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amazarashi心をエグるオススメ10選

「一番好きなアーティストは?」と聞かれたら、「ティ」にかぶせるスピードでamazarashiと即答する。

ドン底のてっぺんで希望に中指立てるような歌詞と、暗闇を根こそぎ揺さぶり共鳴し合うような歌声。彼の言う通り「生きることに真面目すぎる」その生き様は、現実のフリをした絶望に真正面からぶち当たって相打ち。「正しさなんていらない」と無様に叫んで戦う姿に、自分を重ねながらいつも応援している。

そんな僕が人に薦めるamazarashiの楽曲を10曲に厳選して紹介していく。

少年少女

好きなアーティストを紹介する時、最初に聴いてもらう曲というのはとても緊張するし慎重にもなるものだ。その点、この曲はちょっとヘビー過ぎるかもしれない。だがそれを一番手に送り出し、あなたの後頭部をぶん殴る。重い過去を振り返るセンチメンタルなストーリーと、絶望の淵を四つん這いで這い回るような救いのない現実の呈示。初期amazarashiの世界観を味わうには絶好の楽曲だと思う。

今まさにヒットを放った 四番バッターのあいつは
一年後の冬に 飲酒運転で事故って死んだ
その時 誰もがあまりの空っぽに立ち尽くしていた
母さんが汚れたバットを抱きながら泣き叫んでいた

夜の街を彷徨いながら 昔話に夢中になってた
そんな事もあったねと 彼女は笑いながら泣いた
それでも それでも 頑張れなんて言えなかった
さよなら さよなら せめて笑いながら手を振った

そうだ 僕も君ももう一度新しく生まれ変わるよ
傷ついて笑うのは 金輪際もうやめにしよう
凍える夜に一人だから 僕らは間違ったこともやった
心無い人が多すぎて 僕らは無駄に強くなった
それでも それでも 間違いじゃないと信じたいな
さよなら さよなら 強がりは夜の闇に溶けた

僕らは現実に打ちのめされすぎて、無駄に強くなったのだと知った。

つじつま合わせに生まれた僕等

こちらも初期の曲だが、2017年に一篇の詩を連ねて再リリースされた。思い入れがあるのだろう。にしてもタイトルが残酷すぎる。そしてAメロからAサビまでを修飾語の積み重ねで持っていく歌詞のストーリー構成がぶっ飛んでいる。本曲に限らず、朗読に抑揚をつけて感情を込めたら歌になってしまったような成り立ちになっている。

雨水飲んで生き延びた詩人が 祖国に帰って歌った詩
それを口ずさんだ子供達が 前線に駆り出される頃
頭を吹き飛ばされた少女が 誰にも知られず土に還る
そこに育った大きな木が 切り倒されて街が出来て
黒い煙が空に昇る頃 汚れた顔で僕等生まれた

高層ビルに磔の 価値観は血の涙を流す
消費が美徳の人間が こぞって石を投げつけるから

誰もが転がる石なのに 皆が特別だと思うから
選ばれなかった少年は ナイフを握り締めて立ってた
匿名を決め込む駅前の 雑踏が真っ赤に染まったのは
夕焼け空が綺麗だから
つじつま合わせに生まれた僕等

雨男

歌詞内容は相変わらず希望もないのだけれど、この頃の楽曲から徐々に明るさが灯り始めたように思う。リスナーに確実に楽曲が届いている手応えが生まれ、俺はこう生きてるよ、と姿勢を通して何かメッセージを発したい。そんな心境の変化があったのかもしれないと知るように思う。冒頭サビの繰り返しが、雨の街に響く残響と余韻に似ている。

優しくされたら胸が震えた
それだけの為に死んでもいいや
本気で思ってしまった 笑ってよ 笑ってくれよ

友達の約束を守らなきゃ
それだけが僕の死ねない理由
本気で思ってしまった 笑ってよ 笑ってくれよ

「やまない雨はない」「明けない夜はない」
とか言って明日に希望を託すのはやめた
土砂降りの雨の中 ずぶ濡れで走っていけるか?
今日も土砂降り

しらふ

わいの歌は、わざわざ曲にする必要はないのかもしれない。いつかのインタビューで語っていたように、シングルカットにもアルバムにもたびたび詩の朗読に似た楽曲が含まれる。その中でもこの「しらふ」は、群を抜いたエネルギーを発している。地獄のような実体験(としか思えない物語)から写しとった景色。いや刻まれた光景。禍々しい感情の渦に引き込まれていく。

