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毎日超短話673「海のピ」#毎週ショートショートnote

「ねえねえ、海のピなんだからさあ、海に行かない?」
「えー、海のピって言ったってさ、ここから海まで何時間かかると思ってるの?」
「いいじゃん、旅行だと思えば〜」
「旅行だなんて、母のピが許してくれないよ」
「え、別に恋人同士でもないのに」
「恋人に見られるんだよ、異性っていうだけで。うちの母のピは、そういうタイプなんだよ」
「そうなのかー、うちなんて、母のピ、父のピ、猫のピすらも干渉しないけどなあ。こんな物騒な世の中だっていうのに、猫のピの夜のパトロールために、朝になるまで玄関開けっ放しにしてるんだよ、で、朝になったら鍵閉めるの。逆じゃない?」
「それはすごいね」
「で、その猫のピは、たまに魚のピとかを咥えてくるんだよ、お礼に、みたいな顔でさ。でも夏はやっぱり海のピだよね〜」
「まあね、じゃあ、盗んだピで海に行こうか」
「急に反抗ピきたね」
「自分のピくらい、自分でね」

彼らはさっきから、ピ、ピ、ピ、とばかり言っている。そういう時期ってあったなあ。としみじみ、わたしは「海のピ」を眺めている。



気まぐれに、毎週ショートショートnoteに参加させて頂きました。ありがとうございました〜!

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