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毎日超短話631「傘」

「相合い傘用」と書かれた置き傘が、下駄箱に置いてある。ふたりがすっぽり傘に入って余るくらいの大きな傘だ。彼女が傘を忘れたので、それで帰ろうかと、ぼくは聞いた。

「傘、持ってるんでしょ?」
「うん、でも、折りたたみだし」
「ちょうどよかった」

何がちょうどいいのかわからなかったけれど、折りたたみ傘を相合い傘にすると、小さいので、ぼくの半分は見事に濡れた。でも、いつもよりずっと近づいている。それがちょうどいいのなら、よかった。



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