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『短編』あなたが好きなあの人より、あなたが好き 第7回 /全7回

「あと一時間だね。始発まで」

時計を見ると、四時を指していた。

「あと一時間。長いですかね、この一時間」

「早いよきっと。ここまであっという間だったんだから。……あ、そうそう一応言っとくけど、鳴沢がやってたあのゲームとか気にしなくていいからね。入りたくなかったら入らなくていいし、もしその気があるならいつでも待ってるから」

「ありがとうございます。大丈夫ですよ、全然気にしてないんで」

「そう、ならよかった」

「それに私、ここのサークルに入ろうって思いました。今」

「今?今決めたの?もっと考えてからの方がいいんじゃない?」

「いいえ、いいんです。もう決めたので。美希はなんて言うか分かりませんけど、私は入ろうと思ってます」

「……そう。鳴沢もきっと喜ぶ」

鳴沢も?真野先輩も喜んでくれるってことだろうか。私はこのサークルに真野先輩がいるから入ろうって決めた。もちろんAIの研究は楽しみだけど、真野先輩がいることが大きい。私は彼女みたいな人になりたい。どこか一歩引いた目線で、冷静に物事を判断して、だけど芯が通ってる。そんな人の近くにいたら、きっと私もなれるかと思って。

「さあ、あと一時間何を話しましょうか?」

真野先輩はテーブルに肘を付いて身を乗り出してきた。

「……そうですね。先輩のこと教えて下さい」

「私の?うーん、別に何もないけど」

ファミレスには私たちを除いてあと一組しかいない。入って来た時とは違って、随分と静かな空気に包まれていた。

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