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うごめく

なんだか胃袋の奥で、ザラザラとし黒いものが蠢いている気がする。
と、書いて「蠢く」という字は春に虫二つなのだなぁ、と再認識した。
言われて見ると春というのはなんだか得体の知れない虫のようなものが、知らず知らず口の中から入り込んでなにかしら悪さでもしているような、妙な浮き立ち方をする。

恋とかそういったものが、僕自身が僕の意志であると感じているもの以外に突き動かされてると感じるような。
いつから続いているのかわからない、僕にとって先祖にあたるその血脈が僕を操作しているような感覚。
そこにある意思なんていうものは本当に意味などなく、僕自身がその血脈の一部として存在しているような感覚。
流れの中にある、その流れの一部である僕は意味なんてないのかもしれない。

中野区にある僕のアパートは、なかなかに日当たりがよくて、晴れた日にはよく日の光が入ってくる。掃除機をかけることをあまりしないせいか、少し埃っぽい部屋だ。日の光に照らされた埃の粒を眺めながら、僕の意味なんてのはこの埃の一粒と変わらないのかもしれないなぁ、などと思う。

しかし、春の虫である。
その春の虫にやられ気味のぼくはなんだか毎日落ち着かない。腹の底で蠢く得体の知れないものは、僕の意味のない、定められた日々の枝葉を少しだけ揺らして、僕は何かを期待してしまう。

期待は、何を生むんだろうか。

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