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「直感」文学 *凌駕*

 ずぶ濡れの中に、一つの模様を見つけた。……なんてことないもの。……些細で、気に留める程のものではないもの。
「ずっと見てました」
今になって思い出されるずっと前の言葉。耳の中でこだましては、どしゃ降りのそれに容易く呑み込まれてしまった。

 幸せにする。

 その言葉に嘘はない。……。
 ただ今はその言葉に自信が持てず、ささやかながら背徳の念が付きまとう。「ねえ、君は……、今幸せか?」

 何を持ってして幸せを見つけるだろう。
 僕たちが持っている「言葉」。限りなく安易で、嘘を纏わせることが容易だった。傍にいて欲しいと願うことは罪じゃない。傍にいたいと願うことが罪であるがために。

 君は追いかけてくるだろうか。
 僕はただ「自信がないだけ」。……そう言葉にしてしまえば、気持ちは簡単に可視化する。だけど人の気持ちってさ、……そんなに簡単なものじゃないだろう?

 ただ圧倒されたんだ、……おそらく、……たぶん。
 全てが嫌になったんじゃない、……おそらく、……たぶん。

 「言葉」は人の心の中にいつまでも残るかもしれない。だけど、この、自分の、気持ちだけは自分が手放してしまえば簡単に消えていってしまい、失くなってしまい、姿形は残せない。

 ああ……。

 夢であればいい。

 ああ……。

 最初からなかったことにしたいくらい……。

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 ……僕は君を愛してしまった。

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