「直感」文学 *そのままの形見*
ずっと前に届いた荷物を、僕はまだ開けていなかった。
それ小さな段ボールに入れられ、ガムテープでしっかりと止められていた荷物。
「お父さんの部屋、片付けてたらね、出て来たのよ。だからあんたに送るわ。お父さんずっと大切にしてたみたいだから」
母さんはそう言って、電話を切った。
父が亡くなった数日後の事だ。
あれからもう三年が経つというけれど、僕にはまだ父がいなくなったという実感がない。
そもそも僕は父が嫌いだったのだ。
この世で一番憎い生き物だったのだ。
しかしその父は、意図も簡単に、呆気なくその生を終えた。
その箱に何が入っているのかなんて分からない。
だけど、僕はそれを見るべきではないと思ってしまう。
それが……、いや一つの可能性として、その箱の中に入っているものが、僕が父を憎んでいたことを改めさせるものだったとしたら、僕はどういう心持ちでいればいいというのだろう。
とにかく、もう父はいないのだ。
それだけは不変だ。
その箱は、いつまでも放置されたままであるべきなのかもしれない。
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