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うさぎのほっぺはくまのみみ

うさぎのどんきちには、みみが4つある。
上にピンっと伸びたみみと、もうひとつは
ほっぺにまあるいくまのみみがついている。

このお話は
ほっぺがくまのみみになった
うさぎのどんきちのお話。

どんきちが住む森は、
とても大きくて賑やかな森。

森の真ん中には
長い間この森に立っている大木があり、
その大木にはくまの長老が住んでいた。

どんきちはくまの長老と仲良しで
毎日のように大木に訪れていた。

ある日
どんきちはいつものように
長老の住む大木を訪れました。

「こんにちは!今日も来たよ!」
ドアをノックしましたが、
長老はなかなか顔をだしません。

「いないの?」
もう一度ドアをノックしましたが、
やっぱり返事がありません。

心配になったどんきちは
恐る恐るドアを開けてみました。

すると
中にはベットに寝込んでいる
長老の姿がありました。

「長老!大丈夫?」

どんきちはすぐさま駆け寄って
寝込んでいる長老に声を掛けました。

すると、どんきちの声に気付いた長老は
目を覚ましました。
「おおどんきち、来ておったのか。
近頃からだの調子が悪くての。」

長老のか細い声を聞いたどんきちは
とても心配になりました。

「どんきち、おまえさんに頼みがあるんじゃが
聞いてくれるかい。」

長老はどんきちの目をまっすぐ見て
そう言いました。

「うん、なんでも言って!」

どんきちは
長老の手を握りながら
話を聞きました。

「わしはもうあまり遠くに行くことができない。
けれどわしはこの森がだいすきじゃ。
鳥たちの声も川の流れる音も、
どんきちが森を駆け回る足音も。
どんきち。
おまえさんに、わしのみみを預けてよいかの。
いろんなところに行って、
毎日わしにいろんな音を聞かせてはくれんか。」

どんきちは、少し驚きました。
「でも、それってどうやって?」

すると長老はこう言いました。

「わしの住むこの大木には、長い間この森を
守ってくれている守り神がいるんじゃ。
わしはこの大木に住んでから、その守り神と
一緒にこの森を守り続けてきたんじゃよ。
真夜中になったらこの大木に手をあてて
話しかけてごらん。
どんきちになら、返事をしてくれるはずじゃ。」

どんきちは少し考えましたが、
「ぼくは長老がだいすきだから、やってみるよ!」

すると長老はとても安心したような顔をして
「ありがとう、どんきち。」
そう言って、また眠りにつきました。

真夜中になり、
どんきちは再び大木までやって来ました。

「ぼくにできるかな」

どんきちは少し緊張しながら
1回、2回、3回と深呼吸をして
ゆっくりと大木に手をあてました。

「守り神さん、初めまして。
どんきちです。
お願いがあります。
長老のみみをぼくに預けてください。
長老のお願いを叶えたいです。
どうか、お願いします。」

すると

森に風が吹き、大木の葉っぱたちが揺れると同時に
「シャリンッ」と鈴のような音が2回聞こえました。

どんきちはそっと大木から手を放すと
なんだかほっぺたがほんのり温かくなったような気がしました。

「なんだろう」

どんきちは両手でほっぺを包んでみると
まあるい何かがどんきちのほっぺにくっついていました。

近くの池を覗いてみると、
なんということでしょう。
どんきちのほっぺに長老のくまのみみが
くっついているではありませんか。

どんきちは驚いて腰を抜かしてしまいました。

どんきちは何度も
ほっぺにくっついたくまの耳を触りました。
最初は驚いたどんきちも
段々嬉しくなって

「守り神さん、ありがとう!」

と大木に向かって
大きな声で叫びました。
するとまた
どんきちを包むように風が吹いて、
今度は「シャリンッ」と一度だけ鈴のような音が鳴りました。

次の日からどんきちは
森の中をたくさん歩き回りました。

どうぶつたちが集まる広場に行ったり
静かに川の流れる場所へ行ったり。
どんきちのほっぺを見て
森のどうぶつたちは最初は驚きましたが、
どんきちから長老の話を聞いて
いろんな森の音を聞かせてくれました。

家に帰る前には長老の住む大木へ行って
色々な話を聞かせました。

どんきちの話を聞いて
長老はとても嬉しそうでした。

「どんきち、ありがとう」

ほっぺについたくまのみみが
いまでは大切な宝物です。

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