毎日超短話294「夏の扉」
恋人と別れた友だちを慰める会を、そろそろお開きにしたい。友だちがトイレに行ってるあいだに会計をすませてしまおうかと考えるが、次のお店に誘われるだけかと思い直しているところ。うーん、とカシスオレンジを飲んでいると、友だちが戻ってきた。
あれ? 服が違う。髪型も違う。メイクも違う。「帰ろうか?」と爽やかに言うので、呆気にとられる。
「う、うん、わたしもトイレ」
と、トイレに向かう。
ドアに太陽と海と花火のマーク。
こっちに入ったのね、たぶん。
夏の扉を開けようか、わたしは迷う。
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