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「直感」文学 *私の意見*

 私のような「本屋の人間」は、なぜだか本とばかり接していると言われることが多い。

 確かに私が勤めている書店には、もちろん本がたくさんあるのし、たくさんの本を検品したり、棚に入れたり、またはそこから差し引いて出版社に返品したりもするのだけど、そればかりではないことを皆にも伝えたいと思う時が、ふとあったりもする。

 人と関わる仕事なのよ、もちろん本を挟んだ仲だけど。

 そう言ったところで、理解してくれる人は何人くらいいるだろうか。

 毎週土曜日の、開店9時に、彼女はいつもこの書店を訪れて、長いこと立ち読みをするのだった。

 まだ中学生くらい?

 それは分からないけれど、一心不乱に本に読みふけるその姿は好感が持てる。

 たまには買ってね、なんて思うのだけど、彼女が本を買うことはこれまで一度もなかった。

 おそらく、いつだってそれは立ち読みで完結してしまうのだろう。

 「いつも難しい本を読まれてますね」

 私がふとそんな声を掛けると、彼女は一瞬体をビクっとさせてから、こちらを向いた。顔は段々と赤みを帯びてきて、

 「……はい」

 と小さな声を上げた。

 あまり人と関わることが得意な人ではないのかもしれない。そう、私は思った。

 書店員は本とばかり関わっている訳ではない。本と、それらに魅了された”人たち”と関わる仕事。

 私はただそれを伝えたいだけなのだ。

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