好きなもの

「好きなものが何か?」なんていうのは恋人同士であれば付き合った初期に軽い気持ちで話すような内容だが、それは時とともに変異し、しかし変異したことにお互い気づけずすれ違ってしまうことなんかもザラである。
別に倦怠期のカップルにいちゃもんをつけたいわけではなく、僕らは全て言葉にしなくては何も残せないのだ、という面倒くささを確認したいのだ。
言葉にしたとしても言った言ってないの水掛け論を繰り返すことも多く、人と人がわかり合うことの難しさを些細なことで実感したりするものである。
ふと「疲れたなぁ」なんて口に出せばそれは僕自身の仕事や人間関係の疲れからは離れて、最寄りの人間に対して向けられた言葉になってしまう。
そう捉えられるのは当然本意ではなく、何かを変えて欲しいわけでも喧嘩をしたいわけでもないただの言葉が一番大事な人を不快にしてしまう。

そんなことはどうでもよかった。
好きなものの話だ。僕は好きなものが大してない。ないわけではないが、ひどく衝動的な好意や興味しか持たないために何かを積み上げてこられた試しがない。小さい頃に好きだったはずのロボットや電車、サッカーや飛行機なんてものはすでに遠い記憶の片隅でモノクロというよりもほぼ白に近い状態で放置されている。
続けている音楽だって、ギターは一向に上手くならないし他の楽器は弾けないまま。歌だって何度かボイトレに行ったものの効果を得る前に行かなくなった。音楽理論なんて本を1ページ読んだだけで寝てしまう。

だから、僕は誰かに何かを好きだと伝える事がとても苦手だ。好きな理由も、それをその人に伝える理由も明確なものを持ち合わせていないからだ。そんな中で自信持って人に勧められるのは自分自身の曲くらいなものだ。
僕の曲は僕を離れ、あなたの元に届く自信がある。そして、そんな僕の現状唯一決まっているライブが12/16に代々木ザーザズーで行われる。ラクルイノヨルニの寺さんが企画をしてくれた。
出演は

ラクルイノヨルニ
それでも世界が続くなら
marebito

きっと、あなたの「好きなもの」の一つになれる日だと思う。僕自身、きっとその日のことを好きになるだろう。
楽しみに待とう。

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