第二章 診断が下りた時期③ ADHD
紀香は足の靭帯の療養生活のさなか、命子のカウンセリングを受けることにした。
紀香は命子に、いま困っていることを話した。前の職場の上司の鈴木主任から「甘えている」と言われたこと。同僚の曽根崎真理子から「常識がない」と言われたこと。スポーツセンターに通った時、好きな人ができたが、「君が変われるなら、これからも友達でいい」と見捨てられたこと。先の見えない就職活動で困っていること。落ち込んでいた時に出会った酒尾重治に、「お前の頭はおかしい!」と怒鳴られ続けた末に階段から突き落とされたこと。
命子は紀香の言葉を疑うことなく全て受け止めた。「そうだったの…かわいそうに」
「これも全て私が悪いんです」と紀香。
命子は紀香に、できるだけ詳しく教えて、と言った。紀香は頭の中を整理して話した。病院で患者の竹内園子を怒らせてしまったこと、シフト表を書き間違えたうえに他人との待ち合わせ時間にも遅れるというミスが続いてしまったこと、無断欠勤してしまったこと。重治とのデートで「好きなだけ食べて」と言われて本当に好きなだけ食べたために後で重治から怒鳴られたことを話した。
命子は、紀香の仕事や恋愛であったことを聞いているうちに、これはもしかしてあれじゃないか、と思い始めた。
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仕事のつまづきで発達障害に気付き、エアロビクスインストラクターに転身し成長していくヒロイン。周囲の人間関係のダイナミクスにどう向き合っていくか?
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