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セールスフォースの大量解雇はまだ終わりではない。障害者雇用訴訟はいま

効率vsカルチャーで混乱、業績見通しは達成可能?

CRM(顧客管理システム)大手セールスフォース米国本社のマーク・ベニオフCEOは3月2日、Business Insider USのインタビューに応じ、「シリコンバレーの全ての経営者たちがイーロン・マスク氏の矢継ぎ早の経営判断を注視しており、自分の中に潜むイーロン(と同じ一面)を解き放つ必要があるのかどうか、自らに問いかけているところなのです」と語った。

コスト削減計画の草案では、従業員に対して「徹底的な経費節減」と「自分ごととしての経費支出」を求めつつ、効率よりカルチャーを優先したり、カルチャーを言い訳にして変化を直視しようとしないスタンスを批判し、企業カルチャーへの配慮から改革を停滞させることのないよう指示しているという。

こうしたプレッシャーに、「人員削減で生産性はもうゼロ」と、効率vsカルチャーで社内での分断が起きているもよう。それをBusiness Insider USが連日深堀りしているという有り様。社内の混乱が、経営上のリスク要因となっていくのか。ベニオフ氏はこれを収められるか。

3月1日の同社の決算発表では、今年度の業績見通しを強気に示して株価は一時16%上昇した(Bloomberg)。大型買収や大量採用を控え、営業利益率の改善を目指すというのだが。

3月9日には、「過去最高の利益率達成でもボーナス3割カットはつらすぎる」との声が社内Slackに出ているもようも報じられた。「『営業利益率を上げろ』というもの言う株主の圧力にノーを突き付けた場合、株主からの委任状争奪戦になるのは必至で、向こうは機関投資家を味方につけて、最後には我々自身の力では復元不可能なほどの無茶な変化を突きつけてくるだろう」という社内Slackでの社員の見方も示された。

3月24日には同社米国本社のブライアン・ミルハム(Brian Millham)COOが、効率化を推進するために会社の「変化と再構築」が必要かもしれない、とさらなる人員削減を示唆することをブルームバーグに語ったことが報じられた。営業部門と市場開拓部門のさらなる効率化も推進しており、スタッフに出社を促してからより多くの社員がオフィスに戻るようになったという。ミルハム氏の見方は、「もともと成果主義的な文化だった」「パンデミック(世界的大流行)時には、従業員の健康管理に気を配り、皆が健康であることを確認していたため、そこから少し離れていたかもしれない」

ウォールストリートジャーナルによる3月28日の投資家向けコラム。

大量解雇はまだ終わりではない。

日本法人でも例外ではない。今週、リンクトインでは社員とみられるアカウントより、新たにレイオフ告白の投稿が複数確認された。また「24年卒者に内定取り消しや採用凍結にあった人が出ている」という情報が、就活支援業者が運営する情報発信ツイッターより確認された。

障害者雇用訴訟はいま

東京地方裁判所(2023年3月6日)

3月6日には東京地裁で障害者雇用訴訟の第10回期日が行われた。元社員への合理的配慮をめぐって起きた問題の事実関係を示す証拠となるメールなどの提出が、会社側から行われた。次回は非公開の弁論準備手続。それを経て、証人尋問に進む見通し。上司や人事などの会社関係者が証人として何を語るか、元社員や当事者弁護士が何を訴えるかが注目される。

発達障害とうつ病のシングルマザーの社員による重要な裁判に、発達障害の当事者の弁護士が入り、当事者のジャーナリストが発信し、リンクトインコミュニティで議論が広がり、全国紙系列の週刊誌が「発達障害と仕事」特集の枠組みで取り上げるようになった。

2021年7月に元社員が厚生労働省で提訴時会見を開いた時には、報じたのは弁護士ドットコム1社だった。2023年2月17日に広島で起きた、発達障害社員の玩具・菓子メーカーにおける一般雇用をめぐる裁判では、地元紙の中国新聞と全国紙の産経新聞・毎日新聞が報じ、発達障害者の就労支援会社Kaienの鈴木慶太社長が自社Youtubeで見解を示した。3月6日にはセールスフォース事件の担当の当事者弁護士の伊藤克之氏が、KaienのYoutubeチャンネルに出演した。伊藤弁護士はここ1年、週刊SPA!2/7号の発達障害と仕事をめぐる特集ほか様々なメディアに登場していた。発達障害者の労働問題やそうした裁判が社会的イシューとなる機は熟した。

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