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『短編』再会 第1回 /全4回

「それで、説得しに来たんじゃないの」

景(けい)はそう言って、僕に厳しい目付きを向ける。……分かってるさ。こんな時間に呼び出したのは悪いと思っているけど、こんな時間でもなければ君を捕まえられないことを僕は知っていた。

「……そうだけど」

「はっきりしないのね」

「いや、どうやって言ったらいいのか……」

彼女は大きな溜息を吐いた。僕は何をしに来たんだっけ?自分から起こした行動のくせに、その理由を忘れてしまいそうだった。

「康平(こうへい)。あなたが私を呼んだのよ、こんな時間に」

「……ああ、分かってるよ」

なんてことない、ただのファミレス。景とまだ付き合っていた頃は、こういうありふれた店はあえて敬遠していた。だってつまらないし、賑やかで落ち着けもしないから。さすがに十二時近い時間になると、人も幾分まばらだった。話し声は店内に響いていたが、さして気になる程でもない。これを知っていたら、僕たちはもっと深夜の時間帯にファミレスに行っていたのかもしれない。

「ねえ。ぼーっとしないでよ」

明らかに不機嫌な表情を向ける彼女に「ああ、ごめん」と慌てて言い返した。


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