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「直感」文学

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「直感的」な文学作品を掲載した、ショートショート小説です。
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2018年1月の記事一覧

「直感」文学 *個人の弔い*

「直感」文学 *個人の弔い*

 毎日の日課。

 就寝前には、スマホを充電器に挿す。

 その日課は、当たり前過ぎて自分でも毎日そんなことをしていたなんて気付いてもいなかった。

 だけど今日、僕はそれに気付いた。

 なんでかって、その挿したスマホが充電を開始しないからで、いつもだったら一度ブルっと震えて充電マークが表示されるのに、今日はなぜだか表示されない。

 パーセンテージが増えることもなければ、いやむしろ、減ってく一

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「直感」文学 *ただ独りになりたいだけなのに*

「直感」文学 *ただ独りになりたいだけなのに*

 どうしようもなく「独り」になりたい時って、皆にはないのだろうか?

 私はある。そしてきっとその比重は、他の人よりも少し多いかもしれない。でも、私は出来るだけ周りに合わせているつもりだし、いや、そもそもその沸点が違うから、私が独りになりたい時間というものが、普段は皆でワイワイやりたい人の「独りにないたい時間」のマックス値を超えているかもしれない。

 だけど、それは個人の自由でしょ?

 でもね

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「直感」文学 *僕と彼女の距離*

「直感」文学 *僕と彼女の距離*

「なあ、秘密を演じるのって、疲れない?」

 僕はただ純粋にそのように聞いた。

 彼女があまりにも自分を隠そうとするから、ただ純粋にそういった疑問を持ったに過ぎなかった。

 いや、そんなものはただの言い訳なのかもしれない。

 本当は、

 僕はもっと彼女のことを知りたかったのだと思う。

 もっと自分の心の底から、彼女の心の底まで届くような、

 そんな真っ直ぐで、一直線の”繋がり”を僕は持

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「直感」文学 *弱い声は、深夜の静寂に消えた。*

「直感」文学 *弱い声は、深夜の静寂に消えた。*

 彼の母親が亡くなったと聞いたのは、深夜も0時を回った頃だった。

 「今どこ?……病院?分かった、すぐに行くから」

 私はそう言って電話を切った。

 いつも強気な彼の声だけど、電話の向こうにいる彼の声は消え入りそうなくらいに弱かった。

 私は急いで支度を整える。化粧をしている時間がそこに用意されていないから、仕方なくそのまま家を飛び出した。

 私は車に乗り込んで、暖房を強風に設定した。

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