こんなはずじゃなかった 頭で繰り返し
これで何百回目かの人生の振り出し
もう無理かもね 祈る気力もない流星
あの日期待した僕の才能、下方修正

昨日出来たはずの世紀の名曲は
掃いて捨てる程ある駄作にも埋もれる駄作だ
埃だらけの作業服 冷たい視線 山手線
特に原宿より南は痛てえ

事務所前 チューハイで乾杯の晴天
古株の面々 まるで現代の蟹工船
妥協でされるがままの搾取 汗を酒で潤す
さながらヨイトマケの唄か山谷ブルース
夢見がちな馬鹿と ギリギリの奴らが集い
気がついたら僕もそんな一派の一人
泥酔にまかせて現実をずらかった
夢も消えちゃった
「今日の仕事も辛かった」

「自分以外皆死ね」ってのは「もう死にてえ」
ってのと同義だ 悪いのは僕か世界か
千鳥足じゃふるさとに吹く風だって冷てえ
こんなんじゃ世間だっていざって時にはつれねえ
震えて朝焼け 外套の襟を立て
勇んで出てったはずのふるさとにまた立って
もうここには居られねえ 自暴自棄な足取りで
分かったもう出てくよ 僕はすっかりしらふで

タクシードライバー

amazarashiにしては相当ノリノリな曲のはずで、ライブで聴くと身体が自然と揺れる(のは大抵僕だけだったりする)。歌詞内容は相変わらず哲学的だが、サビのアップテンポな畳み掛けが心地よい。常闇を疾走していく。

車の牽引ロープを買った伏し目がちな青年
自宅の鴨居にぶら下げて首を括る予定
地方都市と呼ぶのもはばかられる様な町で
地元の友人と未だつるんで たまには呑んで
息苦しさを感じながらも幸福だとうそぶいて
青い青空が青すぎてもはや黒で

優先席前に立ち尽くす妊婦がいたので
腹は立ったが結局なんにも言えなくて
サラリーマンが性的倒錯を
スマホの画面でまき散らして
世界の気まずさがこの車両に凝固してる

流れる都市の景色があまりにもきらびやかで
相対的に僕らの幸福は萎縮して
汗かいて一粒の喜びに明け暮れて
そのくせ帰りの道筋だって人任せ

将来も未来も視界不良の道半ばで
けど 不安に人生を明け渡せる訳はねえ
この長いトンネルは一体いつ抜けるんですかね?
どうぞ行ける所まで行ってくれて構わねえ

エンディングテーマ

どうしたらこんな歌詞が書けるのだろう。どの楽曲を聴いても思うのだが、ボーカルはこの曲をつくるにあたって実際に死んでみたのかもしれない。人が死の間際に垣間見る深淵に手が届いている。そんな景色が眼前に広っては、走馬灯のように散っていく。

こんなに空が青いのは ちょっと勿体ないな
少し曇ってるくらいの方が丁度いいよな
真っ白な病室の 窓の向こうでは
そろそろ桜も咲くんだろうけどな
満たされていたいって いつも思うけれど
満たされていないからこその願う力

失う事に慣れたりしなかった
最後まで僕は悲しい人間でした
だけどそれと引き換えに 僕は願うのです
生きて 生きて 生きていたいよ

偉そうな事を言ったりしてごめんな
本当に僕が言いたい事は つまり
僕の中で生きている 僕が愛したもの達みたいに
あなたの中で生きていたいよ

失い続ける事で 何かに必死になれる力が宿るのなら
満たされていないってのは 幸せなのかな
だとしたら 今の僕はきっと幸せなんだな
なのに 心が痛いよ 涙が止まらないよ

