「直感」文学 *我が家のルール*
これを言い出したのはカオリで、なぜ彼女がそんなことを言い出したのか、今になっても僕にはよく分からなかった。
しかもそんなことを言うくらいなのだから、カオリが率先して洗濯を行うのだろう、と安易に考えていたが実際はその逆だった。
洗濯物が溢れていることに気付くのは、決まっていつも僕だ。
別に僕は洗濯が嫌いではないし、気が付けばそれをなんなく行ったのだけど、それを見つけたカオリは「は~、王様。なんなりとお申し付けくださいませ」と僕を崇めるのだった。
たまに彼女が洗濯をすることもあったけれど、それは僕が10回やる内の1回くらいだ。
「どうして最初にあんなことを言い出したんだ?」
と僕は、純粋に不思議に思っていたことを聞いたのだった。彼女がそれを得意としていたなら理解出来るけど、そうではないようだし……、と付け加えて。
「そう、そうなの。私は洗濯が苦手、……苦手というか、あまり好きではないの」
とカオリが言った。
それで僕はやっと彼女の気持ちを理解出来たのだった。それは(まだ実践されているかどうかは定かではないが)カオリの努力しようとする気持ちの表れだったのだった。
***
朝、目を覚ますと、洗濯カゴにはたくさんの洗濯物が詰まっていた。
いやこれに僕は昨日の朝も気付いていたのだ。
だけどもう少し辛抱してみようか。
彼女がこの”溜まった洗濯物”に気付くまで。
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