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「直感」文学 *みっつめ。*

 彼女がもう一人の誰かと電話で話している声が、隣の部屋にいる僕には聞こえる。

 ……いや、もちろん相手のことなど分からない。僕には相手のその声が聞こえる訳ではないし、電波にハックして相手の声を聞く術だって持っていない。
 ただ一つ、どうしても気になることがある。
 〝彼女が僕と話すその時よりも、随分と楽しそうなのだ〟

 僕の部屋には音楽が流れていた。
 僕の大好きなニルヴァーナである。彼らの轟音を聴いていると、僕は心の底から解放された気分になることが出来る。……出来るはずなのに、今だけはそうもいかない。
 音楽に耳を傾けようと思えば、彼女のその笑い声が邪魔をする。いつもより楽しそうに笑うそれが。

 彼女は、一体誰と話しているのだろう。
 大好きで大好きで仕方ないニルヴァーナの音楽だって遮られてしまうくらい、僕はその相手が気になってしまう。

 ああ、みっつめの耳があったらいいのに。
 そうしたらその耳で、電話の声を通す電波を乗っ取って、どうにかその会話を聞いてやるのに。
 そう考えながら、僕は音楽の音量を少しだけ下げた。

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