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「直感」文学 *愛すべき欠陥品*

 忘れ物は、私と切っても切れない関係でいる。
「人間って欠陥品だと思う。だってコンピュータみたいに物事を完璧にこなせないんだ」
サトルはそんなことを言って、私から離れていった。
「完璧にこなせない、完璧じゃないからこそ、愛らしいんじゃない」
なんて言葉その時に言えればよかったのに、それを思いついたのはサトルが私から離れて一ヶ月も経った後だった。
「君は本当に忘れっぽい人だ」
彼の言葉は私の心に重くのしかかった。そりゃ、サトルみたいなほぼ完璧な人間には私みたいな人間理解出来ないだろうとも思う。でも私からしたら、そんなほぼ完璧でいる人間のサトルが理解出来ない。
「勘違いするなよ。俺だって人間なんだから完璧なワケないし、忘れっぽいし、欠陥はたくさんある」
彼は私をキッと見つめてから言葉を続けた。
「でも俺は自分が欠陥品だって分かってる。だからその欠陥を補う”工夫”をしてるんだよ。ちゃんとメモをするとか、毎日持つものは決められた場所に置くとか」
そんな彼だから、私に愛想を尽かすのも当たり前か。
 そんな”工夫”が出来る彼だから、私は完璧だって思うのに。彼を真似ようとしてみても出来なかった私は、やっぱり欠陥品。

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