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十角館の殺人〈新装改訂版〉/綾辻行人


『彼は、彼らを―彼らの全員を、「復讐」の名の下に裁こうとしている。』

1987年、ミステリの新本格ムーブメントの嚆矢となった綾辻行人の作家デビュー作。終盤で明かされる一文に、誰もが驚愕する。多くの読者に衝撃を与え続けた名作。

舞台設定

十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の7人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。彼らは「復讐」の名の下に裁かれていく。半年前の事件との関係は、そして犯人の思惑とは―。

想像を超える展開

この作品の面白さはやはり、驚愕の結末にある。はっきり言えば、犯人を探すこと自体はそう難しくはない。しかし、それだけに留まらない驚きが待ち受けている。状況から、犯人がわかったという人も少なくないのではないだろうか。しかし、その犯人が――とは思わない。実際に読んで結末を確かめて見てほしい。

推理する知的な楽しさ

登場人物の一人はこう話す。「僕にとって推理小説(ミステリ)とは、あくまでも知的な遊びの一つなんだ。小説という形式を使った読者対名探偵の、あるいは読者対作者の、刺激的な論理の遊び。」
冒頭で、このように語られるものだから、読者としては何としても犯人を突き止めてやろうという思いに駆られる。そして、既述したようにただ犯人を突き止める事自体は論理的に可能だ。(ただ、それだけでは足りないのだが)「犯人は誰なのか」「トリックはなにか」考察する楽しみを与えてくれる。

魅力的な登場人物

主な登場人物はミステリ研の7人。彼らがまた非常に個性的で、作品を彩りを与えてくれる。一人一人の個性がはっきりしていて、こちらとしては「こいつか?」と疑いながら読むものだから、彼らの些細な言動まで印象深く残っていく。個人的にはもっと掘り下げてほしい部分もあったが作品に十分な深みをもたらす。

終わりに

以前から読みたいとずっと思いながらもなかなか手を伸ばさなかったが、つい読み始めると一度に読み終えてしまった。さまざまな登場人物の思惑が入り乱れてどのような結末を迎えるか気になるし、結末はその期待を超えてくる驚きがある。書評を書こうにも、どれもネタバレになりそうでうまくまとめられなかったが、まだ未読の方はぜひ手にとって、あの驚きを味わってほしい。


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