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#2 灰付けわかめの歴史と収穫条件

2021.05.31

初めに

こんにちは、朝日町に伝わる文化を取材している、笹島唯(ささ)です!
取材活動を始めた経緯については、この記事を読んでみてください。

今回は、「灰付けわかめ」の歴史と収穫条件についてご紹介します。灰付けわかめとは、採れたてのわかめを藁灰にまぶして、天日干しにしたもの。これは、朝日町宮崎地区に昔から伝わる伝統文化の一つです。

『朝日町誌歴史編』(※1)によると、灰付けわかめは、「明治以来の特殊精製を誇り、名産としての評価を得ている」という記述があることから、朝日町において約150年前から現在まで受け継がれてきた、伝統ある産業と言えます。
ではこの産業は、どのようにして生まれたのでしょうか?

取材には、朝日町漁業協同組合(以下、漁協)さんと、朝日町観光協会の上澤聖子さんにご協力いただき、一部写真は、上澤聖子さんからご提供いただきました。また、情報は取材当時のものです。

※1 参考文献:朝日町(1984)『朝日町誌歴史編』, 朝日町, p.485.


<1章 灰付けわかめが生まれるまで>

灰付けわかめは、冷蔵庫がまだない時代に、わかめを日持ちさせる保存方法の一つとして考えられました。自然人.netコミュニティによると、「灰によってワカメに含まれている酵素の働きを抑え、変質を防ぎ長期間の保存が利くようになる。」(※2)とあり、昔の人達はこの効果を実生活の中で発見していたのです!

宮崎地区は海と山との距離がとても近い、という地理的特徴があり、これを生かして昔からこの地区では、農業と漁業の両方を生業とする半農半漁の生活が営まれていました。畑には豊富な水と平らな土地があることで良い米が、海では岩礁があることでわかめがよく育ちます。秋に米を収穫すると稲藁が余り、それを燃やして灰を作ることができる上に、近くの海でわかめを採ることができます。このような環境があったからこそ、宮崎地区で灰付けわかめが生まれました。

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海岸の上に並べられた灰付けわかめと、すぐ近くに見える山

全盛期は昭和35年ころと言われており、当時は200艘もの船が漁に出ていました。地元の学校が休みになるくらい、地区の人々総出で生産していました。名産品として知られていたこともあって、灰付けわかめ産業は地域の経済を支えていました

しかし時代が流れ、技術の発展によって冷蔵庫が生まれ、文明の繁栄の中で人口が都市部へ流出していくようになりました。その結果、わかめ漁にも稲作にも関わる人が減っていったことで、灰付けわかめに関わる人も同じように減少してしまいました。

※2 参考文献:自然人.netコミュニティ(発行年不明)「灰付けわかめ」,  (https://shizenjin.net/hokuriku_food/local-foods/file116.html, 最終閲覧日:2021年5月26日).


<2章 近年の様子>

漁協としては2015年から、各漁師ごとではなく、組合員で協力して作業をするようになりました。わかめの収穫は男性、その後の作業(※3)は女性や子どもが担当することが多く、その作業が重労働であるため、家族単位で続けていくことが難しくなったことが要因です。

灰付けわかめを生産するにあたって、厳しい気象条件があります(※4)。この条件によって、当日の朝にならないと、その日わかめ漁に出て灰付け作業ができるかは判断できません。したがって、急遽仕事を休みにくいサラリーマンが増えてきた近年の状況では、若い人が作業に参加することが難しく、人手不足に悩んでいるのが現状です。

一昨年までは、1軒の漁師と漁協の2軒で協力し、灰付けわかめつくりを行っていました。昨年は新型コロナウイルスの影響で中止になりましたが、今年は、漁協の1艘のみが漁に出て、三密を避けつつ、行われました。    

※3 詳しい生産方法は、次回の記事で紹介します。
※4 次の章で、条件の詳細をまとめています。


<3章 わかめの収穫時期と条件>

わかめの収穫と、灰付け作業は同日中に行われます。時期としてはGW過ぎの5月中旬で、この頃になるとわかめが肉厚になっています。歯ごたえが特徴の灰付けわかめにとって、最適な状態にまで育っています。

2週間ほど漁を行うことができる期間がある中で、気象条件を満たして漁に出ることができる日は、なんとたった2日ほどしかありません!それほど厳しい条件なので、今年は5月10日(月)に漁が解禁となりましたが、漁に出て作業を行ったのは14日(金)と15日(土)の2日間のみでした。

では、その条件とは何でしょうか?

・晴天(わかめを乾燥させるため)
・無風(風が強いと、天日干ししたわかめが飛んでいってしまう)
・海が穏やか(船出ができる)
・底が透き通って見える(海中に生えているわかめを目視できる)

先ほど紹介したように、当日の朝4~5時ごろに、漁へ出られるかどうかが決まります。漁師さんはわかめ漁の時期になると、毎朝海まで出かけて、その日の様子を確認します。昔は、天気予報がなく天候を予想できなかったため、現在よりも判断することが大変だったと考えられます。       この厳しい条件は、灰付けわかめを大量生産できない要因の一つともなっているのです!

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わかめ採り当日の宮崎海岸/ヒスイ海岸


終わりに

今回は、灰付けわかめの歴史と収穫について紹介しましたが、いかがだったでしょうか?長い歴史を持ち、人手不足や厳しい条件がありつつも、現在まで受け継がれてきたことがよくわかりますね!

少しでも、灰付けわかめについて、興味を持っていただけたら嬉しいです! 気に入っていただけたら、記事へのいいね!とシェアもお願いします!次回は、わかめの収穫から出荷までの工程を紹介します!

ご協力いただいた方々
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朝日町漁業協同組合
〒939-0703 富山県下新川郡朝日町宮崎1353
TEL: 0765-82-0034
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一般社団法人朝日町観光協会
〒939-0744 富山県下新川郡朝日町平柳688
TEL: 0765-83-2780 FAX: 0765-83-2781
HP: https://www.asahi-tabi.com/
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