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#261 夢が叶うことが、幸せとは限らない。ミヒャエル・エンデ「モモ」

人生で一番危険なことな、かなえられるはずのない夢が、叶えられてしまうことなんだ。

ミヒャエル・エンデの「モモ」に出てきたこの言葉。

モモの中には、時間泥棒という悪役が出てくる。彼らは人々に時間を節約しろ、過剰に成功しろとほのめかす。それに乗せられた人は仕事で成功したり、収入が上がる代わりに、情熱や喜びを奪われていく。

主人公のモモの親友である演説家のジジも仕事で成功する代わりに、人生が灰色になった。

ジジは元々は貧しいが話す事が誰よりも大好きだった。自分の話しで相手が楽しんでるのを見るのが好きだし、人々もそんな彼の事を愛した。

それが時間泥棒によって、大スターに祭り上げられてから変化する。
心優しくて話好きなジジではなく、テレビで見ない日はないほどの売れっ子になったのだ。

生活も豊かになり豪勢な家に住み、彼は分刻みのスケジュールをこなすようになる。

話をしたいというよりは、話さなくてはならない。じっくりと考えて、同じ話は2度としないという彼の信念では通用しなくなってくる。

けど同じ話をしたからといって、それには誰もきづかない。人々は彼の人気にあやかってるだけで、真剣に話を聞いてる人なんていないから。

段々と以前のような気の良さは消えていき、過密なスケジュールでイライラとストレスを常に抱えてる人間になった。

もはや人生は、彼の思うようには進まない。
周りからの期待。誰が設定したかもわからないスケジュール。悩む時間すらないほどの忙しさ。親友のモモと話す時間すらない。

そんな彼が言った言葉。

あの頃に戻りたくても戻れない。ぼくはもうおしまいだ。覚えているかい、「ジジはいつまでもジジだ!」、僕はそう言ったね。でもジジはジジじゃなくなっちゃったんだ。モモ、ひとつだけ君に言っておくけどね、
人生で一番危険なことは、かなえられるはずのない夢が、叶えられてしまうことなんだよ。

綺麗な服を着て、大勢の人の前で話をして、注目のまとになる。
彼の描いてた夢が実現された時感じたのは、幸福ではなく後悔だった。

なんて皮肉なんだろうか。
誰もが羨むようや立場になった彼の心中は、絶望感で満ち溢れている。
どんなに自分の信念を裏切っていようが、一度富と名声を得てしまうとそれを捨てることなど簡単にはできない。

途方もない夢は、叶えられない方が実は幸せということもある。

これってどういうことなんだろう。

僕は名声や、お金だけを目標にすることの怖さを語っていると思った。

だってジジは自分でスターになると決めたのではなくて、時間泥棒に乗せられて何もわからないままに富と名声を得てしまったから。

お金だけを求めると、さらなるお金を得るために余暇を削ってまで働くようになる。

名声だけを求めると、次第に周囲からの期待に操られてしまう。

モモの世界で描かれてるように、ほとんどの人がそうなのだ。
目の前に富と名声を得れるチャンスがあるとしたら、思わず飛び込んでしまう。

その結果自分の大好きな家族との談笑や、余暇でやってた趣味の時間がなくなってしまうのに。

もちろん成功を目指すことは大事だと思う。でもその成功はなんのために目指すのか。それが大事だ。

誰かが決めた目標を、何にも考えずに目指したとき。気づいたら目指すべき場所ではないかもしれない。

評判ばかり気にして、いざ注目を浴びた時、引き返すにも引き返せない状況になるかもしれない。

なんのために目の前の事をやってるのか。
なんのためにお金を稼ぎたいのか。
なんのために影響力をもちたいのか。

それがズレた途端に、人生の歯車は狂ってしまう。

そんなことを、モモを読んで思った。

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