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毎日超短話322「書く時間」 #シロクマ文芸部

「書く時間がなかったから、来た」

手紙を紙ヒコーキにして、学校の屋上から投げたのは、ついさっき。どこにでもいけと思っていたので、手紙の行方は追わなかった。その手紙を彼は拾ったのだろう。紙ヒコーキを手に持っている。

「本気にする人、いると思わなかった」

とわたしは見知らぬ彼に言う。律儀に<屋上にいます>とは書いてみたのだけど。

「いや、だって、<屋上にいます、お返事ください>って書いてあったら、自殺とかするんじゃないかと思うでしょ、普通」

「そうなの? 暇だっただけだよ」

と言うと見知らぬ彼は、なんだよ〜と、心から安心したような顔をした。なんか、ピュアだな。そういうの、忘れかけてたな。

「じゃあ、返事書くから、ここにいろよ?」

<いいよ>と書いた紙を紙ヒコーキにして、わたしは彼に投げた。




シロクマ文芸部さんへの投稿です。
今週もありがとうございました!

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