_直感_文学ヘッダー

「直感」文学 *その枝*

 木の枝を拾って、ただ宙に投げてみた。

 それは少し風に揺られながらも、すぐにその場へ落ちてしまって、

 今はただ儚く、湿った土の上に転がったままだった。

 とても無防備なその枝を、僕はただじっと眺めたままで、なんの手を加えることもなく見つめていた。

 別に何の思い入れもなかったその枝なのに、今では少し気がかりで、この枝をここに放置していくことに少しためらうくらいだった。

 夜が明ける。

 たとえそうなろうとも、きっとこの枝はずっとこのままで、この姿勢で、ここにいるのだろう。

 僕はベンチから腰を上げ、その枝を置いたまま家路を急いだ。

*********************
その他短編小説はこちら↓
■古びた町の本屋さん
https://furumachi.link

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?