「直感」文学 *ベージュを愛して*
あの人はベージュを愛した。
ただそればかりの色を纏い、ただそればかりの色を持った。
家の中はベージュに染まり、おそらく彼の心までもが、そのベージュに染められているのではないかと思う。
あの人にベージュはとてもよく似合った。
あの人がベージュでない時を、私は知らないけれど、それは私に”似合う”という印象を強く刻んで、またその他の色が”似合わない”とも思わせた。
あの人はベージュとして生まれ、ベージュとして生きているのかもしれない。
あの人は、今日もベージュを纏い、ベージュに染まった。
あの人の心は、あまりにも肌に馴染んで、私には見えそうもないどこかにあるのだった。
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