あなたが死んだら 流れ出すエンドロール
僕はきっと 脇役だろうな
少し寂しいけれどきっと それでいいんだ
あなたが幸せだった証拠だから

ひろ

「amazarashiで好きな曲を3つだけ挙げろ」と言われたら、頭を散々掻きむしったあと、今から紹介する3曲を挙げる。1曲目の「ひろ」はamazarashi結成前にバンドを組んでいた友人の名前だと、どこかで見た記憶がある。本人の想像を遥かに超えた現実を生きることになった彼から、あの日の友人に宛てた手紙のような歌。ライブで一度だけ聴いたとき、僕ら観客に向けては歌っていなかったように感じた。それでいいし、それがいい。Aメロからの転調、そしてAサビと三段構えのメロディー構成が美しい。

あの日と同じ気持ちでいるかっていうと
そうとは言い切れない今の僕で
つまりさお前に叱って欲しいんだよ
どんな暗闇でも 照らすような強い言葉
ずっと探して歩いて ここまで来ちゃったよ

もう無理だって言うな 諦めたって言うな
そんな事 僕が許さねえよ 
他に進むべき道なんてない僕らにはさ
お似合いの自分自身を生きなきゃな 

どんなに手を伸ばしても届かないと思ってた
夢のしっぽに触れたけど
今更迷ってしまうのは 僕の弱さか
日の暮れた帰り道 途方も無い空っぽに
襲われて立ちすくむ 都会の寂寞に

今年も僕は年を取って お前は永遠に19歳で
くだらない大人になってしまうのが
悔しいんだよ 悔しいんだよ
なぁひろ 僕は今日も失敗しちゃってさ
「すいません、すいません」なんて頭を下げて
「今に見てろ」って愛想笑いで 
心の中「今に見てろ」って
なぁこんな風に かっこ悪い大人になってしまったよ
だらしのない人間になってしまったよ
お前が見たら絶対 絶対 許さないだろう? 
だから僕はこんな歌を歌わなくちゃいけないんだよ

ガキみたいって言われた 無謀だって言われた
それなら僕も捨てたもんじゃないよな
誰も歩かない道を選んだ僕らだから
人の言う事に耳を貸す暇はないよな

終わりで始まり

ベスト3の2番手「終わりで始まり」は、amazarashiの楽曲の中でもっとも強がらず、かといって弱がらず、等身大のまなざしで前を見据えた歌だと思うのは「いつもの帰り道ふと 見上げたいつもの夜空 / なぜだか あの頃とは違って見えたんだ」という歌い出しのせいだろう。いつかのインタビューで本人も「自分がとてもいい状態の時にできた歌です」と語っていた。人生と戦ってきた人。世界と葛藤してきた人。真剣に生きてきたすべての人への応援歌だと思う。

いつか僕らが離れ離れになる
その時だって笑っていたい
塞ぎ込んだ過去も正しかったと
言い張るために笑っていたい

結局空っぽのままのこの手を
僕らは大きく振りあって
答えさえ見つけられなかった目に
涙を溜めてさよならして

この世界はそれほど 綺麗なもんじゃないけどさ
そんなに急いで出て行く事は無いじゃないか

裏切られた事に胸をはるんだ
信じようとした証拠なんだ

この先何があったって僕らは
振り向かずに走って生きたい
つまずいた昨日も助走だったと
言い張るため走って生きたい
それだけで僕等の笑えない思い出も
ただの笑い話になるんだ

あの時ついに崩れ落ちた膝で
暗闇の中駆け抜けて
あの時砂を握った掌で
確かな物を掴みたくて

日々が過ぎて 年が過ぎて 大切な人達が過ぎて
急がなくちゃ 急がなくちゃ
なんだか焦って つまずいて
もう駄目だ 動けねぇよ
うずくまってても時は過ぎて
考えて 考えて やっと僕は僕を肯定して
立ち上がって 走り出して
その時見上げたいつもの空
あの頃とは違って見えたんだ
あの日の未来を生きてるんだ
全てを無駄にしたくないよ 間違いなんて無かったよ
今の僕を支えてるのは あの日挫けてしまった僕だ

