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「直感」文学 *強い雨の中に、わたしはここにいて。*

 雨が鬱陶しい。
 まあ、私がイケナイのか。
 だって今日は夕立ちがくるって、言ってたっけ。お天気おねさんが。
 まあ、それを無視して、こんな状況にしてしまっているのはわたしの…、わたしのせいなの?

「ずっとわたしのこと好きだって言ったじゃない!」
雨の中じゃ、このくらいの大声でもあなたに届いているのか不安。なによりも、わたしの視界を邪魔するびっしょりと湿った髪が邪魔。顔中に貼り付いて、よけてもよけても、まとわりついた。
「は?じゃあ、おれが悪いの?」
語調を強めた言葉は、それだけでわたしの心を突き刺すようだ。それがたとえ、わたしにとって嬉しい言葉であっても、同じくらいわたしの心を突き刺すんじゃないかな。……嬉しいか、悲しいかの違いだけで。
「……でも!それでも……!ずっとわたしを離さないって言ったのに!」
ああ、なんて無意味になってしまうのだろう、わたしの言葉は。いくらわたしが喉を痛めながらでも気持ちを声にしたところで、その半分はこの豪雨の中に飲み込まれてしまうみたい。
「もう、……もうおれも、疲れたんだよ!お前には付き合ってられない。お前のその、身勝手な態度や、突拍子もない行動が、おれには耐えられないんだよ!」
分かってる。……そんなの、分かってる。だからさ、それでもいいよ。もう、わたしたちが一緒になれないのは、気付いてる。だから、だからあと少しだけでも一緒にいたいから、こうやってずぶ濡れになってでも、わたしはあなたを引き止める。
 ……ごめんね、あなたもたくさん濡れちゃって。
「ごめん。おれ、もう、お前を幸せに出来る気がしないから」
可哀想。あなたは本当に可哀想。わたしみたいな女に引っかかっちゃって。……とても、可哀想。
「それでも、好きなのー!」
雨が鳴る。鳴る。鳴る。うるさいくらいに鳴る。ひどくわたしを包みこんで、ただひたすらにコンクリートを叩く。
 雨がやむのと同時に、忘れられたらいいのに。わたしにとっての彼と、彼にとってのわたしが。

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