのではないかと想像するとワクワクします♪

いつの時代も世界中の国や地域で争いが絶えず、現在もウクライナとロシアが戦争をしている様子がニュースなどで報道されています。きっと芸術監督は、今のこのような世界情勢をうけて、今回上演する作品に「チェックメイト」を選んだのだと思います。

バレエを知っている人はもちろん、知らない・観たことがない人でも、愛や平和への強いメッセージを感じられる作品です。私も赤色のポーン役として出演する予定です。観に行ってみたいな、と思ってくださった方は是非、Instagramのこちらの投稿にコメントください!


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