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「直感」文学 *子供の仕草*

 最初に断言しておきたいのだけど、僕は別に幼女趣味があるとか、そういった類の人間ではない。
 それらの人を批判するつもりはないけれど、僕という人間をそのくくりの中に入れられてしまうのは多少なりとも心外だった。

 だからあくまで、僕は偶然にもある女の子に目を奪われただけに過ぎない。幼女、と言ったってその子は制服を着ていたから小学生ではない、もしくは物凄く子供じみた中学三年生かもしれない。高校生ではないだろう。勿論はっきりとした理由を述べることは出来ないし、ただなんとなくそう思うだけだ。

 彼女はたまたま、通勤途中の電車で僕が座っていた隣の席に座った。髪をざっくりと後ろで一つに束ね、球体とも言える丸い形の輪郭が露わになっている。席に座り文庫本を開く。このあたり、スマホをすぐにいじったりしないのは僕にとっては好印象だった。彼女は活字の中に意識を奪われていき、少しずつ少しずつ、その丸い頭が僕の方へと傾き始める。ふと我に返り、自分が偏っていたことに気付いてすぐに頭を垂直に戻した。そしてまた意識は活字へと吸い込まれていってしまう。
 外に放たれた足先は外側に向き、大人である女性ならきっと意識の中で抑え込むであろうガニ股の形になっている。

「子供性」とでも名付けようか。こういった、大人になったら普通は自制するような部分を、人の目も気にせずにさらけ出すそれを。

 すぐ隣の駅に着くと、彼女は立ち上がり、乱暴に自分のスクールバッグを肩に掛けた。その勢いのせいで隣に立っていた男性にバッグが当たり、中年のその男性は露骨に嫌な顔をする。彼女はそれに気付き、申し訳なさそうな顔をするのだけどその「すみません」の一言が口から出て来ないままでいた。
 結局さっと頭を下げただけで、すぐに立ち去ってしまう。彼女が立ち去った後、中年の男性の「チェッ」という舌打ちが妙に僕の耳に残る。

 もう一度言おう。
 僕は幼女趣味など断じてない。

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