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marebito通信、というよりも僕の私信forあなた

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好きなもの

「好きなものが何か?」なんていうのは恋人同士であれば付き合った初期に軽い気持ちで話すような内容だが、それは時とともに変異し、しかし変異したことにお互い気づけずすれ違ってしまうことなんかもザラである。
別に倦怠期のカップルにいちゃもんをつけたいわけではなく、僕らは全て言葉にしなくては何も残せないのだ、という面倒くささを確認したいのだ。
言葉にしたとしても言った言ってないの水掛け論を繰り返すことも多く

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第弍拾五話、終わる世界

第弍拾五話、終わる世界

屋上のある部屋に引っ越してよかった。
去年改修工事が行われて、地面が水色になった。うっすらと空と混じるこの場所はなんだか特別な場所に思える。
なんとなく、ぼーっとしたくなって外に出たいけど不要不急の外出が制限されてる今、誰にも会わない外出場所に最適な気がする。
さっきまで、もう少し高いところにあった太陽がもうあの工事現場の頭のところまで来ている。
おそらくもう少しで、暗くなるんだろうなぁ。

僕は

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そんな日もあった

そんな日もあった

スーサイドもジェノサイドも、結局僕からしてみればほぼ同じものなわけで、主観だの客観だのの差にすぎないのだから。

僕が死んで僕が殺して、僕が殺されて誰かが死んで。

暑い日の事でしたね、なんてクーラーの効いた部屋の中でそれなりの誰かと話をして。

なんだかフラッとやってしまったことを、他人事のようにおもいだすのが人生なのだろう。

雨のち晴れのち曇り曇り曇りくらいのバランスで、明日

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うごめく

うごめく

なんだか胃袋の奥で、ザラザラとし黒いものが蠢いている気がする。
と、書いて「蠢く」という字は春に虫二つなのだなぁ、と再認識した。
言われて見ると春というのはなんだか得体の知れない虫のようなものが、知らず知らず口の中から入り込んでなにかしら悪さでもしているような、妙な浮き立ち方をする。

恋とかそういったものが、僕自身が僕の意志であると感じているもの以外に突き動かされてると感じるような。
いつか

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プツッ

プツッ

何かがプツッと途切れたような感覚がした。
いつものように朝から洗濯機を回して、風呂に入る支度をしている。
とてもいい天気だけれど「ああ、またこれか」という気持ちはどうにも拭えない。
恋愛沙汰において、この感じは付き物かもしれないがそれにしても脳と頭蓋骨の隙間に薄暗い塊を詰め込まれたようなこの感覚はどうしたって好きになれない。わかり合えない部分を「だからどうした!」と思う力が弱まることは、即ち愛情の

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部屋にて

水色の中、空っぽの西武新宿線
風に揺れる誰かのベランダの洗濯物
遠くに響いてた子供の声も無くなった
夕焼け小焼けのチャイムはサイレンに変わった

暮れてしまった街の中夜空には満月 
声の消えた環七を歩く理由もなかった
春の嵐の匂い嗅ぎすぎて頭は狂ってしまった
今日はうちへ帰ろう

自動販売機で買ったジュース
飲みきれなくて捨てた
昨日半分こした約束
忘れたくないのに守れないから捨てた

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音楽やってます

「普段何してるんですか?」と初対面の人に聞かれたら「出版社で編集の仕事をしています。あと、音楽を少しやってます」なんて答えている。
音楽をやっているって一体なんなんだろう。
中学生の頃、なんとなくギターを始めた。実家に母親のクラシックギターがあったから、ふと触ってみたのが最初だ。
しかし、そのギターではゆずやGLAYは弾けなかったからすぐに飽きた。
その後アコースティックギターを買ってもらった。そ

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自殺

殺したいほど憎い人がいて
殺したいほど好きな人がいて
結局僕は僕を殺して
あははと笑っていたんです

悲しくなるほど会いたくない人がいて
悲しくなるほど会いたい人がいて
結局僕は悲しいまんま
一人ぼっちで笑っているんです

明日の僕の話を
明日の君の話を
できない僕が僕は嫌いで
結局僕は僕を殺すんです

吐き気がするほど美しい才能を
吐き気がするほど美しい歌を
吐き気がするほど憧れた人

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テレワーク

テレワークという、非常に都合の良い口実ができてしまったので、在宅で仕事をすることにした。することにした、とは言っても明日からだ。
今僕はタクシーに乗っている。剥き出しの会社の作業用PCを隣に載せて。
僕の家は4年前に彼女と別れだ後、一人で暮らすために選んだ部屋だ。
駅から徒歩1分、ワンフロア二部屋のその部屋に住んでもう4年目になる。
一人で暮らすと決めた部屋だったけれど、2年目にはすでに女の子と住

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天玉そばが好き

天玉そばが好き

「好きな食べ物何!?」
僕の恋人は話の逸らし方がひどく雑で、「好きな色は!?」だの「好きな芸能人は!?」だのがちょくちょく飛び出す。
話がめんどくさくなったのか、話したくないことがあるのかわからないが、僕はとりあえずできるだけ真面目に答える。
真面目に答えないと拳が飛んでくる、なんてことはないことはないがそれでも一応常に全力投球で返答しなければ、いつかくる相手の全力投球に応えられらないかもしれない

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歩いている

歩いている

環七を歩いている。遠くて近い場所に住む人に、どうしても会わなければならないと思って歩いている。
ミニストップで買ったレモンサワーとピザまんを持って、ノタノタと歩いている。
春を通り越したんじゃないか、と錯覚するもたついた空気の中で、ヘッドフォンをして歩いている。
変わらない信号に苛立つこともなく、そのうち青くなるだろう、その時進めばいいやと歩いている。
そういえば自分からあの人に会いに行くのは初め

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誕生日

誕生日

三十五年、経ちました。僕が産まれてからの話です。別に何してたわけでもないけれど、気づいたら経ってました、三十五年。
目指したものがあったわけでも、理想の自分がいたわけでもなく、ただただ時間が流れて、気づけば三十五年。
別にその数字に意味があるわけではないけれど、知人で亡くなった人も増えてきました。
幼い頃見ていた芸能人やミュージシャンは老人になって、自分より年下の人間が増えました。
多分、多分だけ

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異人(marebito)です。

異人(marebito)です。

なんとなく死んでもいいなぁという日がある。死にたい、とまでは思わないけれど。
少し感覚が敏感になってるのかもしれない。それは降らなかった大雪のせいでも、乗り過ごしてしまった満員電車のせいでもなく、雪が降らなかった事が悲しいからで、満員電車に乗る人の顔の一つになるのが嫌だったからだろう。
愛すべき日常と、愛すべき非日常の繰り返しを望んでいるのに、当たり前のようにその期待は裏切られて、裏切られたと思う

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運命について思うこと

運命について思うこと

オカルトの話というとすぐにそういった情報に詳しい先輩や地元の老人が出て来て「あーあ、そのパターンね」って思うことがあるよね。
でもあれって、実はすごく理にかなってるんだよ。だって、そういう人がいなかったら誰も生還できないかもしれないんだから。
そうなっちゃうと語り継がれるわけもない。無事生還した人がさらにその対処法を学んで後世に伝えていくんだよ。
だから、ご都合主義っていうのはこと物語を結果から見

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