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3年後、2025年のダイバーシティ&インクルージョンは

日経COMEMO「#3年後に必要なスキル」に投稿します。

・いまのあなたに必要なスキルはなんですか。リスキリングなどの具体的なアクションを起こしていますか?

私は、「属性・場所を越えた課題解決型発信」の担い手として、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を実践するために、日々アップデートし、発信してきました。

・いまの社会にとって足りないスキルはなんだと思いますか。政府や企業などがどのような対策をとる必要があると考えますか?

D&Iは、東京オリンピック・パラリンピックのレガシーの一つになりました。ようやく日本でも市民権を得た感じです。

政府は「女性のリーダー登用を3割に」「障害者の法定雇用率達成」を呼びかけています。

企業でもD&I方針が作られたり、D&I推進室が作られるなどして、様々な方法が模索されています。

しかしながら、D&Iに関する誤解や曲解が、今なお蔓延る現状があります。

誤解や曲解に基づいた見方を投げかけられ、「あの人の言うことにも一理ある」「やはり妥協も必要ではないか」といって、「変えまいとする人」になびいていってしまう人も少なくありません。

「変えまいとする人」に向き合うのは、メンタルを消耗します。

しかし、「なぜそれが必要なのか」原理を正しく知れば、後ろめたさを感じる必要は全くないことを知り、ぶれない力の強化にもなります。

やらない言い訳に対しての社内説得として、データを示すなどで推進に成功しているケースも多くあるといいます。

データを正しく知ることで、結果としてリサーチ力、論理構成力、プレゼン力の強化にもなります。数値目標が設定されていることには理由がある、ということにも気づきます。

組織内でマイノリティーの立場から発信すると、1人の意見がその属性全体の意見であると誤解されがちだ。例えば、企業の経営会議に女性が1人しかいないと、その人の発言が女性の総意であるとみなされる恐れがある。しかし、スイスのビジネススクールIMDのギンカ・トーゲル教授によると、組織内での割合が25パーセント程度なら、マイノリティーの中にもさまざまな人がいると認識されるようになり、35パーセント程度になればマイノリティーとはみなされず、属性の違いを気にしない文化が形成される傾向にあるという。

・今後、時代の変化にあわせて新しく必要になってくるスキルとはなんでしょうか?あなたの考えを具体的に書いてみてください

今後、新たに必要になってくるのは、「従来の組織の業務の見直しを行うスキル」ではないでしょうか。

一般にD&Iとは「一定の業務能力を前提に」、国籍や人種、性別、宗教、障害の有無などの属性の多様性と、勤務時間や働く場所、雇用形態などの働き方の多様性を認めることです。

障害者雇用もD&Iのカテゴリといえます。ここで注意してほしいのですが、障害者が他の多様性課題と異なるところは、「障害特性ゆえに業務能力や成長ペースが多様になる」というところです。

この「障害特性による能力の多様性」に目を向けないでいると、困ることが出てくる場合がないでしょうか。

企業文化、業種、評価制度によっては、「この企業の要求水準では、採用できる障害者は、障害のある労働者全体の5パーセントしかいないのでは?」と思えるケースもあるのです。

従業員数が多くない企業なら、従来の基準で即戦力となる障害者だけを採用していても、法定基準になんとか達することはできるかもしれません。

しかし、働ける障害者全体のうち5パーセントだけを雇用対象にしているということは、残りの95%は雇用対象外ということを意味します。

これでは法定雇用率未達で行政の社名公表のような法務リスクが跳ね上がるだけなく、D&Iの精神からも乖離していると言わざるを得ない状況ではないでしょうか。

法定雇用率が引き上げられ、ハローワークの指導が厳格化するなか、応募してきた障害者が要求水準に達しない状態であっても採用するケースもあるようですが、これでは障害者をフォローする人は怒り、障害者は傷ついて終わるという結果になることもありえます。

能力、業務、評価のミスマッチを放置し、見直すことなく障害者雇用を続けることは、企業にとって大きなリスクとなりえます。

一定の業務能力を前提に多様性に対応してきたD&Iのみでは、法定雇用率が今後3%を超えると、多様な業務能力や成長ペースのある障害者を包摂していくことは、非常に困難になっていくのではないでしょうか。現に既にそうなっている企業もあります。

もちろん当事者にも成果をあげていくことが必要なことは理解しています。ですが、これまでは「厳しい」で済んだ環境も、いまは働く人それぞれの得意なこと、できないことを把握して、業務を見直し、志向や実力にマッチした働き方ができるように変わっていかなければならないと考えるのです。

今年6月~7月、漫画「僕の妻は発達障害」をドラマ化した「僕の大好きな妻!」が話題となりました。ドラマは発達障害当事者の意見が反映され、障害の社会モデルに沿って作られていました。そのなかでも、ももクロの百田夏菜子演じる知花が働くことになるアパレル編では、当事者だけが一方的に「普通」の働き方に合わせていくのとは違う道が模索され、「ノルマはなくし、キャッシュレスにし、それぞれ得意なことに特化して、効率的な働き方にする」という着地点になりました。雛形あきこ演じる店長が、知花に出会い、アパレル店舗の業務見直しをしていくように変わっていきます。D&Iを考えるのにとても良い題材であるので、参考にしていただければ幸いです。

知花は、客の懐に入っていくのがうまく売上に貢献できますが、不注意から商品を落としてしまうことがある、計算ミスすることがある、正直に発言しすぎる、暗黙のルールがわかりづらい、聴覚過敏を抱える、という難点がありました。このアパレル店では、一人一人にノルマが課され、接客、レジでの現金勘定、商品レイアウト、掃除、バックヤードを全て一人一人が回す必要がありました。こうした環境では発達障害の知花は7日でクビになってしまいます。かといって誰かが知花をフォローしようとすると、フォローする人が過重労働になってしまいます。しかし、店長が一人一人の得意なことや不満を把握し、分業体制にしたり、閉店後の現金計算をなくすように、環境を変えれば、誰もが働けるようになる。誰か一人のためではなく、誰もが希望を持てる方向です。

2025年には、一部の先駆的企業だけで必要とされるスキルとしてではなく、普通の会社や店舗で当たり前のスキルとなるよう、私も発信していきたいです。

#日経COMEMO #3年後に必要なスキル

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