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第弍拾五話、終わる世界

屋上のある部屋に引っ越してよかった。
去年改修工事が行われて、地面が水色になった。うっすらと空と混じるこの場所はなんだか特別な場所に思える。
なんとなく、ぼーっとしたくなって外に出たいけど不要不急の外出が制限されてる今、誰にも会わない外出場所に最適な気がする。
さっきまで、もう少し高いところにあった太陽がもうあの工事現場の頭のところまで来ている。
おそらくもう少しで、暗くなるんだろうなぁ。

僕は僕の彼女の友達が嫌いだ。あの人たちが自分たちの足を引っぱり合いながら「自分たちなんてこんなもん」みたいな顔でヘラヘラしているのが嫌いだ。十何年一緒にいるかなんで、どうでもいい。僕の彼女をダメにする要因である、彼女の友達が嫌いだ。でも、それがなくてはダメと言われた僕は何も言えなくなってしまう。腐った身体なら生きるために切り落とせばいいと思うけれど、身体を無くすことが怖いのはわかる。でもそれは君の身体ではない。

何があったわけではなく、幸せなんだけれどまだ僕は何も知らない気がしてしまう。
知らないまま終わってしまう気もするし、知ってもらえないまま終わってしまうような気もする。
僕が今見ている、このぼんやりとした際の世界を君にも見せたいけれど、僕の視界は君の視界ではないからそれがひどく難しい。
終わっていく世界の中で、僕は一生抗うことなどできないままなんだと思う。

抗うことはできなくとも、終わる場所や終わる時の自分は自分で決めたい。
好きな服を着て好きなブーツを履いて。
好きな音楽を聴きながら好きなタバコを吸って、「ああ、終わるなぁ」と思いながら夕陽を浴びている。もうなんだかそれだけでいいような気持ちにすらなるんだけど、本当かな。

今更だけど、エヴァンゲリオンは関係ない。ごめん。

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