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「直感」文学 *みーつけた*

「みーつけた」
 どこからともなく、声が聞こえた。生暖かい吐息を含んだ、生を直に感じられる声だった。
 僕はその声を聞いて、意味もなしに焦ってしまう。
「ああ!見つかっちゃった!」
 咄嗟に口から吐き出される声は、自分のものだとは思えないくらい現実味がない。慌てて振り向いたそこには誰もいない。

 もう分かってるはずだった。そんなこと。この体験を僕は何度もしているじゃないか。そう自分に何度もいい聞かせるけど、その言葉だってなんだ現実味が感じられなかった。

 見つかった。らどうなるのかなんて分からない。ただなぜか、見つかることがいけないことだと自分では分かっている。誰に教えられたでもない、体の深く内部に刻まれた痕みたいにいつからか残ったままでいる。

 ……殺し……、いや違う。あれは事故だった。
 あの女の子があの場所にたまたまいた現実を呪うべきだろうか。どれも全部唐突に突き上げられる衝動のせいだと思った。
 あの子があの場所に、あの時間に、あの瞬間に、存在していたことを呪うべきだ。その日たまたま僕の機嫌が悪かったとか、そんなことが理由ではない。
 〝あの子は最初から僕に誘拐される運命だった〟
 自分を肯定する言葉も、早く脈打つ鼓動に遮られる。

 あれは事故だった。
 僕は女の子の首を絞め、森の中へ……。

 ***

 長い夢の中にいるようだ。どこから現実と夢が混じりあった?
 ……ああ、君だ。そう、今僕を見下ろしている女の子だ。君のことだ。君は僕より全然小さいはずなのに、なぜ僕を見下ろせるんだ。
 ……ああ、僕が横たわっているからか。……ああ、しかしなぜこうなった。
 ……ああ、しかしなぜ、僕は今腹に包丁を立てているのだろう。真っ直ぐに空に向かって真っ直ぐに伸びる柄は、僕の腹に刺さることで支えられている。

 君だろう?僕を刺したのは。
 そんなことするつもりじゃなかったのに。ああ……。
 君は帰れるのか?こんな森の中じゃ、君だって帰るのが大変だろう。ん?ああ……、僕はいいんだ。どうせ死のうと思ってたんだから。ついでに君も道連れにしようとしたけど、どうやら失敗したようだ。
 携帯電話は車の中だ。幸いロックをかけてもいない。
 女の子が警察かどこやらに電話を掛けられれば帰れるだろう。たぶん、大丈夫だ。僕を包丁で刺すほどに賢いんだから。

 ああ、意識が遠のいていく。
 女の子はまだ僕を見下ろしている。

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