「ありがとう」とか「愛しています」とか
分からないけど歌っていたい
信じてくれたあなたは正しかったと
言い張る為に歌っていたい
それだけだ 僕の背中を押すのは
あなたが喜んでくれる顔
あの時伸ばし続けたこの腕で
大きくギターかき鳴らして
あの時何も言えなかった口で
下手くそな歌を叫んで
いつだってここがスタートラインだよ
僕らの終わりで始まり

未来になれなかったあの夜に

最新曲で、自身もファンと公言する横浜流星さんの出演で話題となった楽曲がベスト3最後の1曲。ここまで到達した方は、紹介してきた曲をもちろん全て聴いていると思うので、最高のメッセージを受け取る準備ができている。自分には、これしかできなかったんだ。上手に世の中を渡り歩いてチヤホヤされる人々を脇目に、無様に駆け抜けてきたamazarashiだから届けられるメッセージがある。生き様、という圧倒的オリジナリティの強度をまざまざと思い知る一曲。

名誉ある潔い撤退より 泥にまみれ無様な前進を
尻尾を振る称賛の歌より 革命の最中響く怒号を

まさかお前、生き別れたはずの 
青臭い夢か?恐れ知らずの
酒のつまみの思い出話と
成り下がるには眩しすぎたよ

恨み辛みや妬み嫉みの
グラフキューブで心根を塗った
それでも尚塗りつぶせなかった
余白の部分が己と知った
今更弱さ武器にはしないよ
それが僕らがやってきたことの
正しさの証明と知っている
今この僕があの日の答えだ

見える人にだけ見える光だ
陰こそ唯一光の理解者
旅立ちと言えば聞こえはいいが
全部投げ出して逃げ出したんだ
孤独な夜の断崖に立って
飛び降りる理由あと一つだけ
そんな夜達に「くそくらえ」って
ただ誰かに叫んで欲しかった
未来になれなかった あの夜に

夢も理想も愛する人も
信じることも諦めたけど
ただ一つだけ言えること僕は
僕に問うこと諦めなかった

醜い君が罵られたなら
醜いままで恨みを晴らして
足りない君が馬鹿にされたなら
足りないままで幸福になって
孤独な奴らが夜の淵で
もがき苦しみ明日も諦めて
そんな夜達に「ざまあみろ」って
今こそ僕が歌ってやるんだ

闇の中~ゆきてかへらぬ~

おまけにして隠れた最大の名曲。まだ「あまざらし」という平仮名名義で活動していた頃の楽曲。絶版になっているのでyoutube音源しか見当たらない。まだ売れるずっと前の、ヒリついた感受性むき出しの歌詞とドスの効いた歌声が胸に刺さる。

鉄柵に張り付いた 一昨日の新聞に
下世話なアジテーションと パパとママの笑顔

アパートのベランダでは 下着泥棒の男
資本主義賛美的な パンティーを盗む
僕はといえば今夜 何かしでかしたくて
発禁になったLPと ナイフをリュックにしまう

明日もし晴れたら キャッチボールでもしようぜ
情緒不安定なカーブ 受け止めて

公園のゴミ箱に 入りそこなった空き缶みたいに
ほら見ろよ あの日の叶わなかった夢が転がってる

日々はいつも過ぎ去って 置いてきぼりの僕等
最終が行ってしまった ホームで夜明けを待つ
卑怯な僕等だから 被害者みたいに泣いて
言い訳みたいな歌が 海に還るまで

以上、僕からお送りするamazarashiオススメ10選でした。異論は認めます。真剣に生きるって、かっこいい。

P.S. 僕のブログはこの記事のアクセスが圧倒的に多い。みなさんと友達になりたいです。2023年現在の僕にとってのオススメはまた変わるのだけれど、トップ10はあえて更新せず、他のオススメも曲名だけ並べておきます。

*ロングホープ・フィリア
*ロストボーイズ
*かつて焼け落ちた町
*1.0
*命にふさわしい
*美しき思い出
*無題
*僕が死のうと思ったのは
*たられば
*さくら


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