「直感」文学 *無我夢中で走る僕*
僕はただ、少し先にあるゴールテープだけを目指して走っていた。
少し先にある、そのテープしか見えないし、他の事柄はどこかに消えてしまった。今やるべきことは、誰よりも早くそのテープを切ることだけだった。
*
小学生の短距離走では、僕は何よりもそれが一番の目的であったのに、大人になった今の僕は何に向かって走っているのだろうか。
何よりも大切な「テープを一番に切る」という目的くらい強い思いが、今の僕にはあるのだろうか。
そりゃあさ、大人になれば背負うものが増えるから、意識があちらこちらへ行ってしまうのも分かるけど、そういったただ一つの物事を見つめる視線って、大人になった今でも十分に力を発揮出来るんじゃないかと思う。
あの時の僕は、今どこにいるのだろう。
あの、無我夢中でテープだけを追いかけていた僕は、今、どこで何をしているのだろう。
■古びた町の本屋さん
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